3話 ロボットが泣く
「……さ、最適解はどこですか……」
絶世の美少女AIロボット、RADY1号が大粒の涙を流しはじめた。
……ええええ!?
泣いちゃったよ、このロボット。泣けるのかよっ!
絶妙に俺の良心が痛む。
「愛蘭! 大丈夫よ。泣かないで。私が守ってあげる」
愛瑞お嬢さんが、RADY1号をひしっと抱きしめる。
愛蘭と呼ばれるロボットは、オズオズと愛瑞お嬢さんを抱きしめ返した。
まるで、慈しみ合う美しい姉妹のようだった。
「いやそれ、CPUが加熱したんで冷却しとるんじゃ。美しい機能だろう」
……博士がニコニコと笑って、雰囲気をぶち壊す事をサラッと言ってのけた。
愛瑞お嬢さんは固まってるし、RADY1号も泣きながら、紅光院博士を見つめている。
「博士がそういう曖昧な態度では困ります。 ……私も愛蘭を思いだしたりはしていましたけど、まさか愛瑞があんなに変わるなんて」
「元気になって良かったじゃないか」
「そういう問題ではありません。あの子は妹が亡くなったから、心を閉じて部屋を出られなかったんですよ。あの子には外はまだ無理です」
紅光院博士と頓出茂博士の話し方からして、この二人が共同でRADY1号を作ったんだろうな。
異色のコンビだ。
記事にしたら面白いだろうな。
「そんなことない! 私達、約束してたの。一緒にいろんなものを見に行こうねって」
引きこもってた愛瑞お嬢さんは、RADY1号を見て亡くなった妹だと思い込んだらしい。生前の彼女との約束を果たそうとしているのか。なんだか切ないと俺は思った。
紅光院博士は、眉間を指で揉みながら深い溜息をつく。
「“例外”よ。そのロボットを“愛蘭”と呼んでもいいわ……」
「叔母さま! ありがとう! 良かったわね。愛蘭」
「……“例外”。了承いたしました」
やれやれ。状況は落ち着いたようだ。
取材させてもらえそうだ。
人間そっくりで、会話できるAIロボットか。
なかなか良い記事になりそうだ。
「それじゃあ、あの、最新AIロボットについて教えていただけますか」
「はい。私は、お嬢様……お姉様を守り、時には身代わりになることを想定して作られたAIロボットです」
「愛蘭! 何度も言うけれど、私の身代わりなんてしては駄目だからね!」
「……わ、私は、どうすれば良いのですか? 博士」
美少女が大粒の涙をハラハラと流す様子は、俺を動揺させる。男の本能みたいなもんだ。俺は気づかれないように深呼吸を繰り返した。
「……愛瑞を守ることは最優先よ。それ以外は愛瑞の言うことを優先して」
「……了承いたしました」
愛瑞お嬢さんは、不安そうに愛蘭を抱きしめている。
俺は、どう取材したらいいか戸惑うばかりだ。
この雰囲気を、誰かなんとかしてほしい。
「あんまり泣くと冷却用水分が足りなくなるかのう。
感情処理、共感演算、 表情制御、対人最適化、自己抑制……過負荷なんだろうか。後で点検しなおさんとな」
頓出茂博士がボソッと呟く。
情緒が壊れてるだろう、この頓出茂博士!
俺の胸のトキメキを返せ。
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