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新人冒険者、ファンタジー世界でトラックを作る-4




 ケーダとサクラの歓迎会が、村人達も招いてギルドホールで行われている。

 だが主役の2人やファウンゼン、リーミヤ達がいるのはギルドの会議室だった。


「会議室なんてあったんだねえ」

「このギルドの間取りは普通の街のとは違うけど、会議室くらいあるわよ」

「ふーん。お、ダラスさん来た。ギルドホールは大丈夫なの?」

「ああ。後は村の奥様方に頼んできたのさ。あたしも飲みたいからねえ」

「そんじゃ、乾杯しますか。挨拶は、おっちゃん。よろしくー」

「挨拶なんているかよ。見ろ、全員がもう好きに飲み食いしてんじゃねえか」

「初めて会った時は最敬礼だったのに。この人達って、自由だよね。びっくりするくらい・・・」


 見れば大きなテーブルを囲む面々は、すでに酒やツマミを楽しんでいた。

 ミオを抱いて魚の骨を取ってやりながら、ジョッキを呷るサーミィ。ゴンの汚れた口の横をハンカチで拭きつつ、成人していないのに葡萄酒で唇を湿らせるユーミィ。その父であるバダムは、無線で妻と楽しげに話しながら蒸留酒を舐めるように飲んでいる。


 ファウンゼンはケーダに酒を勧められると嫌そうにするが、サクラが酌をすると素直にそれを受ける。

 楽しそうに返杯を受けるサクラを見てケーダがやきもちを焼くと、「これの奥さんになるのは大変でしょうねえ」「いえいえ、親友の方が大変でしょう」などと2人でさらに煽る。

 拗ねたケーダが向かうのはもちろん、リーミヤの隣だ。


「飲みましょう、ヒヤマ殿。金獣騎士殿もぜひ一献!」

「なんていうかさあ、敬語はやめてくれないくせに学校の友達みたいな扱いだよね」

「パーティーの雰囲気は、リーダーによって決まるもんさ。いい仲間じゃねえか。誇れ、リーミヤ」

「・・・どれだけ冒険者ランクが上がっても、こんなパーティーのリーダーなんて嫌だ」


 言葉とは裏腹にまんざらでもなさそうなリーミヤは、何か思いついたのかイタズラっぽい笑みを浮かべる。


(ファウンゼンさんとケーダさん、それにサクラさんを仲間に引き込んじゃおうと思います。反対の人はー?)


 突然の無線でファウンゼン、ケーダ、サクラ以外の全員が手と口を止める。

 それを訝しげに見たのは、ファウンゼンだ。


(いないようなので、恒例の説明タイムにしようと思います。ミーティスさん、おしゃべりのジャマしてごめんなさいね)

(いえいえ。北の獅子、南の狼。どちらも王都のご婦人方には大人気ですのよ)

(へぇ。じゃあ人気取りが必要になったら、2人を着飾らせて各都市を回ってもらいますよ)

(楽しみにしてますわ)


 バン、とリーミヤがテーブルを叩く。

 先ほどまでと違い、全員が黙っているのでそんな事をして注目を集める必要はないのだが、セレスによく話して聞かせる異世界のドラマや芝居のお約束、なのかもしれない。


「セレス、結界魔法を」

「はい。どうぞ」

「さて、北の獅子、南の狼。そしてその奥方。客人には守るべき秘密がある。それは理解してもらえるでしょうか?」

「・・・それはもう」

「もちろんです」

「俺はヒヤマ殿に着いて行くのみ」

「約1名の発言がちょっと怖いけど、その秘密をここにいるメンバーは共有し、その上でこの国から餓死者をなくそうと動き出しています。手伝ってくれませんか。ファウンゼンさん、ケーダさん、サクラさん?」


 リーミヤがそれぞれの目を見る。

 3人が3人共、真剣な眼差しで頷いた。

 そしてまた、リーミヤの口から異世界の風景や文化、戦争が語られる。


「『さらまんだあ』が調理器具だったとは。さすがは異世界、予想を裏切りますな」

「それでグラタン作るって言った気がするんだけど・・・」

「学校、ですか。それがあれば草原の民の女の子も、親の決めた家に嫁に行くしかないような生き方をしなくていいのかもしれませんね」

「餓死者が出なくなったら、学校を作るのもいいかもですね」

「俺もその世界に行って、ヒヤマ殿と肩を並べて戦いてえ・・・」

「あっちにはたくさんヒヤマ殿がいるから、行けたら願いは叶いますよ」

「ご冗談を。俺のトノサマは、リーミヤ・ヒヤマ殿ただ1人!」

「な、なんか怖いんですけど・・・」


 若干の怯えを見せながら、リーミヤが1枚の紙をセレスに渡す。


「トレーラーに似てるけど、説明を読むとまったくの別物なのね・・・」

「武装がかなりの物だからね。荷台を上下に区切って、上は銃座と大砲の自動装填装置だけにしたの。リビングとベッドルームも作るよ。あ、読んだら次の人に回して」


 紙が順番に回されてゆくが、興味を示したのはバダムとユーミィ。それにファウンゼンくらいだ。


「食いつき悪いね、おっちゃん」

「ダラスが神託を受けた。そりゃつまり、リーミヤがもう自重しねえって事だろ。こんくれえで驚いてたら、カラダが保たねえよ」

「まったくだね。リーミヤちゃんが銃を使って戦うんなら、S級冒険者と同格さ」

「冒険者ランクって簡単に上がるの?」

「まさか。薬草やモンスター、獣なんかの生態を熟知して、それを調達する腕があると認められて初めて、ランクアップ試験に挑む資格を得る。リーミヤは試験なんて受ける気ねえだろ?」

