Phase.591 『仲間達』
――――『異世界』。草原エリアにいる仲間達のスマホが、一斉にけたたましく鳴り響いた。それはこの世界ともとの世界が暫く行き来する事が、今この時より不可能になったと運営が知らせてきたメールの音だった。世界は完全に隔たれた。
腕時計を確認すると、時間は10時を回っていた。今この時から、この世界ともとの世界の繋がりは断たれたのだ。
草原エリアに集まってくれた面々。同じクランのメンバーであり、大切な仲間。皆を目の前にして俺は、雄叫びにも似た大きな声で伝えた。
「ついに来たるべき日がやってきた!! 今日この時より、俺達はもとの世界へ戻る事はできない。暫くは、この世界に留まる事になる。またその間、この世界で何が起こるかも解らない。この先、困難や想像もつかない事が起こるかもしれない。でも俺達は共に、力を合わせて乗り切って行こう!!」
翔太、北上さん、大井さん、未玖の拍手から始まり、全員が俺に向けて拍手を贈ってくれた。不安は確かにあるが、ここまで来たらやるしかない。こんな俺に、リーダーとしてここまで期待を寄せてくれるのなら、俺もなんとか期待に応えられるようにしたい。俺は続けた。
「とりあえず、期間は三週間から一ヶ月らしいが、実際は解らない。もっと長くなるかもしれない。でも俺達にはこんなに頼りになる仲間達がいるし、これほど広大な拠点もある。また皆知っていると思うけど、北の廃村を拠点としているクランや、小雪姫というリーダーのいる拠点リバーサイドといった他のクランとも、協力し合っていく事になっている。見てくれ! そちらに集まっている人達は俺の働いている会社の上司で、豊橋専務だ」
皆の注目が豊橋専務と、専務の連れて来た仲間に向いた。
「僕はクラン『フラグオブホープ』のリーダー、豊橋昴といいます。リアル……じゃなくてもとの世界では、ここのクランのリーダー、椎名君の上司にあたりますが――この世界では、同じくクランリーダーであり同盟関係になります。この来たるべき日の期間中は、仲間と共にこの拠点でお世話になりますので、どうぞよろしくお願いします」
専務は、既にこの拠点の南エリアで自分達の住処を作っていた。皆もその事を知っている。専務に拍手が行われると、今度はここに集まってくれている大石さんを指して皆に紹介した。
「続いて、クラン『アイアンヘルム』のリーダー、大石さんを紹介したい。彼も豊橋専務と同じく、この期間中はこの俺達の拠点に滞在して、一緒に協力し合っていくのでよろしく頼む」
「大石です。俺の所は、5人で豊橋さんの所や椎名さんの所のように大所帯じゃない。でもこの5人は、精鋭だと俺は思っている。きっと皆の期待にも応えられると思うので、どうか仲良くしてやってくれ」
大石さんとその仲間にも拍手が贈られた。
「それじゃ、これから一緒に協力し合っていく仲間の顔合わせが終わった所で、最後に言っておきたい!! これから暫くこの世界で過ごす中で、拠点の強化や探索……言い換えれば冒険ともいうが、色々と行っていくことがある。でもとりあえず今日明日は、皆もそのための準備とか色々あると思うので、各々で思い思いに過ごしてもらいたい。それと、協力し合うって事はもう何度も言ったが、くれぐれも勝手に拠点の外には出ない事。出る場合は、必ず誰かに言ってからにしてくれ。それじゃ、今日はこれで解散……」
「ちょーーーっと待ってくれええええええいいいい!!」
皆の顔も確認した。これで今日は一旦お開きにしようと思った所で、まさかの叫び声。目を向けると、そこには翔太がいた。皆の視線が翔太に集まる。
あいつ、いったい何をやらかすつもりだ? そう思って北上さんに視線を向けると、彼女は両手を挙げて肩をすくめた。どうやら、彼女も何も聞いてないみたいだ。
「えーーーっと、俺達のリーダー、ユキーからの挨拶というかお知らせというか、そういうのが終わった所で、実は俺からも皆にお知らせがあります」
「なんだなんだ? さっさと言えよ、この野郎!」
やけにガラの悪い奴がいる。そう思ったら、トモマサだった。なんだよ、ヒヤリとしたけどなんて事なかったな。って、それはそうと、見ない顔の男が2人、トモマサの後ろにいた。どちらもトモマサに匹敵するガタイの良さをしている。まさか、もしかして――
「えーーっと、今日はアレだ。待ちに待ったというか、ついに来ちまった来たるべき日、記念日だ!!」
「なんだそりゃ、来るべき日記念て! ふざけてんのか、てめー!」
また別の野次。目を向けると鈴森だった。おいおい、全部身内かよ。しかもなぜか翔太は、トモマサと鈴森のガヤを受けて爛々としている。
「まあそんな訳で、さっきユキーも言っていたようにこれから俺達は皆、仲良くやっていかなければならん訳です。なので、今晩……っちゅーか、夕方16時からパブリックエリアの方でパーティーを行いたいと思います!!」
これには、突っ込まざるを得なかった。
「お、おい翔太!! パーティーは兎も角、なんでパブリックエリアなんだよ」
「え? そんなの決まってんだろ? パブリックエリアなら、他の転移者もいて一緒にパーティーに交れんじゃん。目的は気合入れる為と、団結を強める為のものだからよ。その方が楽し……いいんじゃないかって思ってな。あははは」
おいおい。
「まあ、そんな訳で皆、今日の16時にパブリックエリアにてパーティーやるから集まってくれよな!! それと、当たり前なんだけどパーティーする為には準備が必要になります。手伝っちゃおーかなーなんて思ってくれている人は、14時くらいからパブリックエリアの方へお越しください。どしどしきてくださいね、待ってるからー」
「いかねーよ、こきつかわれるもん」
「さっきからうるさーーい!! トモマサ、お前は来なさい!!」
「嫌だって!!」
翔太とトモマサの言い合いを見て、周囲から笑い声。
こいつらと絡んでいると、今日ついにこの日がやってきてしまったと不安になっていた自分がとても馬鹿らしく思えた。そうだ、間違えない。こいつらとなら、きっと皆無事に異世界ライフを楽しめるはずだ。
俺はそう思って大空を見上げた。気持ちのいい風が草原エリアに拭く。俺の遥か頭上は、気持ちのいいほどの快晴だった。




