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新人冒険者の初陣-5




 次の日、朝からリーミヤとセレスは【嘘看破】を使って、城内にいたすべての人間を尋問した。

 人の良さそうなコックがダリアス帝国から送り込まれた刺客だったり、年端もゆかぬメイドが反乱貴族とデキていて国庫から税金をネコババしていたりと面倒事は多かったが、2人は文句も言わずにそれらの仕事を最後までこなした。

 そしてさらに翌日、ようやくアィダーヌから来たメンバーは雑事から開放される。


「そんじゃ、お疲れさまでしたーっ!」

「よっしゃあっ、飲むぜえ」

「まだ忙しいバンズールの旦那達や、アィダーヌに残ったファウンゼン達にゃ悪いが、朝から酒なんて嬉しいなあ」

「でも良いんでしょうか。ベンタの方々はまだまだ忙しいのに・・・」


 ユーミィが言うが、大人達は誰も耳を貸さない。好き勝手に酒を選び、呷ってはまたグラスを酒で満たす。

 そんなユーミィに、肉が山盛りになった皿を差し出すのはゴンだ。その皿を微笑みながら受け取り、ユーミィはダメな大人達からゴンとビザンツを守るように3人で固まって座り、ゴンが持って来た肉だけではなく野菜も皿に取り分けて口に運ぶ。

 するとユーミィの使い魔のピウィーが肩からテーブルに降りて小皿の葉物をクチバシつつき、それにサイの使い魔のドリーがヒョコヒョコ歩み寄る。

 リーミヤがハラハラしながらその様子を窺っていると、ピウィーは小皿の肉をクチバシで器用に押して、ドリーに向かって機嫌良さ気に鳴いた。

 ドリーもありがとうとでも言っているように鳴き、2匹の使い魔は並んで1つの小皿の食事を分け合う。


「だからぁ、明日は王都見物に行こうぜ。なっ、サーミィ」

「うっせえよ、スケコマシ。アタイは軽い男が大嫌いなんだ」

「飲んだ飲んだ。そろそろ宿でも探しに行くか、ダラス?」

「まだ固まってた方がいいさ。ベンタにいるうちは、オルビスで雑魚寝だねえ」

「そこでバンズール殿はナギナタをこうっ、こう使ってヒャクダンの走る勢いを利用してモンスターを斬ったのですっ!」

「それもう20回は聞いたって、ケーダさん・・・」


 リビングにいるだけで酔ってしまいそうなほど酒の匂いが立ち込めているので、ユーミィは食事を終えるとすぐにゴンとビザンツを連れて運転席に避難した。

 リビングであまり酒を飲んでいないのは、リーミヤとセレスの2人だ。

 サイもドワーフの血が入っているからか酒好きのようで、かなりのビンを空けて上機嫌である。


「セレス、どう?」

「今のところ問題はなさそうよ」

「それは良かった。シャルが戻ったら、サハギン缶を混ぜたゴハンをあげよっと」

「喜ぶでしょうね。ところで、何をしているの? 網膜ディスプレイを使ってるわよね」

「ああ、これ? 爺ちゃんの槍の設計」

「そういえば全員分の武器を作るって言ってたわね、大丈夫なの?」

「材料的には余裕。ただ、迷ってる」

「何を?」

「スキルポイントを使って、【2級武器製作】を取るかどうか」

「・・・それは。悩みどころね」


 パーティーシステムの恩恵は計り知れない。

 例えばリーミヤがツダークを助けに行っていた時、200の兵の指揮を買って出たドアンが夜通しヒャクダンを走らせた。その夜だけでもリーミヤは、自分が何もしていないのにレベルアップの音を2度も聞いている。

