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283話 シグマVS聖騎士エギル




 半壊した戦艦の上で、二人の男が睨みあっていた。


 一人は灰色のコートに身を包んだガタイのいい壮年の男。

 もう一人は赤黒い長髪を靡かせた人間離れした美貌を持つ青年。


 長髪の青年の名は、神聖ゴルディクス帝国十聖者の一人、聖騎士エギル。

 灰色のコートの男の名は、異世界より迷いこんだ兵士シグマ。


『その姿、機械と生命体を結合させたサイボーグか。となると、この世界の者ではないな。貴様も異邦人か?』


 エギルの問いにシグマが答える。


「そうだ。惑星カルナス、第14機動歩兵部隊隊長シグマ・ウォーリナス。尤も、貴様は覚えていないようだがな」


 シグマの言葉にエギルは眉一つ動かさずに即答する。


『悪いが、記録に無い。どうも、初期化される以前の私のようだ。

 が、その事象は何の意味も持たないな』


「そうだ。いくら貴様の記憶がなかろうと、貴様の姿かたちをしたものが、俺の部下たちを殺したのは間違いない」


 二人の会話に一切の感情は感じられない。

 まるで、指定された台本を音読しているだけのようにも感じられるが、二人を取り巻く空気は瞬く間に変わっていった。

 何者も寄せ付けない張り詰めた空気。

 それは、次のエギルの言葉により決壊した。


『ふむ。ならば……』


 その言葉をきっかけに、二人は同時に動いた。


 シグマは右腕に取り付けられた超高熱を発する刃……ヒートナイフを振り下ろし、対するエギルは、同じく超高熱を発する武器……ブレイズセイバーを抜き放って受け止める。

 ブレイズセイバーは性能こそレイジの使うブレイズブレードと一緒だが、形状は西洋剣を模したものになっていた。


 ジリジリと力合わせでもするかのように鍔迫り合いをしたのち、互いに剣を放して今度は目にもとまらぬスピードで剣の打ち合いを始めた。


 互いに言葉はいらない。

 ただ、目の前に存在するのは倒すべき敵であるという事なのだ。


 だが、エギルは内心で舌打ちしていた。

 自身の持つ最強武装は、あらゆるものを両断出来るレーザーを収束させた剣……レーザーソードだ。

 しかし、この武装は燃費があまりよくない。目の前の男を倒したとして、エギルの目的はそれで終わりではない。だからこそレーザーソードは温存しようとしたのだが、それが裏目に出た。


 打ち合いをして、シグマの力が自分と同等レベルだというのは理解できた。

 つまり、強い。

 今下手に打ち合いを続ける以外の行動を起こそうとすれば、即座に自分の首は落とされてしまうだろう。


 エギルの肉体は、火の魔晶を埋め込まれたアンドロイドボディ。アルカやルークのように魔法によって肉体を維持しているわけではない。つまり、首を落とされれば死にはしないまでも、即座に修復は出来ない。


 ほんの一秒でも時間があれば、コートの内側にしまってあるトリプルブラストを取り出し、目の前の敵を吹き飛ばせる。


 そんなもどかしさを感じながら打ち合いを続けていた。



 対するシグマも同様に、二の手を打ち出せない今の状況に焦らされていた。

 エギルがこちらを舐めて同質の剣で応対した事は、シグマにとって幸運であった。

 もし、もっと強力な武器でシグマのヒートナイフに対抗してきたとしたら、シグマは右腕を失っていたかもしれない。

 まぁもしそうなっていたら二の手として用意していた超振動の左手がエギルに命中していただろう。


 とにかく、今は互いに打てる手はない。


 二人は、打ち合いを続けながら時が来るのを待った。


 そうして数秒後……互いのブレードが砕け散った。


 シグマは即座に超振動の掌を浴びせるべく、左腕を振り下ろす。


 対するエギルは懐からトリプルブラストを取り出そうとして応戦しようとするも、相手の方が早いと判断して即座に後ろへ飛ぶ。


 シグマが拳を振り下ろすと、戦艦の甲板に巨大な穴が開く。


 空中でエギルはトリプルブラストを取り出し、シグマに向けて炎の弾丸を放つ。


 しかしその全てはシグマの超加速によって回避されたのだった。そのまま追撃しようとするも、超振動によって甲板は大きく破壊され、うかつに走ろうものならそのまま床が抜けかねない。