「少なくとも餓死者がいなくなるまではない」

「なら、J級のままだ。別にそれでもいいんだろ?」

「もっちろん」


 戻って来た紙を収納し、リーミヤは葡萄酒の注がれたカップを傾ける。


「それで、宴会が終わったらそれを作るの?」

「スキルの光を見られない場所があったら。なかったら夜が明けてからかなあ。あ、セレスも試運転に付き合ってね」

「たぶん、全員で行く事になると思うわよ」


 その言葉で、リーミヤは会議室にいる人間の視線が自分に集まっている事に気がついた。

 ゴンとミオまで、期待に満ちた眼差しで義理の兄を見ている。


「ゴンとミオ、それに一緒に寝るダラスさんまでかあ・・・」

「2人はアセモが酷くてねえ。ここんとこ毎日寝苦しいし、今夜くらいは『くーらー』の効いた部屋でゆっくり眠らせてあげたいねえ」


 哀しそうに言いながら、チラッとダラスがリーミヤを見る。

 どうやら、涼しい部屋でゆっくり眠りたいらしい。


「なんだ。そーゆー事なら、喜んでベッドルームを提供するって。他はリビングで雑魚寝になるけどね」

「銃には弾が必要なのよね。それはどうするの、リーミヤ。2つか3つスキルを新しく取れば、こっちの世界でも弾は作れるって言ってたけど。それを取得するの?」

「いつかはね。でも、車両製作の最上スキルで作った車両は、搭載されている火器の弾が満載された状態で出て来るの。だから超エネルギーバッテリーが切れても、弾が余ってれば次の車両にも使えるんだよ」

「それ、リーミヤが言うトンデモ科学の武器が、1年にいくつか作れるって事でしょ。いいの?」

「神様いいって言ってるし、いいんじゃない?」


 セレスが助けを求めるようにジャスを見るが、黙って首を横に振られるだけだった。


「だから皆さん、飲み過ぎないように。ギルドホールの宴会が終わったらトレーラーで人目につかない場所まで行って、そこで最上スキルのお披露目だからねー」

「留守番はシャルに頼むのかい、セレス?」

「ええ。門番から見えない場所に行くにしても、そんなに遠くにはいかないでしょうから。シャルに結界魔法を張っててもらおうかと」

「そうかい。シャル、お魚をお食べ。悪いが留守は任せたよ?」

「にゃ~ん」


 浮ついた雰囲気であるのに酒量を控えるという不思議な宴会が終わったのは、もうすっかり真夜中になってからの事だった。

 セレスの使い魔、黒猫のシャルを残し、全員で南門を抜ける。もう眠ってしまっているゴンはジャスが、ミオはダラスがだっこしている。


「門番さん、驚いてたね」

「そりゃそうよ。こんな夜中に侯爵と次期侯爵を連れて、安全な村から出るんだから。客人のリーミヤが一緒じゃなきゃ、王都に通報されてるわよ」

「俺に敬語なんか使ってるけど、やっぱ偉い人なんだねえ。ファウンゼンさんとケーダさんって」


 客室に向かいかけたファウンゼンを、リーミヤが運転席に誘う。

 それで何かを察したらしいセレスは、自分が助手席に座るからと2人を先に後部座席に乗せた。

 夜中の田舎道をトレーラーが進む。


「リーミヤ殿、私にお話でもあるのですか?」

「そんなトコです。ファウンゼンさんは、希代の軍略家であられると聞きましたので」

「・・・ケーダですね。そんな大層なものではないというのに」

「ご謙遜を。さっそくですが、ファウンゼン領の地図を俺が見るのは違法ですか?」


 ファウンゼンが微笑む。


「違法ではありません」

「じゃ、防衛計画があるとして、それを見せてもらうのは?」

「違法ではありませんが、領主の本音が覗けるので普通は見せませんね。明日にでも、自室にお越し下さい」

「見せるんだ?」

「リーミヤ殿が言ったのですよ。仲間になれ、と」

「ありがとうございます。あ、バダムさん。そろそろ右に曲がんないと、山と山の間に行けないかも」

「わかりました。しかし、この辺りはまばらな木立ちとはいえ、そこまで乗り入れられますかな」

「わっかんないねえ。ダメなら広い場所まで戻って、朝になってから車両を作るよ」


 生産系のスキルを使用すると、かなりの光が発生する。

 夜にそんな発光現象が起きれば、それを見た住民は衛兵に通報くらいはするだろう。


「万を超えられない街が点在する国、か。まるで国取りゲームだね」

「ゲーム、ですか?」

「お、いい発音。こっちで言うと遊戯。戦争の訓練に、そんなのをするんですよ。ウチの国」

「・・・具体的にはどのような遊戯。いや、ここで聞く話ではありませんね。時間のある時に、是非ともお聞かせ下さい」

「はいな。ありゃー、もう進めなくなっちゃいました?」

「そうですね。少し戻った所は拓けていたので、そこで朝を待ちますか」

「ですねー。夜明けまでまだ時間あるから、俺は狩りにでも行こうかなあ。朝ゴハン獲りに」



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