 だが今回の内戦でそれなりにレベルが上ったとはいえ、12ポイント貯めれば一夜にして街を造れるような最上スキルを取得できるのだ。

 リーミヤが迷うのも無理はない。


「3級で充分なんじゃない?」

「かなあ・・・」

「ちなみに上げた場合の最上スキルは。・・・これね」

「うん。【武器職人の最高傑作】はレベル依存で材料消費なしの単体武器製作で、【1級武器製作】よりさらに上の武器が造れる。でも俺のレベルだと、まだドラゴンの素材とかは自分で調達しないと使えない。【1人軍事工場】は3級と2級と1級で設計した武器を、材料消費ありでレベル依存の数だけ大量生産。どっちのスキルツリーを上げても、2級と1級の武器製作はある」

「王様になる気がないなら、【武器職人の最高傑作】ね」

「ちなみにリーミヤ。3級と2級じゃどれだけ武器の質が違うんだ?」


 言ったのは、いつの間にか話を聞いていたらしいジャスだ。

 ジャスだけでなく、リビングの全員がリーミヤの答えを待っている。


「・・・らい」

「聞こえねえよ?」

「・・・いくらい」

「あんだって?」

「・・・ほぼ倍ぐらい!」


 やけっぱちでリーミヤが叫ぶと、それ以上に大きな歓声が上がった。

 ケーダなどは、すでにバンズールとドアンに事の次第を無線で説明し始めている。


「おいおい、皆。スキルは俺達の生命線だ。その選択はリーミヤがするんだ。少しでもそれに文句を言うヤツは、その時点で仲間とは認めねえからな!」

「カッコイイ事を言ってるけど、この酒を注ごうとする手は何さ。おっちゃん・・・」

「リーミヤ。師匠が作ってもらう槍の重さの説明をしたいから、夜にツダークと来るらしい」

「絶対ツダークのも作らせる気だよね、爺ちゃん・・・」


 リーミヤが注がれた酒を舐めるように飲む。


「私は魔法だからわからないけど、やっぱり武器は少しでも良い物を持ちたいのね」

「その気持はわかるんだよねえ。俺もせめてアサルトライフルは、もうちょっと良い物を持って来たかったし。そんじゃ、【2級武器製作】まで取得、っと」

「ヒヤマ殿、ムリに取る必要はないでしょうに」

「とか言いつつ、顔がニヤけてるよ。ケーダさん。カタナは少し待ってね。年の順で作るから。あれ、そうなるとセレスとサイさんが・・・」

「何かおっしゃいました、リーミヤ様?」

「言ってないわよねえ。聞き間違いよ。ね、リーミヤ?」

「あっ、はい・・・」


 気迫負けしたリーミヤは夜にやって来るドアンが重量に注文があるそうなので、網膜ディスプレイを閉じてのんびり過ごす事にした。

 まだ昼にもなっていないのである。

 城から運ばれた料理は贅を凝らした物ではないが、どれも少なからず和食の影響を受けているのでリーミヤの口に合うようだ。


「そうだ。武器といえば、ユーミィちゃんが問題だよねえ」

「あら、どうして?」

「だって杖と魔法でしょ。魔力ってのが切れたら杖で殴るんだろうけど、あの細腕じゃキツイって」

「まあ、あの見た目でサーミィほどの豪腕でも困るけど・・・」

「喧嘩なら買うよ、セレス?」

「いいからサーミィは、そこで大人しく口説かれてなさい」

「あ、そうだ。あんまりしつこかったらぶん殴っていいからね、サーミィ姐さん」

「ありがてえ。死ねっ、リーン!」


 殺していいとは言ってないだろと喚きながら、リーンがサーミィの拳を避ける。

 そんなじゃれ合いを眺めながら、リーミヤは話を元に戻した。


「だから、銃でも持たせようかと思ってるんだよねえ」

「・・・本気?」

「おい、リーミヤ。いいのかよ!?」

「俺は良くて、ユーミィちゃんはダメって事はないでしょ」

「だがよ・・・」


 ユーミィの父であるバダムも、32口径リボルバーという銃をひそかに装備している。

