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Phase.613 『回復薬を求めて その4』



 あれから、結構な量の薬草を採取した。こういう時、力自慢の荷物持ちがいてくれると凄く助かる。佐竹兄の背負うザックは、漫画で出てくるようなデカさで、それをアメフト選手みたいなガタイの彼が背負うとまさに力持ちって感じで頼もしかった。


「大丈夫か?」

「軽い軽い。こんなもん、葉っぱしか入ってねーんだから、軽いのなんのってな」

「葉っぱじゃなくて、薬草よ」

「ああ、そうか。悪い悪い。薬草な、薬草!」


 気が付けば佐竹兄と不死宮さんは、気さくに会話するようになっていた。同じ拠点にいる仲間な訳だし、俺が知らなかっただけで既に気軽に会話する仲だったのかもしれない。


 先頭を佐竹兄と不死宮さんが歩き、その後ろを俺と北上さん。一番後ろから岩城さんがついてきている形になっていた。


 さっきよりも、緑が多い場所に足を踏み入れている。そして勾配もキツい。昇り坂かと思えば下り坂だったり、しかも足場はぬかるんでいたり草が生い茂っていたりして、滑って転んでしまいそうになる。気をつけて歩かないと。


「佐竹さん、不死宮さん! ちょっと待ってくれ!」

「おっ! なんだ!」

「なにかしら?」


 先頭を行く2人は、足を止めて俺の方を見た。俺は、鉈を取り出すと近くに生えている細い木をスパッと切った。そして棒状にしたものを2本作ると、1本を北上さんに手渡した。


「ユキ君、これって」

「杖があった方がいいかなと思って。なんかここらへん転びやすいし、草場が多いから蛇とかも隠れていそうだろ。杖があればそういうとこ、払ったりして用心して進むことができるからな」

「ありがとう、ユキ君。うちのクランで一番の用心深さだけの事はあるね」

「それ、誉め言葉かな。不死宮さんもいる?」

「そうね、それじゃ私も……」

「任せろ、俺が作ってやっからよ! ちょっと待ってろー!」

「おい、斧で切るのかよ。なら、鉈を貸すよ」

「いや、いらん。斧だって、本来は木を切る武器だろ?」

「武器じゃなくて、道具な」


 あはははと笑い合う。こんな時だからこそ、気持ちに余裕を作っておくのは大切な事だ。もしも時に冷静な判断をする助けにもなるだろうし、何より身体も固くならなくて済む。


 しかし……佐竹さんも親切で優しい人だったけど、佐竹兄もなかなか面倒見がいいんだな。手頃な木を見つけると、斧で切断して不死宮さんの為に杖を作ってあげた。


「岩城、お前も必要なら俺が……」

「あー。杖くらい必要なら自分で作るよ」

「あっ、そう」


 佐竹兄と岩城さんも、名コンビだな。そっけないように見えるが、仲の良さが伝わってくる。俺と翔太とか、翔太と鈴森みたいなもんかな。もしくは、北上さんと大井さんの間柄に近いかもしれない。2人は普段から凄くいい感じだしな。


「それはそうと、不死宮さん」

「解っているわ。まだ必要な材料があるの。薬草もそうだけれど、ポーションを精製するのに必要なキノコ、あとできれば他にも欲しいものがあって……」

「解った。折角外の世界へ出たんだから、取れるものは全部取って帰ろう。次は、どっちに行けばいい?」

「……それは……」


 キョロキョロと辺りを見回す不死宮さん。


「俺たちだってまだ言うほど、拠点から外へ出歩いていないからな。何処に何があってとか、詳しく把握していない。だから不死宮さんが行きたいと思う方へ行ってくれ。それが一番いいはずだから」

「それなら、あっちかしら。さっき斜面を少し登った時に、大きな木が見えたの。以前、そのキノコを見つけた時は、ああいう木の根元に生えていたことがあったから」

「解った。向かう途中、薬草も探しながら行こう」


 どんどん緑が濃くなってくる。気づけば密林のような場所に俺達はいた。


 そう言えば、未玖と一緒に外へ出た時の事だ。未玖が以前、住んでいた洞穴。あそこに行ってみた時、確かあの周囲はこれほどまで緑が深くはなかったけれど、密林みたいな雰囲気はあったなと思い出す。


 そうだ。俺達は今、川エリアから北西に進んでいるが、方角的にもそっちの方だ。


 上機嫌で前を歩く佐竹兄が、チラリとこちらを振り返った。


「椎名さん、この辺りってあれだろ?」

「ああ、用心しろよ」

「サーベルタイガーが出たとしても、俺がやっつけてやる。だから安心しろ」

「あてにはしているよ」


 いざとなれば、銃がある。それに北上さんのコンパウンドボウも。


 あの初めてサーベルタイガーと遭遇した時とは、こちらの戦闘力も随分違うんだ。例えば本当に今、目の前に現れたとしても、銃声をきけば逃げるかもしれないし、銃弾を浴びればただでは済まないはずだ。


「ちょっと、待って」


 今度は不死宮さんが、いきなり足を止めた。辺りの景色は、もう密林そのものだった。


「どうかしたのか?」

「あれ……」


 ちょっと斜め先に、平坦な場所があった。草木で生い茂っているが、わりと平坦な場所。しかもそこには、鮮やかな橙色の実をつけた植物が沢山生えていた。


 不死宮さんが足を止めたという事は、あの実もポーションを作る為に必要なものなのか? でも俺は、あんな実を初めて見る。いや、待てよ。俺のいた世界でも、あれによく似た果実を見た事があったな。


 そうだ、オレンジだ。オレンジにそっくりの実が木に沢山なっている場所を、拠点から少し離れた場所で発見してしまった。


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