 距離を保った状態で、二人はまた睨み合う形となった。


『加速能力か。便利な力を持っている』


「そうでもない。どんな力があろうと負けるときは負ける」


 シグマの記憶(メモリー)に蘇るのは、僅か十数年を生き、戦いを始めて数か月の少年の顔だった。

 会話をしながらもセンサーによって床の強度が脆い場所を検知している。超加速は使えるものの、残念ながらそれは移動するためのものではない。


『ほう。勝てるものが居たか。相当な強者だな』


「ああ、俺もそう思う」


 もし、今の会話をレイジが聞いたとしたら、ぶんぶんと首を横に振るだろう。

 あれは、完全に対策を立てたから、なんとか勝てたのだ。もし初見時にどちらかが倒れるまで戦っていたとしたら、負けていたのは自分の方だっただろう。

 それほど、シグマの能力は初見殺しに特化しているのだ。


 だからといってこの超加速も無敵ではない。

 それはエギルにも即座に看破できた。


『だが、その加速能力……極僅かな時間しか発動できないと見る。そして使用している間は攻撃できない。……違うか?』


「さぁ、どうだろうな」


 当たりだ。

 この力を使っている間は攻撃が出来ない。


 加速中の行動は、サイボーグであるシグマの四肢に負担が大きい。攻撃出来ないのではなく、回避行動する事が限界という事なのだ。

 尤も、サイボーグでなければ、超加速に肉体そのものが耐えられない。


『とは言え、その力はなかなか厄介。こちらも、いい加減本気を出させてもらおう』


 エギルはニヤリと笑みを浮かべると、上着として着込んでいた十聖者の証であるコートを脱ぎ捨てた。

 その下にあるのは、かつてレイジが着込んでいたオリジナルのアーマードスーツ。

 そして手足に取り付けられているのは、見知らぬ武装であった。


(どう仕掛けてくる?)


 エギルの一挙手一投足を見逃さぬように集中していたシグマであったが、意外な形で集中は途切れた。


「な!?」


 突然背後にセンサーが反応する。思わず振り返ると、シグマは己の視覚センサーを疑った。


 背後に立っていたのは、エギルだった。


(移動したわけではない。前と後ろ、間違いなく同時に存在している。ならば、ホログラムか!?)


 シグマは立体映像を疑った。レイジたちも光学迷彩で肉体を隠したり、別人に成りすます等の事は行っていた。この男に出来ても不思議はない。

 とは思ったものの、彼のセンサーは目の前のエギルの質量を感知している。

 そして、それは目の前にいるエギルも同様。


 つまり、間違いなく二人同時に存在しているのだ。


 戸惑っていると、背後のエギルがこちらに向かって剣を振り下ろしてきた。

 タイミング的にも避けるなら超加速を使うしかない。


 それが悪手であった。


 背後のエギルの攻撃を避けた直後、正面に位置していたエギルが剣を振り下ろしていたのだ。


(くそ!  超加速!!)


 また超加速を発動し、その振り下ろされた刃を躱そうとするのだが、加速空間の中でシグマはまたしても視覚センサーを疑ってしまった。


 自分の左右に、更にエギルが出現していたのだ。

 これでは左右のどちらにも逃げられない。


「チィッ!」


 せめてもの防御として両腕で頭部をガードしようとするが、左右のエギルの振り下ろした剣はシグマの身体に命中した途端、まるで空気に溶けるように消えていった。


(―――まさか、質量のあるホログラム? いや、分身だと言うのか!?)