 だがそれでも、ジャスは心配なようだ。


「使い魔のピウィーも全力でユーミィちゃんを守るし、銃を持たせてそのせいで悪人に狙われたらそれこそ意味がないわ」

「なるほど・・・」

「それにリーミヤちゃん。銃の弾に必要なナントカってのは、こっちじゃ手に入らないんだろう?」

「それはスキルを取るよ。火薬製作と、弾頭込みの薬莢製作スキルなんだけど、そうなると戦闘スキルがまた取れないよ。とほほ・・・」

「私がそのスキルを取る、リーミヤ?」

「武器製作と合わせてカスタム弾も作るから、気持ちだけでいいよ。ありがと、セレス」

「やっぱ銃を作るのか・・・」


 ジャスは不安そうだ。

 サーミィも表情が強張っている。


「製造法を広めたりしなきゃ大丈夫だと思うよ。それにマズイなら、ダラスさんに神託でそう言うと思うし」

「そりゃそうなんだが、なんとなくな」

「俺はしばらく本職の生産仕事だ。おっちゃんは明日から何するの?」

「俺か。新しいベンタの内政を任される男と会う。なんか、話が聞きたいそうだ」

「冒険者、出来れば冒険者ギルドそのものをベンタに呼び込めないかって事かな?」

「・・・その考えはなかったな」

「あっちは国の建ち上げで気合が入ってる。変な条件で安請け合いしないでよ?」


 リーミヤの言葉に、ジャスが頷く。

 ベンタの内乱に手を貸したのは、幼いビザンツや無辜の国民を助けるためだ。

 それをホルスとバンズールは理解して、リーミヤ達に感謝している。

 だが、ベンタ王国時代の貴族や文官はどうか。

 リーミヤ達の行動をベンタに対するアィダーヌの干渉と見る者もいるだろうし、深く考えずに利用できるものは利用してしまおうと思う者もいるだろう。

 ジャスはリーミヤなどよりよほど名が売れている。油断はするなという忠告だろう。


「あたしにゃ、ベンタのノームの長が会いたいとさ」

「それってサイさんの義理のお父さんなんじゃ」

「たぶんねえ。そうなのかい、サイ?」

「ええ。おそらく新しい国では地母神様への信仰が主であっても、アィダーヌの教会が神殿をベンタに建ててくれるか探りたいのでしょう」

「・・・神殿のある街へは、聖騎士団が巡礼者を護衛して回るからねえ」

「はい。その巡礼者がアィダーヌの優れた所とそうでない所を学び、土と水の大聖霊様しかおられないベンタ人が火と風の契約魔法を手にする。その人材が帰ったら、寺子屋を拡大させる気なのかもしれませんね」

「寺子屋?」

「子供に読み書き計算を教える場所です。農村ではほとんど見られない施設ですが、王都の子供達はほとんどが通っているはずですよ」

「意外とベンタって下地が出来てるかも・・・」


 リーミヤの言う下地とは、ホルスとバンズールの目標を達成するためのものだろう。

 もう帰れない故郷を思い出したのか、リーミヤは薄く笑んだ。


(ファウンゼンさん、バダムさん、意外とベンタの方が俺好みの国になるかも)

(内戦で国にとっての膿、どうしようもない貴族を排斥できたのです。予想はしてましたよ)

(ファウンゼン様の言う通りになりましたなあ。それでリーミヤ殿、どうなさるおつもりで。全員でベンタに移住でもいたしますかな?)

(ないない。でも、それを臭わせたらアィダーヌの議会はなんて言うかなあ)

(ふふふ、さすがリーミヤ殿。やり口がエグい)

(いえいえ、バダム様こそ)

(はぁ、またそんなオフザケを。それで、何の要求を飲ませます?)

(そんなんしないよー。秋にはアィダーヌに帰るけど、冬の餓死者を減らす取り組みが気に入らなかったら、客人はどうすんのかなあって感じで脅しといて下さい)

(・・・餓死予想者の半数ぐらいまでは助けられそうですね、それは)



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