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おずおず!

家々に明かりが灯る頃、サンタンデールはガッカリした顔で歩いていた


中サマ犬の毛皮が思ったより高値で売れなかったせいだ、


「最近この辺りに魔獣が多いのよねぇ、縄張りが変化したのか平気で人里に入ってくるのよ、お陰で手一杯でねここのギルド連中は仕事が増えて喜んでるんでしょうけど」


受付嬢はハアと露骨に溜め息を漏らした



「銅貨20枚でどう?」


「そんな安い宿も取れやしないじゃないですか」


「だから言ったでしょ、この辺りに魔獣が増えたって、中サマ犬なんてしょっちゅう討伐依頼が来るようになったのよ、申し訳ないけど毛皮の在庫は沢山あるの」


嫌なら別に良いわ


そう言って机の上に頭を乗せた、よほど疲れているのだろう、サンタンデールの目に写る受付嬢はそのまま寝てしまいそうだった


渋々納得した

「じゃあそれで良いです」




まあいいかどうせ駄賃程度にしか考えてなかったし

そう自分に言い聞かせサンタンデールは酒場に直行する




「兄ちゃんちょっと待ちやし」



通りを早足で歩いていると

紫のローブを纏ったスキンヘッドの男に急に呼び止められた

 全体的に細い体をしているが背丈はサンタンデールより一回り高い


サンタンデールは男の丸刈りの頭部よりも男の持つものに興味をそそがれた。スキヘッドの男は少々大きめの杖を黒い手袋を付けて握りしめていて。そして杖は薄く紫に光っている

サンタンデールの目からはその杖に何やら災いの香りがした


「何だよ俺は女の子の頼みしか受け付けてねえぞ」


お前に妹がいれば別だが


「まあそう言わんで一つ人助けと思って」


そう言い意味有りげにウィンクしてくる

今日の夜は空いているという意味ではない事をサンタンデールは心の中で祈っていた


「」



「兄さんよう食いますなあ」


「お前の奢りと言うからなあオイロブスター追加で」


スキンヘッドの男は呆れた顔でやれやれと小さく言った


「そいでね兄さん最近魔獣が増えてると言うてたでしょ」


「あぁ受付嬢が文句言ってたな…店員さんロブスター追加で次3匹程ね」


「そう自分思うんよ、兄さんよう食べますなぁ、コレには何か訳があるやなかとほら名うての護衛団も魔獣の襲撃受けて玉束歌劇の一人娘とはぐれたりとか」


「そうだな、ここのギルドも静かすぎた。全員出払ってるみたいだったぞ。あっその皿取ってくれ」


「ほい、生態系が変わったといえば聞こえは佳いんですがねぇ自分としてはもっと深い事情があるんやないかと」


コイツ勿体付けて話すの上手いなあ


「詳しく話してくれ」


グフフフフフフフとスキンヘッドの男は元から細い目を線にしながら意地悪く笑い



「自分が魔獣と過程してもしこの近くに新しい魔獣が住み着いたらどないなります?」

そう問いかけてきた

「しかもその魔獣は強いとなれば、自分が魔獣やったら怖くて近寄れませんわな」


スキンヘッドの男はまだ笑っている


「そういえばブブセブラというこの街の名前格好いいと思いましてな由来なんやろと思いまして自分ちょっとここの図書館で調べてみたら面白い事実が有りましてな」


スピカの父親のように人を小馬鹿にしたような笑みではないものの、スキンヘッドの薄ら笑いはサンタンデールにとって不快以外の感情を催すものではなかった


「凶暴なドラゴンをこの地に封印した男の名前らしいんよ」


そんな突拍子もない事を

「つまりその凶暴なドラゴンの封印が解かれて魔獣共が山から降りて来たと」


「そや、そして何やここらへん賑やかやわと思いましてな、玉束歌劇呼んだりして近々祭りを行うらしいんやなかですか丁度この街にブブセブラという男性がやって来て1000年目という事で」



