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Phase.596 『羊集落』



 草原エリアから丸太小屋のあるスタートエリアを通って、羊の住処エリアへと向かう。途中、未玖とアイちゃんが一緒にいるのが見えたが、何やら楽し気に話をしている様子だったので邪魔はしなかった。


 羊の住処エリアに入ると、ここもまた南エリアのように草木が生い茂って緑が溢れる場所になっていた。鉈を手に取り、草を刈って先へと進む。でも直ぐに、このエリアもかなりの広さだったことに気づいて、不毛だと草刈りを諦めた。


 草が密な場所は、強引に掻き分けて先へと進めばいい。


「しかしあれだな。草原エリア、スタートエリア、パブリックエリアは成田さんや松倉君や長野さん達がいて、普段から手入れをしてくれているからいいけど……このエリアと南エリアは少し目を離すとえらい事になるな」


 あれ? と、思う。


 そう言えば少し前に、刈ったり除去した草木が一気に増えたり成長して、辺り一面密林みたいになったことがあった。拠点内はほぼ全域がそうなっていて、外も同じだった。拠点とその周辺は、深い緑で溢れた。あれは、いったいなんだったのだろうか。原因は未だ不明だ。


 いくらここが異世界で、ファンタジーに溢れる常識では計れない世界だといっても、ああなったからには原因が必ずあるはずだ。


「落ち着いたら、調査してみてもいいかもしれないな」


 口に出していた。


 やっぱり気になる。原因は絶対あるはずなのだ。しかも拠点の周辺の方が、より影響を受けているような感じを受けた。そうだ、原因は、拠点内ではなく拠点外にあるのかもしれない。それならまたチームを編成して、調査に繰り出すしかないな。


 拠点の外に出るとなると、危険は大きくなる。だけどああいう事が、また起こる可能性はある。調査する事を考えると、好奇心を刺激されているからなのか、ワクワクする気持ちが湧いてきた。


 ガサガサー!


「ん?」

 

 草を掻き分け歩いては、また草を掻き分ける。だいたいの場所の方向は解るので、そっちへ向かってひたすら進んでいると、ついに拓けた場所へ出た。まるで縄文時代とかにあった竪穴式住居のような、藁で作った感じの家がいくつもある。その周辺にはストレイシープ達がいて、いそいそと何か様々な作業をしている。


「おおーーーい!」


 できるだけ脅かさないように、俺は大きな声で彼らに向かってブンブンと手を大きく振った。ストレイシープ達はかなり臆病な魔物で、声を聞いてビクッとしたようだが、俺だと解って安心して反応を見せる。短い手を振って挨拶を返してくれた。


 集落に足を踏み入れると、本当にここは彼らの住んでいる土地になっていた。スタートエリアや草原エリアに作った俺達の畑を真似ているのか、小さな畑もあった。既になにかしらの芽が出ている所から、未玖か翔太辺りが彼等に野菜とかの種をやったのだろう。


 メーー!


「えっと……メリーは、いるかな?」


 メ!


 10匹以上が集まってきて俺を囲んだ。しかも足に触れてくる。これは、彼等なりのスキンシップなのか? 一応、彼等は俺達の仲間になった訳だが……まだ彼らの事を俺達はよく知らない。ただ、可愛くて信頼たり得る存在だという事は解っている。


「うーーん、メリーはいないみたいだな」


 メーー!


 1匹がなんとトマトを持ってきた。それを俺に手渡してきたので、受け取った。プレゼント。どうやら俺にくれるらしい。


「美味そうなトマトだな。ここで作ったのか。それで、くれるのか?」


 メーー! メエメエ!


 なんて言っているか解らない。でもトマトをくれたストレイシープは、嬉しそうに跳ねたり向こうを指したり、何か俺に伝えたい様子だった。そしてやっぱりそうだったみたいで、ストレイシープ達は俺を囲むと近くにある別の場所へ行こうと、押されたり引っ張られたりして連れていかれた。


 集落から深い森のような場所に入り、また拓けた場所に出る。するとそこにはまた畑があった。見るからに美味しそうなトマトと苺が大量に実っている。


「これは凄いな! 全部、お前達が作ったんだな。本当に凄い」


 メメーー!


 メエ!!


 ストレイシープ達は、褒められているというのは解るみたいだった。皆、はしゃいでいる。そして今度は、苺を持ってくる。俺は礼を言うと早速トマトに被りつき、その後に苺を食べた。どちらも凄く甘みがあって美味しい! みずみずしさも十分だ。


 メメエ!


「うん、美味い! これならパブリックエリアで、よその転移者相手に商売もできるんじゃないか? でもお前達は、魔物だからな。ちゃんと説明しておかないと、他の転移者に勘違いされて討伐されるかもしれないな」


 メ!


 言っている事を理解しているのか? また嬉しそうに飛び跳ねている。


「ありがとう。それじゃ、俺はまだ行かなきゃならない所がるから」


 メエ!


「ああ、えっと、そうだな。暫くは、俺や他の仲間ももとの世界へ戻れないから、ずっとここにいる。一緒、暫く一緒だ。だから何か用があれば、いつでも会えるから」


 メエ!


 なんとなくは、伝わっているのかな? 解らない。メリーなら、理解しているって解るんだけどな。


 同じ拠点内にいる仲間だし、拠点から出る訳でもないのに、彼等に見送られてしまう。とりあえず、ストレイシープの集落を出ると、大谷君達がいつもいる場所へと向かった。


 前回そこへ行った時は、大谷君達はテントを張っていた。あれから少し経過しているし、自分達で小屋くらい建てているかもしれない。

 

 彼らの住処がどんな感じに進化しているのか、気になる。逸る気持ちを押さえて、大谷君達がいる場所へと向かった。


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