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ブラウンのおせっかい!

この村は一つの緩やかな山のふもとにある

冬になると一面が銀世界に変わるのだが今はそれも昔


枯れた木が息を吹き返そうと花を咲かせる

実際には少し早いがサンタンデールが耳をすませばザクザクと長い眠りから覚めた動物達の枯れ葉を踏む音が聞こえてきそうでもあった

雪が解け屋根からチョロチョロと水滴が落ちてくる



季節が変わってきた

春の訪れだ


あのウィザー族の男が広場で雪を纏いながら転がった日から幾つの時を跨いだのだろうか



まだ夜も覚めやまぬ時間に、私は準備をしている


隣町に私の好きな人に会いにいくためだ


しかして伝書鳩で送れば済む話を複雑にしたのは

ブラウンが手紙を書く事は出来ないと言ってきたからに始まる  


「何でだよ」


「相手の顔が分からん」




呆れた

それならば最初に言うべきだろうに



ブラウンが手紙を書けば大抵の女は落すとせてきたのだ、今更顔を見ていないだけすで何をのたまうか


「とりあえずその女性の場所まで連れて行ってくれないか?」


更に呆れた 会いにいって何が変わるのかブラウンがそう言ってきたのは始めてだ、何時も通りなのに何が違うというのだろう

彼は一体何を考えて入るのだろう

私には分からない


幸いな事にギルドから2週間の暇を貰っていた


というより私が受注しようとした要件を



全部かっさらわれた、と言った方が正しいか

昨日の晩に話した有角族の男やフランツは俺の顔をニヤニヤ見ながら受注してたし


ジュリア何かは「何故あんな奴の為に」とブツブツ言いながらキャラバンの護衛の案件を受けてたし


皆さん遠慮という物を学んで下さい



「別に良いけどよ、そこまでする必要ないんだぜ運が悪かっただけで」


私が暇だからという事でブラウンまでもが暇とは限らないだろう、相談に乗った手前言いにくいのだが

この件は無かった事に…




「お前は途中で約束を破る人間をどこまで信用する?」


…出来なかった



「いや何もないです本当にありがとうございます」



ブラウンと一緒に歩くのは今日が初めてではない

寡黙で融通きかないウィザー族の筈なのだが

今日は仕事ではないと、分かっているせいが

このウィザー族ノリノリだ、というより旅行しに行くみたいだ

ギルドへのお土産は何がいいか私に聞いてくる


「見ろ今、隣町は旅芸人が来ているらしい」


「あそこの酒場はロブスターが美味しいらしい」


「今月は隣町は大事な祭りがあるらしい」


村から出てそればっかだ


「その貴族の住んでる屋敷は隣町で良かったよな」


「ああそうだなここから歩いて2日程か」


「名産品は何だ」 


「苺…かな、あそこの苺は通常より大きな実でかじると凄く甘い、わざわざ隣りの国から商人が来るそうだ、」


「ジュリアとゴロウにはそれでいいな」


土産の話とかもう旅行じゃね?


「ジュリアは兎も角、あの有角族の男にも上げるのか?知り合いがアイツ常時ニヤニヤして気持ち悪いと言っていたぞ」


「? お前はゴロウの事はそんなに嫌いか?アイツはアイツなりに頑張っているが」


「嫌いではない、只あまり親しくない者に何かを貰ったとしてソイツは喜ぶか?」


「俺なら喜ぶ」


「私なら何か裏がありそうで手を出さない」


ブラウンは頭をポリポリと掻き始める

「うーム だがギルドの中で独りだけ何もやらんのは気が引けるな」

 



本当に呆れた男だブラウンは全員分の土産を買うつもりでいたのか

 

「高々隣町に行く位でそんなには要らないだろうキャラバンの護衛をやればもっと遠くの町だって行くのに。それにお前が全員分の土産を買えば他の皆も隣町に行ったくらいで全員分の土産を買う必要になるかもしれないんだぞ」