 単なるホログラムであるなら質量……重さは存在しない。だからセンサーに反応しない。

 だが、これは一瞬ではあるが重さがあった。

 この分身に攻撃する機能は無いようだが、視覚もセンサーも含めて誤認させるには十分すぎる手だろう。


 実際、この分身の中に本体が紛れていたとしても、攻撃を受けた後でしか気づけない。


 だからこそ、シグマは目前に迫ったエギル本体の攻撃を受けざるを得なかった。


 咄嗟にガードしたので首こそ飛ばなかったが、その代わりにシグマの両の腕が宙に飛んだ。


「チッ」


 シグマは即座に正面のエギルの腹部を蹴り飛ばし、距離をとった。


『戦力低下だな。どうする、まだ継続するか?』


 淡々としたエギルの声が響く。


 シグマは即座に周囲を見渡した。

 失ったのは両腕。

 切断面は奇麗に斬られているので、修理は可能だろう。だがこの戦闘中では不可能だ。

 超加速はまだ可能なので、戦闘の継続自体は可能だろう。

 だが、勝率は限りなく低い。

 無論シグマの脚部にも武器は仕込まれているが、それだけでエギルと渡り合えるとは思えない。


 このまま戦えば、確実に負ける。


 ……このまま戦えばの話だが。


「仕方ない」


 願わくば、このまま超振動と超加速のみで決着を付けたかったが、肝心の腕が無いのだから仕方ない。



 ならば、腕を()()()()()()


 ガシャンと音を立てて、シグマの腕……二の腕から先部分が床へと落ちた。


 同時に羽織っていた灰色のコートもその場に落ちる。






 その行動にエギルは眉をひそめた。


 そのコートの重さからして、まだまだ武器が仕込まれている筈なのだが、それを使わないと言う事か?


 だが、両腕なしでどうやって戦う?

 この男の場合、自分たちのような空間圧縮の技術は持ち合わせていない。つまり、この場において代わりの腕を持ち運ぶ術は無い筈だ。


 そうしてシグマの身体に目を向けると、その腰部に取り付けられているものを見て、エギルの目はこの戦いで初めて大きく見開かれる。


 そこには、エギルのよく知るものがあった。


 アイテムボックス。

 紫のパーソナルカラーで彩られたそれは、元々はヴィオの持ち物であったのだが、それはエギルの知らない情報であった。


 シグマは器用に足を使ってアイテムボックスのふたを開くと、そこからシグマが持ち込んでいたアイテムが飛び出した。





 飛び出したアイテム……新たに用意された腕は、まるで吸い寄せられるようにシグマの二の腕の先に取り付けられた。


 新たに取り付けられた腕は特に特徴のない鋼で作られた腕であった。

 問題はその手の先にある武器だ。


 銃。

 形状からして銃なのだろうが、その形状は変わっていた。

 まず、銃身と呼ばれるものがグリップの上下に存在している。まるでカタカナのコの形のようだ。引き金はどうなっているのかと言えば、それもグリップの上下に存在している。上の引き金はそのまま人差し指で、下の引き金は小指で引くと言う、サイボーグにしか扱えないような構造だ。

 更に下の銃身部にはナイフのようなものが取り付けられていて、接近戦にも対応可能。


 それが二挺。

 二挺拳銃を構え、シグマはこの戦いで初めて不敵な笑みを浮かべた。


「はるか昔に編み出した戦闘技法だが、見せてやるよ。……G・S(ガン・ストライク)・C(・コンバット)

 



 またしても主役以外の戦闘なので、早いところ本筋に進んでくれと思う方が多いと思いますが、もうちょっとお付き合いくださいませ。

 エギルの戦い方どうしようかなーと思っていた所、ふとガ〇ダムのMS大全集なるものを引っ張り出し「あ、これにしよう」と決めました。質量のある残像でピンとくる人がいれば、ニヤリとしてもらえればと。

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