「面白い話ではあるが考え過すぎてはないか

、第一それはもうお伽話の領域だろ、その凶暴なドラゴンが現れたらここら何て一気にドッカーンだ偶然だ偶然」


そのドラゴンが1000年越しの封印されるのならそ

れだけの理由がある筈だ山に滞在しているだけでそんな事をされたらそのドラゴンはキレていい、



「凶暴という言葉が付けられる訳は凶暴という言葉付けられるだけの由縁があると言いたいと」


「だろ?"凶暴"なドラゴンが復活して我ら人間にどんな災厄をもたらすかと思いきや、魔獣共が山から降りて町の畑を荒らすだけ何てそんな馬鹿な話があるか」


杞憂すぎると思ったし、サンタンデールはもう少しこの男から情報を貰いがため、わざと否定的な意見を述べた


スキンヘッドの男はちょっと困惑したような表情をして話の続きを語りだした


「う~むこの話をしていいのかどうか悩みますがコレも兄さんがあっしを信じて貰いたいがため致し方ない」


「兄さん海と陸の神獣についてご存じで?」


「リヴァイアサンとベヒーモスだろ名前だけしか知らんが昔絵本で読んだ事あるよ」


「せやこの世界が魔力に覆われる前から存在していた動物、有り体に云えば神の供物やね、兄さん絵本持っとるんかいな恵まれた幼少期なようで、オトットットそんなこあい顔せえへんとって下さい。ニ体一対、陸に住む最高の生物ベヒーモスと海に住む最強のリヴァイアサン。2つともよく話に出とるやんかリヴァイアサンが尻尾を振るだけで津波が起きるとかベヒーモスが息を吸う度に竜巻が起きるとか多少オーバーな気もありますがね、そこにおるだけで危険な事は今も昔も変わりやしません。」


「ところで兄さんジズって知ってます?」


「いや知らん何だそれは」


「あぁもったいない!それさえ知っていれば事の重大さを今一度分かって頂いたのに!あぁ残念な事やわぁ~…ジズゆうのはですねコレも先ほど申したニ体と同一の神獣なのですよ」


オーバーリアクションすぎる

この男の動作がサンタンデールの目ではわざとらしく見えた

「何か問題でも?ていうか話脱線してね?」



「いやいや脱線しておりませんがな兄さん問題なのは、誰も兄さんみたいにリヴァイアサンとベヒーモスの他にもう一対おるゆうことを知らんのですよ。その名は最後のジズ言うんですがね空の神獣何ですが陸と海の神獣と比較して圧倒的に資料が少ない驚く程にね、だからジズ言うのは後付けちゃうかと学者の中ではそう結論しておるのが現状だったんよ」


だった

つまり今は違うと?


「派遣されて言われたんですがねジズの目撃情報は結構前から在ったらしいんよ、5000年クラスのがポツポツとなそれが何やある日を境にばったりと消えてもうてな、そのせいで空想扱いに」


まて先を言うな



「ジズが最後に目撃されたのはこの国らしくてな確か幾つくらい前かウーン」


スキンヘッドの男は唇を舐めがら考えるフリをしている、


「あっ思い出したわ丁度1000年前やな、あぁ何やブブセブラの祭りと被ってしまいましたわ、あらあら凄い偶然であら?兄さんどないしたんです?顔面が真っ青やなかですか」


一呼吸置いてスキンヘッドの男はこう述べた


「まるでわてが"そこにおるだけで危険"みたいに思われますやないか」


スキンヘッドの男の目が妖しく光った瞬間をサンタンデールは見逃さなかった、俺が絶望する様を見てみたいというような


「つまり俺らは神獣の縄張りに住居を構えその中で1000年暮らしてたと」


火山口に家を建てたみたいなもんか


「まあまだ確証はないんですがね、ジズゆうのは縄張りを構えず転々で場所を移動しよるんよ、もしかしたらブブセブラにはもうおらんかも知らん、封印が弱まっているだけでまだ解かれてないのかもしらん。全てが間違いでジズではないバケモンかも知らん、上の者達の推測であって情報が少ない、とどのつまり現時点では、この国で起こった事象の原因は「分からない」の一点に帰順してしまうのですわそこにジズゆう単語を除いてな。兄さんは情報の非対称の解消が目当てやったようやけどわてらかて知らんのですから、コレ以上の掘り出し物は諦めてください、で一応現場を見とこうゆうて、こうして少しでも人集めしてる訳で、そしたら何やアソコのギルドん中は今にも倒れそうな顔つきの巨乳の姉ちゃんしかおらんやなかですか、で仕様がなしにアソコのギルドから出てきたコレまた死んだみたいな目の兄さんにお話をと思いましてな」