「それは私がやりたい事をやっただけだ、皆から見返りを欲しくてそうしているつもりはない、Sランカーは金が余っている、そう風潮してくれ」


「サンタンデールやお前が思うよりもこの世界は優しさで満ちているのだ、なれば私が誰かに優しくした所でお前の生きる景色は変わらない」


ウィザー族の頑固さは矢張り健全か


ブラウンは一向に折れる気配はない


別に私はそれでも良いと思う、ブラウンが人に優しくするのは今に始まった事でない。


現に私は今助けて貰っている、ただ観光に行く理由にされてるだけな気がするが



だがブラウンがそうする事によってこの先、ブラウンをあてにして自分は何もしなくなる輩が出てくるのではないかと、フランツは私に警告していた

 

「人に優しくするのは大事だろう」


「だがな一番大事な事は、何も努力をせず報酬を手に入れた時、ソイツのこれからは一体どうなるのかという事だ」


フランツに言われた時をふと思い出した。


ブラウンは何時までもこの土地に要るわけではないのだ、離れる際ブラウンに依存していた連中はどうなる?


「……そうだなブラウンの悪口は尽きる事はないからな」


少し、ほんの少しだけブラウンが微笑んだ気がする

サンタンデールはこの優しい鉄面皮の男もそんな表情が出来るのかと驚いた



「優しさか。知っているかサンタンデール我々の頭には二つの人格があるらしい。」


「意味が分からん」


「二体一対だよサンタンデール、丁度二つに分かれた神獣のように真逆の思考回路さ、人に優しくあろうとする自分と人を虐めようとする自分が共存している、頭の中でな」


「ブラウン、もし、それが正しいとしてどうなる?そして歩きながら話す内容か?」


「聞けサンタンデール、一度死んだ人間が転生したとする、その時一個の魂は、二つの人格。例えるなら善と悪どちらに付くと思う?そして転生した人間は同じ人間だと言えるのか?」





「魂も二つあるんじゃねえの?ところでブラウン2週間程仕事がない理由を知らないか?」


「む」


ビクッとビックリしたような仕草をした

何か嫌なものを発見した様子だ


ブラウンは路道で急に立ち止まり何かを確認するかのように辺りを見回した


「オイこれ以上無駄話をするな、5時の方角にシカトウマがストーキングしていたぞ」


「シカトウマ?じゃあ大丈夫だぞブラウン、シカトウマは草食でおとなしい動物だ縄張りに入り込まない限り襲いかかる事はない」


1ヶ月前にこの土地に来たばかりのブラウンにシカトウマの生態を理解する事など無理がある


今度シカトウマについて講義しよう、シカトウマはとても賢い動物なのだ 


「シカトウマの他にもカナタマ獣や中ナサ犬や亀体ペニペニーやらCランクモンスターがこの辺りにウヨウヨいる大量になこれは異常だ」


そして、とブラウンが続ける


「この街道はとても綺麗だ、きっと交通の弁が活発なのだろう今ここで退治しておかなければ、通行人は魔獣の餌食だ」


「それを食い止める為に私達がいるのだよブラウン君」


ドヤ顔で決めてやったぜ 

ここの組合から仕事を奪うな、これ以上私の仕事を


仕事を




「………」


あれ?何か、はぐらかされてないか?何か引っ掛かるような


「確かにそうだ、だが犠牲者が出てからでは遅いぞサンタンデール。カナタマ獣の毛皮を何体か剥ぎ取り、まだ大量に生息していると報告する、討伐の依頼は少し難解になるが、護衛の依頼は増える筈だ」


ブラウンは準備体操をし始めた


「では先に隣町に行っていてくれ、俺は此処で魔獣共を駆逐してくる、3日もあれば全てが一掃出来るであろう」


と言いブラウンは明後日の方向に走り始めた

ブラウンの巨大な体躯がどんどん小さくなっていく

アイツ自分がブブセブラで観光しに行きたいから、案内役に私の仕事を根回して潰しやがったな



「しかもコレはないだろう」


シカトウマを狙って、中サマ犬達が集まって来た


さてどうする?いずれこちらにも気付くだろうがその前に奇襲したい、だが急いで逃げたほうが余力を残せやしないか?


ブラウンは絶対に気付いていただろうに

私も倒すからおまえも手伝えと?


ブラウンめ流石におせっかいが過ぎるぞ










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