表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/19

さいかい?!

ブブセブラという街はスピカの思っていたよりずっと大きかった


城はないがスピカは旅の途中自分達が立ち寄った城下町のどれとも遜色のないものであったし


魔物よけに作られるブブセブラの城壁が遠方まで伸びていて一体どれ程の金を掛ければ其処まで大工屋を雇えるのかと真剣に悩んだ程だ



「あの門番は仕事しているのか?」


門番は欠伸しながら私達を見ようという素振りすらしない

でほぼ素通りで門を通り抜けた所でスピカは尋ねた


スピカの中では例え魔獣が表れてもあの門番は仕事をしないのではないかと思ったほどだ


「あ、あれ?顔パス俺イケメンじゃん」


一呼吸置いてスピカはサンタンデールの顔を見た

眉を吊り上げまるで変態をも見るかのような目つきでサンタンデールに言い放った


「もし髭を剃り髪を整え身嗜みに気を使い指の先まで綺麗に体を洗い流し目に隈が出来るまで夜更かしをせず死体のような死んだ目つきをやめネコ背の姿勢を正し10歩く度に唾を吐き出しレディのいるすぐ隣りでお花を摘む作業をせず黒く汚れた爪を切ればイケメンであろうな」


死体のような死んだ目つきって

コイツは私を殺そうとした癖に態度がどんどんデカくなっていってないか?


「おい何だってどこにレディがいるというのだイビキがすご」



腹はやめて


奴は強引に私のみぞうちに容赦なく拳をのめり込んませた。もし暴力という言葉が出来る前に奴がいたのならばきっとスピカが暴力という意味になっていた筈だと私は膝をつく直前にそう感じた


「レディは貴方の目の前に見えるわよね」


「お、おっしゃる通り」


「取り敢えず宿屋に行きましょうか」


「ま、待ってくれお嬢さん貴方にやられた腹がまだ立ち直ってないんた」


スピカはブブセブラの街を歩く度にに魅了された


街並みがどの都市よりも色とりどりで華やかで見上げる程に家が高い一つ一つが屋敷のようだった


行商人がとても多くあちこちで商売の話をしている


美味しそうな匂いがして来る料理屋

火の粉がこちらにも降ってきそうな程活発な加治屋

「号外ー号外ー」と言いながら走っている新聞屋

鮮やかな色で、見るものを虜にするような洋服店


こんなに活発な街はスピカの生きてきた中で始めてだった


「あんまりキョロキョロするなよ田舎者だと思われるぞ」


「でも凄いよサンタンデール凄いんだ」


「今年はブブセブラの街にとって特別だからな活気があるのは良く分かるが」


あれを見てくれ小さな節が沢山ある鼠が籠の中で動いてる!





おもちゃ屋を指差しながら目を爛々と輝かさせてスピカは言ったが

とうのサンタンデールとしては早く宿をとってかのご婦人の情報を探りたいと感じてたし何より街で合流すると言っていたブラウンの安否が気になりかけていた



「どうせ宿で予約したあとまたこの通りに来るんだならば早く済ました方が良かろう」


近くの宿屋を指差して此処に行くぞと合図したが

スピカは嫌と首を振った


「あそこじゃ駄目メドレーヌという宿屋がいい」


サンタンデールはビックリした


この女は何を言い出すのか



「いいか?メドレーヌというのはそれはそれは

高貴なるお人か特別な団体しか中に入れないんだし、あいつらのような人の不幸で飯を食っているような人間の佇む場所には天地がひっくり返っても私は中には入らんのだよ」


ガシッ

 

服の袖を掴まれた


「サンタンデール私は行きたいんだ、勿論連れて行ってくれればちゃんとお礼はするし、サンタンデールの望む事なら一つだけ言う事を聞くと約束する、私は私の頼みはそんなに駄目な事なのか?」


服の袖を掴み上目使いで言う台詞ではないだろうに


こんなとこで女の子になるんじゃねえよ


「あそこの角を曲がって大通りに進むそこから西に歩けばドデカい看板にメドレーヌってのが書かれてるから」

 

