14話 もっと聞かせてくれ
会場の外にいたファンが、ふと足を止めた。
微かに聞こえる音に耳を澄ませる。
「……今の音、何?」
一人、また一人と、会場の近くに人が集まってきた。
「レオン?」
「いや、違う。新しい演奏じゃないか?」
「これは……レオンが99歳のバースデーライブで奏でたソロ演奏よ。あのライブ限定の曲だわ!」
「なんだって!?」
「あ、また変わった……これは?」
「これは…………、レオンがまだ売れない頃に演奏していた曲だ!」
「何が起こってるの?」
「静かに! 聞こえない!」
演奏を聞いたファンたちは、次々とSNSに投稿した。
そして、会社には問い合わせが殺到した。
「今の演奏をもっと聴きたい」
「今日のライブでもやってほしい」
「誰が演奏しているんですか?」
その頃、ギターAIはまだ演奏を続けていた。
会場の外の騒ぎを聞きつけたスタッフが、ブルーの部屋のドアを叩くいた。インターホンを鳴らしても応答がなかったからだ。
しばらくして、不機嫌そうなブルーが出てきた。眉間には深い皺が刻まれている。
「何事だ? まだバンドメンバーが到着する時間じゃないだろう!」
「それがですね、レオンの演奏が聞こえると外で大騒ぎになっていまして……、問い合わせも殺到しているんです」
「なんだと!? どういうことだ!」
ブルーは焦った。
レオンの遺品であるギターAIに、何かあったのかもしれない。
大金を払って、紅光院家お抱えのロボットAI博士に仕事を依頼したというのに。
ブルーは慌ててスタッフと共に、ギターAIの部屋へ向かった。
その途中、どこからかフェンダーの美しい音色が聞こえてきた。
「……これは…………」
ブルーは唇を固く噛み締めた。
何も言わず、音の聞こえる部屋へと走った。
ギターAIは軽やかに演奏を続けていた。
頓出茂博士も満足そうに指を振っている。
岸矢や愛瑞は、楽しそうに踊り続けていた。
突然 扉が大きく開かれた。
ブルーが入ってきた。
全員が固まった。
ギターAIは演奏を止めた。
ブルーは重々しい雰囲気をまとい、しばらく黙っていた。
その体は小刻みに震えている。今にも火山が噴火しそうな雰囲気だった。
ブルーとともに駆けつけたスタッフは、恐怖で青ざめ、ブルーを見つめている。
やがて、ブルーは重々しい口を開いた。
「……もっと聞かせてくれ」
ギターAIは、ゆっくりと弦を鳴らし始めた。




