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8:望まれない真実と望まれた虚実


 これまでの繰り返しの中、彼が前世のことを思い出すことなど少しもなかった。

 最初こそ、まだ希望を捨てきれずに打ち明けたことがある。しかし、彼はすぐに私を頭のおかしい女だと判断して殺しにかかった。


「最初から思惑があって私を殺そうとしているひとに何を話しても無駄よね」


 以来、転生してから打ち明けることはなかった。

 そんな私に隠し事があるのだろうと察して、彼は聞き出そうとしてくることが増えたけれど。

 どうせ信じてもらえないのに話せるわけもなくて、結局疑われたまま死ぬことが多くなった。


「何を隠してるの」


 理不尽だと思った。信じないくせに暴こうとして、疑いの末に殺す彼はとても自分勝手な人だ。

 いや、望んでいたような真実ではないから殺すのではないだろうか。

 そう考えついたその生では、不信感をわざと煽って、彼が望む理想の真実に辿り着いた。


「他にお慕いしている人がいるんです」


 彼が思い描く理想の真実、虚実。それは、私の不義理な行為だった。

 全くもって酷い人。私に浮気してほしいだなんて。

 でも、貴方がそう望むなら。


「ねぇ、なんで嘘をついたの」


 だって、貴方がそれを望んだのでしょう?


「本当のことを教えてよ。殺さないであげるから」


 嘘つき。

 貴方はそう言って、何度も私を殺した。

 貴方のために嘘をついたのに。貴方が嘘をつくのはあまりにも不公平ではないだろうか。


「ねぇってば」


 美丈夫なくせに、どこか幼い話し方をする。

 美しいのに愛らしさを見せる彼に、状況も忘れて私は笑った。


「え?」


 虚をつかれた顔をする彼から、突き付けられていた刃物を奪い取り、首を掻っ切った。


「なっ……!?」


 鮮烈な痛み。返り血に染まる彼。

 赤。嘘ばかりつく私たちにお似合いの色だ。





 暗転して、世界が変わる。

 また違う自分に生まれ直す。


「初めまして」


 何度目か分からない初めましてをする。

 適当にお話をして、しばらく付き合いを続ければまた、次第に帯びる疑惑の色。


 ────うん、いいよ。


 許されない代わりに許そうと思った。

 私を疑う貴方を許そう。少なくとも、そうしている限り貴方の傍に居られるから。

 だから。


「ねぇ」


 貴方にまた嘘をつく。

 嘘つきな貴方のために嘘をつく。

 都合のいい現実を叶えるために。

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