遠まわしに一人で行けと言ったのだがスピカは

お構いなしに


ついてきてと


服の袖をそんなに引っ張りがら言うなヨレヨレになる


仕方なくその宿屋まで連れて行く事に



しばらく歩いた

途中サンタンデールは止まったりしていたが、サンタンデールは歩くのを諦める度スピカは尻にキックを入れていた


「」


メドレーヌという宿屋は中々派手であった豪華絢爛という言葉にコレほど相応しい宿屋はないとスピカは思った


サンタンデールは成金趣味ここに極まりと呟くとメドレーヌの玄関先にまで近くまで来ようとはしなかった


「今に見るがいい、金を纏えルビーを身につけろダイヤで着飾れ、どんなに綺麗に装飾しようともお前たちの邪悪な心は決して隠れる事はないのだから」


取り敢えず宿屋に入ろうとしたスピカに言う台詞はとても辛辣なものだった


一発殴っても良かったが

スピカは私はサンタンデールに礼をするのだと自身に言い聞かせ


行きたくなあィと駄々をこねるサンタンデールを無理矢理引っ張りながらメドレーヌに入って行った



「お父様」


「おおスピカ心配していたぞ予定より遅かったな」


ブラウン並みの体躯を持った獣耳族の男がその男を中心に群がる人だかりを押しのけスピカに話かけてきた


目を見開きスピカを両手を広げ抱きしめようと近付く、その際にスピカの隣りに放浪者のような格好をした男がいる事に気付きに邪険そうにサンタンデールに目を向ける



「スピカこの男性は誰だ?」


「お付きの者と私がはぐれた時にブブセブラまで護衛して頂いた方ですわ」


人を殺そうとした事を獣耳族なりにオブラートに包んだ言い方らしい


「何とそんな事があったとは」


獣耳族の男は1人でうんうんと頷く

それでもサンタンデールに向けられる猜疑の目は治らなかった


「そうかではコレを受け取ってくれ」


そう言って男は腕に付けている金のブレスレットをサンタンデールに差し出した


「良かったな、幸運に思うがいいオルティス家の娘を道案内しただけで、お前はこの先金に困る事はないのだぞ」


目尻が下がり口元を歪め白い歯が見え隠れする

頬の皺がよりいっそう深くなる


馬鹿高い天井に吊されているシャンデリアの光が老人の皺を際立たせているせいなのか

不思議な事にこの老齢の男性の微笑みがサンタンデールには微笑みには見えなかった


「いや結構で御座います。小生は貴方から見返りを貰う為にオルティス家の娘と同行した訳では有りません」


「何、遠慮するなコレは礼だ」


「大丈夫ですスピカを心配する気持ちだけで小生は事足りるのですから」


彼は本当に親切心からの行動だろうとサンタンデールは察知するも、それは私を弱者だと判断しての態度である事も感づいた


彼にとっては畜生に餌付けをする感覚なのであろう

とも思った



「おいおい建前はその辺にしておけ本当にやらないぞ?」


もし私がオルティス家の人間だと気付かなければ

スピカを助けなかったと思っているのか、底辺にいる人間は心まで底辺と決め付けられている

それが溜まらぬ程サンタンデールは苛立ちが募った


「まだ何か欲しいのか?」


体が熱くなるのを感じる

サンタンデールは、スピカに対してお前が言っていた礼とは私を貧しき者と断定し金になる物を施す男を紹介する事なのかと、侮蔑の眼差しで見やったが

スピカにはサンタンデールの思いは届かなかった


「受け取って下さい。コレは私達の感謝の気持ちです」


ニコニコと笑いながらスピカがそう述べるとサンタンデールの中で何かが消える


失望したと言っていいだろう、少なくともサンタンデールにとってスピカとは、金で解決するようなそんな仲ではない筈だと思っていたからだ


今度村のギルドにスピカを誘って一緒に中サマ犬を狩りに行こうと考えていた、朝の時のように冗談を言い合いながら。礼など要らなかった

借りなど返されたら会う理由がなくなるではないか





サンタンデールは深々と頭を下げた



「失礼、香水越しですら分かるその陰鬱な加齢臭が漂う男のブレスレットなぞを受け取る嗜好を小生は持ち合わせておらんのです」


スピカはビックリした

ちゃんとお礼をしようと思った。その相手が自分の父に対して平然と屈辱的な言葉を放つのだから

父はビックリして口が開きっぱなしだ



「サンタンデール!!」


大きな声でお辞儀を行う男の名前を口走る

エコーとなって周囲が何事かと寄ってくる程だ


何を考えているのか分からなかった、何を思っているのか分からなかった


ただ顔を上げたサンタンデールは私と私の父を見る目を変えたようであった


いとも興味がないような、そこに人がいないような


「失礼」


カッカッカッと快活に音が鳴る


サンタンデールは駆け足で宿屋のフロントから出ようとしていた


サンタンデールがその場から離れる際我を取り戻したスピカの父親が吠えた


「お、お前のような目つきを知っているぞサンタンデールとやら、あれは10年前だったかガンドラで大きな屋敷に住んでいた貴族が民衆の目の前で火炙りにされる時、丁度お前のような顔をしていたぞ!!」


その死人のような目つきをな


そう早口で怒鳴ったスピカの父親を扉を開けて外に出る前にサンタンデールは一瞥した


冷たい目だった


「…」


サンタンデールは何も言わなかった

彼らと同じ空間に居る事を恥だと思った

ギイと重い物を引き摺るような鈍い音を響かせながら扉は閉まる


その扉が閉まるまでスピカは呆けた顔をしていた

どうしてサンタンデールがそんな目で私を見るのか分からなかった、彼を殺そうとしても彼を殴っても彼は少し困った顔をするぐらいで済ましてきた、ヘラヘラと笑い私に対してちょっと頼りないけど穏やかそうな視線で皮肉を言ってきたのだ


それがスピカの中での彼であり彼の全てだった


「」








メドレーヌから出てきたサンタンデールは外の空気の清々しさに感動を覚える


まるで何かから解放された気分だ

荷物から狩ったばかりの毛皮をここのギルドに持っていって、換金してその金でブラウンが言っていた海老が美味しい酒場へ行こう


そこでブラウンを待っていよう



ウーンと背伸びをして

やる事が一杯だと呟いてサンタンデールは大通りの人ごみの中に入っていく


荷車を引き摺る音がする、通行人同士の世間話

何処からか聞こえる笑い声、号外と叫ぶ新聞屋、、騎士団の鎧が擦れる音、子供が歩く音、

子供が走る音


ドテッ


転ぶ音


ブブセブラは夕暮れ時でも賑やかだ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