「へえそれで神獣を倒そうと」


「倒そういうよりはもう一度封印しとこうと、実際ジズの語源は"死ず"から来とるみたいでな能力的にいうたら不死身の体なんよ」



殺す事は不可能やね


「今結界師を20人程連れてましてな、本来一人で封印ものに20人は少々多過ぎな位ですがここで問題なったのが」


「護衛が必要になったと」


「そや、わての直々の部下差し引いて最低でもB級そいで最低でも15名。魔法職は結界師で事足りるから剣士中心に、また出来ればブブセブラの祭りが終わる前に事を済ましたい、つまりは」


「あと17日という事か」


「せや、兄さん理解が早くて助かるわホンマまあ準備するには十分すぎる時間やとわては思うてます」


「そいで兄さんはランクはいくら位で?」


「Bランク」


「ほうではあと14名やな」


そう言ってスキンヘッドの男は腰に付けてあるポーチからゴソゴソと金貨を取り出した


「ここに10枚金貨が有ります、ジズを封印した証にはもう10枚程やるつもりです。ホンマは銀貨が良かったんですがね、ほら兄さんのような風体やと金貨取り出した時商売人が怪しむでしょ。しかしながら幾分と手持ちが重なり」


スキンヘッドの男は頭を下げた


「どうかコレにて」

良いのかい?俺は銀貨だろうが金貨だろうが構わず

ホイホイ取っちまうような男何だぜ


「もしその金貨だけ受け取って俺が逃げたとしたらどうする?」


「どうする事もしませんわ、この件はお金やのうて持っと大事なもんがあると思って下さい」


「実績か」


「そうですもし神獣相手に立ち回ったとなればそれはそれはその人自身の付加価値が大変な物になりましょうて」


確かにもしかすると一気にAランクに私の名前が刻まれるかもしれんな


「分かったこのサンタンデール喜んでお手伝いしよう」



「あぁそういえばわての名前言っておらんかったでしたな」


「サルバトーレ興国アリクス騎士団が一人アオサギです」


そう言って首から下げていた黒い薔薇の紋章の入ったバッチを取り出した


「………………」


アオサギに付いてサンタンデールが知っている逸話が幾つかある

有名なものがアオサギがS級ランクに成って月日がそう経っていない頃に流れた、アリクス騎士団がアオサギの元に訪ねた時の話だ


旅芸人がよく劇にするお話だ




高い山が有りました。中腹からでも近くの村が一望出来る位高い山でした

しくしくと雪が降り注ぐその山の峠からの景色はアオサギにとって世界がこの上なく広い事を実感するには充分でした


アオサギはこの広い世界に一人ぼっちでした

アオサギはドラゴンを倒した際に呪いに掛かったのでございます


アア、可哀相なアオサギで御座います

ドラゴンを倒した所アオサギの住む村は皆が皆彼の偉業を祝福したのです。


ドラゴンの悪行は村の中で有名だったのでございました

オーンオーンとドラゴンの鳴き声が村にまで聞こえる度に人々の表情は曇って来ました


ドラゴンは顔山の梺から降りてきては、若い女をかっさらい

村の財を奪い家に火を放ち邪悪の限りを尽くすからです。ですがその業を誰も止める事は出来ませんでした何故なら村の誰もが弱い人間だったので御座います


しかしながらアオサギは立ち上がりました。幼い頃に殺された、親の敵を討つ為に?いや村の皆の笑顔がみたいからです

そのドラゴンを倒す為に邪悪なる術に手を出し、ドラゴンと同じ魔法を使い、ドラゴンと同じ外道の道に手を染めて


高い山に住むドラゴンの体を地獄の炎で燃やしました

ドラゴンは絶命する直前アオサギに語りかけました


「我を倒して終わると思うな貴様は自身の愚かさを醜さを貴様自身が思い知る事になるであろう」


アオサギにはドラゴンの最後の言葉の意味が分かりませんでした


アオサギが村へ戻っても、村の皆から感謝の言葉を貰って、アオサギが微笑する時も村の皆から英雄と持て囃されても、その村で盛大な祭りがあっても、ドラゴンをどの様に仕留めたかを子供達に聞かせても大人達に代わる代わる酒を注がれて、夜自分の寝室で倒れるように横になっても、アオサギには分かりませんでした




ドラゴンが死んでしばらくしたあと、アオサギの心の中に奇妙な疎外感がおずおずと侵入して来ました



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