2:信じない
恋に苦しみ泣き通した夜を何度か過ごし、月日は思った以上に早く流れた。
「思った通りになったわけだけれど、感想は?」
「……死んでしまいたいです」
「こらこら」
もう2年近く経ったというのに、あの人はまだ私を探しているという。
「案外、疑いだけで探してるわけじゃないのかもね」
「そんなはずありません。これまで何度も捨てられて……殺されてきたんですよ」
「“今回”は違うのでは?」
その憶測にすぐに首を横に振った。
何度も期待した。そして何度も疑われて、裏切られて、殺された。同じ結末を何度も迎えた。
私には、もう。
「今更彼を信じることなんて、できません」
「まあ、私としてはどうでもいいわ。貴女が来てくれて毎日が楽しいもの。これからもこの街で、末永くよろしくしていいのよ」
「……そう言って頂けると嬉しいです」
親友は筋金入りのお人好しだ。
つい、甘えてしまいたくなる。
「もう2年になるわ。死亡工作、する?」
「お願いします」
実家に手紙を送る。
自分を死んだことにしてほしい。そう書き記した。
『死体が見つかった』
『見るに堪えない状態のため、彼女の尊厳の為にも見ないでやってほしい』
家族たちは実に協力的だった。
速やかに国に報告し、大体的に私の死を世間に広めてくれた。
────それなのに。
「……どういうこと?」
「言葉のままよ。彼、ますますあなたを見つけ出そうと躍起になっているようね」
あの人は馬鹿ではない。
無駄なことに時間を割かない。引き際というものを、弁えられるひとだったはずだ。
それなのに。
────認めない。
死亡の報告を受けた直後にそう言い放ったのだという。
「どうせ、裏切るくせに」
信じてしまいたいと思っている自分に、何度目か分からない吐き気を催した。
こうなれば、こちらとしても意地を通さなくてはならない。
長期戦になろうが、彼が諦めるまで逃げ続けてやると誓った。
死亡工作の際、実家からは「こちらのことは気にせず、自分の幸せのために頑張りなさい」と言われている。……良い家族を持ったと思う。
かれこれ3年。貴族令嬢としてではなく、ただの女としての生活にもだいぶ慣れてきた。
私のために親友はたくさん手を貸してくれた。彼女のおかげで一人で生きていくために必要なことは全て覚えることができた。
後は、そう。
まだ心の奥底で燻っている鬱陶しい恋心をどうにかするだけだった。




