↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
605/615

Phase.605 『撃退』



 ガサガサ、ガサガサ……


 草木の多い場所を鈴森と共に進んだ。別のルートから、小貫さんやトモマサも進んでくれている。何処かに仲間がいると思うと、心強い。


「椎名、ゴブリンの気配は見当たらないな」

「これだけ草木が生い茂っている所だからな。それにうちの拠点に運び込まれた奴らは、この辺りで襲われたって言っていたし……いるなら、もう襲撃してきそうなものなんだが」


 俺達よりも、この異世界に慣れているゴブリン。ここは彼らのホーム。そして襲われた者達からの聞いた話では、奇襲を得意としているようだった。


 ゴブリンと言っても、俺達と同じで同種でも得意不得意があるようだ。ゲームだったら、体力も攻撃力も防御力とかパラメータが統一されているものもあるけど、少なくともこの世界のゴブリンはそうじゃない。個々で強さや能力も違うし、よく見れば身体の大きさだって異なって見えた。言い換えれば人と同じく個性がある。


「それはそうと、未玖は大丈夫なのか?」

「はは、まるで妹だな」

「うるせーよ。椎名だって、未玖の事を妹のように見てるだろ」

「まあ、そうだな。その通りだよ」

「それで、どうなんだ? ゴブリンの群れが近くにいるとなると、前みたいにまた何匹かイレギュラーな奴が拠点内に侵入してくる恐れだってあるだろ。なら、未玖には安全なところにいるように……」

「それなら大丈夫だ。未玖には、怪我人の手当とかそういうのを頼んでいるから、パブリックエリアか草原エリアにいるだろう。今、そのエリアは一番人が多いだろうし、長野さんや翔太達もいる。それにアイちゃんと児玉さんが一緒にいるから、大丈夫だよ」

「そうか。ならいいんだけどよ」


 相変わらず、とっつきにくい性格の鈴森だが、それにも慣れた。それにこいつは、翔太が連れてきて紹介してくれたんだけど、翔太と同じニオイのする男だ。信頼ができて、頼もしい。俺と同じく、未玖の事を心配してくれている。


 少し前までは、俺や翔太は勤めている会社に行かなくちゃならないからって、平日の日中はこっちに来れなかった。


 その間は未玖が心配で、鈴森に未玖の事を頼んでいた。あれから仲間も多くなったが、こいつは今も未玖の事をちゃんと気にかけてくれている。


「なんだよ、その眼はよ」

「いや、別に」

「ッチ。文句があるなら、ハッキリ言えよ」

「文句なんてある訳ないだろ。逆に感謝してるくらいだよ」

「気持ち悪いな」

「そうだったそうだった。お前は男だもんな。感謝されるなら、俺みたいなおっさんよりも女の子の方がいいわな」

「はあ? 何が言いたいんだ、お前は」

「あの関西弁の女の子、可愛いじゃないか」

「はあ? なんだそりゃ。もしかして、ねねの事を言ってんのか? 言っておくが、ねねはな!!」

「そう言ってるけど、顔が赤くなって……」


 ビュッ!!


 何かが飛んできて、草むらに落ちた。鈴森と目を合わせる。鈴森は銃を抜くと、辺りを警戒した。俺は鈴森に援護を頼むとサインを送り、何かが飛んできた方へ身を屈めたまま近づいた。


 ガサガサガサ……


 草の擦れ合う音。この辺りだ。この辺りに何かが飛んできた。


「あった……」


 見つけたのは、やはり矢だった。手に取って調べる。矢じりに毒が塗っている場合も想定して、そこは触れないようにした。


「どうだ? 何か見つけたか?」


 離れた所から鈴森の声。顔が見える位置へ移動すると、大きく頷いて見せた。


「矢だ。木で作った矢。矢じりは、金属じゃない。何かの骨を利用して作ったものに見える。毒が塗ってあるかは、ちょっと解らないな。でもこれを射たのはゴブリンだろう。コボルトって可能性もゼロではないが、今この周囲にいるのはゴブリンらしいからな」

「やっぱりそうか。見つけたら、皆殺しにしてやる」


 ギャアア!!


 人間ではない、何かの悲鳴が聞こえた。直ぐ近くだ。俺と鈴森は辺りを見回す。近くの草むらが、大きく揺れた。銃を抜いて構える。


「おい、こら!! そんな危ないもんを誰に向けてんだ、この野郎!!」


 俺も鈴森もその声を聞いて、慌てて銃を下げた。草むらから出てきたのは、トモマサと我星君だった。


「すまん、トモマサ。ゴブリンに矢を射かけられたんだ」

「ほう、そうか。そんでゴブリンってのは、もしかしてこいつの事か?」


 草むらからガサガサと出てくるトモマサと、我星君。手で何かを掴んでいると思って目を向けると、なんとぐったりしているゴブリンだった。トモマサに引きずられ、我星君はゴブリンが使っていたと思われる弓矢を手にしていた。


「そう! こいつだ!! っていうか、倒したのか!!」

「まあな、何処かの兄ちゃん2人を陰から狙ってやがった所を、たまたま遭遇しちまってな。ワハハ、後ろから一気に迫って首を砕いてやったぜ」


 鈴森が、トモマサの引きずっているゴブリンを調べた。


「確かに死んでいるな。それで、このゴブリンの死体をどうするんだ?」

「え? 特にどうもしねーよ。仕留めたから、自慢しようと思って持ってきただけだからな」


 トモマサはそう言うと、ゴブリンを軽々と持ち上げて森の中へ投げ捨てた。我星君もゴブリンの使っていた弓矢を捨てようとしたので、慌てて止める。


「待ってくれ、我星君」

「え?」

「捨てるなら、それを俺にくれないか」

「ああ、いいッスけど。これ、手作り感満載だし、ゴミっスよ」

「ゴミでもいいんだ。調べれば、奴らについてまた何か解る事があるかもしれないしな」

「解りました。じゃあ、どうぞ」

「ありがとう」


 お礼を言って、弓矢を受け取る。何の素材なのか解らないが、弓と共にある数本の矢は、ちゃんと矢筒に入っていた。


「あれ? そう言えば、トモマサ」

「なんだ?」

「もう1人はどこ行ったんだ?」

「狗柴か? 狗柴なら、そこにいるぞ」


 トモマサが指を差した先は、俺の背後だった。振り返ると、狗柴君が棍棒を手に持って立っていた。なるほど、こんな近くに来るまで気配というか、ぜんぜん気づかなかった。


 鈴森が辺りを警戒してくれていて、気が緩んでいたのかもしれないが……なかなか俊敏だな。トモマサの連れてきた弟分2人は、かなり頼もしい戦力になりそうだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。