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Phase.593 『草原のプレハブ その2』



 面白い事を聞いたので、早速草原エリアに作ったというプレハブ風呂を覗きに行ってみた。


 スライド式のドア。手を掛けると、ガラガラと開けて中に入る。


「お、お邪魔します」

「どうぞー」


 ちゃんと成田さんが返事をしてくれた。少し照れる。


 プレハブの中に入ると、まず最初にちゃんと脱衣所なるものがあって驚いてしまった。


「どう? 凄いでしょ」

「す、凄い。脱いだ服とかタオルとか入れておける籠も、既に設置してあるんだな」

「残念ながら洗面台とかはまだ作れていないけど、脱衣所位ならこんな感じで作れたよ。必要でしょ、脱衣所?」


 必要ないんじゃないかと言いかけて、はっとした。成田さんは、未玖やアイちゃん、北上さんに大井さん、女子達の事を考えてくれていたんだと気づく。


 俺達男は、別に川で水浴びしたりドラム缶風呂でもいい。いや、ドラム缶風呂は実際未玖も入っているし、一応他の人から見えないように、タープやシートを張って目隠しはしている。だけど……そうだ。それでもやっぱり年頃の女の子からしてみれば、落ち着かないはずだ。


 それを考慮してみると、こういうちゃんとしたお風呂は必要だ。次に風呂場。大きめのバスタブ。考えてみれば、自転車やパレハブを組み立てるパーツというか、資材だって転移で持ってくる事はできた。バスタブだって当然、持ってこれる訳だ。でも驚きと感動を隠せない。


 成田さんは、バスタブの近くに置いていた金属の棒のようなもの。何かの装置らしきそれをとって、俺に見せてくれた。


「バスタブに水を張った後、これを沈める。そして電源を入れると、この水に沈めた装置が熱を帯びて、バスタブ内の水をお湯へと変えてくれるんだよ」

「す、凄い。そんな装置、もしかして成田さんが作ったのか?」


「ははは、違う違う。普通に通販でも売っているよ、これ。アウトドアでもお風呂が入れますってね。インターネットで検索すれば、簡単に手に入るよ」

「そうなんだ。しかし、こんなものまであるんだな。あれ? でも電源って……何処かに発電機もあるのか?」


 キョロキョロと見回してみたが、目にはつかない。そもそも水気のある風呂場に発電機が設置している訳もない事に気づく。


「いや、発電機でもいいんだけどね。ちょっとこっち来てみて」


 成田さんに従って、プレハブの外に出ると彼はプレハブの屋根の辺りを指さした。なるほど、ソーラーパネルか。この人は、本当に凄いなと感心してしまった。


「なるほど、あれで電気を作っていたのか」

「そうそう。発電機でもいいんだけど、例えば豊橋さんが使っているようなものだと、常にガソリンとか燃料を必要とするだろ? でもソーラーならこうやって天気のいい時に、発電できるし太陽がある限り電気の恩恵にあやかれるって寸法さ」

「流石だな、成田さん」

「いやいや。僕はこういう事しか、あまり役に立たないから。戦闘に関しては、自信もないし」


 確かに鈴森や北上さんやトモマサに比べたら、成田さんの戦闘力は低いだろう。でも別の分野では、とんでもなく強い人だと思った。この拠点だって、この人がほとんど作っていると言っても過言ではないと思う。成田さんと松倉君が率先して、やってくれている。


「今日からもお風呂は使えるから、まずは女の子達に使ってもらえばいいんじゃないかな」


 成田さんの言葉に頷く。俺達男は、ドラム缶風呂でも十分だけど、女子はきっと喜んでくれる。


「俺もそう思う。それじゃ、未玖達にも今晩から風呂に入れるぞって伝えておかないと。きっと喜ぶと思う」

「喜んでくれたなら、僕も松倉君も頑張った甲斐があるってものだよ」

「そう言えば、成田さん。お願いがあるんだけど」

「ほう、お願いって何かな?」

「拠点のバリケード。今のうちにもっと強化できないかなって思って」

「なるほど。有刺鉄線を張った上に、板とか丸太とか使用して壁を作っているけど、それだけじゃ心配って訳だ」

「例えば南エリアとか、まだ有刺鉄線だけ貼って拠点としている場所がある。それに成田さんも知っていると思うけど……」


 今いる草原エリア。北側の方、拠点の外に見える向こうの丘を指して言った。


「大型のウルフが出没している。それに佐竹さん達の命を奪った、大型のブルボア。大谷君達が目撃したっていう、トロル。そういうのがもしもこの拠点を襲撃してきたら、今のバリケードじゃ簡単に破壊されてしまうと思う」

「うーーん、確かにそうだね。今のままでは、頼りないか。なら、もっとバリケードを強化してみよう」

「頼む」

「それじゃ、早速バリケードを見てこようかな。普段は僕と松倉君で作業は行っているけど、場合によっては誰かに手を借りる事になるかもしれない。いいかな?」

「もちろん、いいに決まっている。俺も手があいていたら手伝うし、他の誰に声をかけてもらってもいい。あまり思いものを運ぶとかは無理だろうけど、メリー達ストレイシープも頼めば作業を手伝ってくれると思うよ」

「なるほど、確かにストレイシープは数がいるから、手伝ってもらえればかなり助かるかもしれないな。解った、それじゃ行ってくるよ。そういうのは、早い方がいいからね」


 成田さんと、松倉君。拠点の守りに関する事を頼むと、彼等は早速その作業にとりかかってくれた。


 俺は1人になり、辺りをまた見回した。羊の住処エリアに戻ろうとしている所なのか、集団で西の方へ歩いて行くストレイシープの姿が見えた。二足歩行で集団になって、トコトコと歩く羊の姿はとても可愛いかった。


 さてと、風呂に入る事ができるって話。まずは、未玖やアイちゃんにしてやるべきかな。きっと喜ぶに違いない。


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