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282話 ジェミニ・アスラモード

 大変間が開いて申し訳ありません。

 再開します!!





『おいおい、なんだぁあの手足の細っこいロボットは!?』


 バリア・フィールドによって身柄を拘束されたガナードが、びっくりした声を上げる。

 それに答えるのは、その隣に聳え立つ巨大な亀ともアルマジロとも形容できるゴゥレム……《アリエス》を操作する日輪・ナイアだ。


『あれは《ジェミニ》。元々、一つの移動用ビークルが二つに分離できるっていうコンセプトで作られたゴゥレムらしいのですが、このコンセプトがお二人に丁度良かったので、改めて専用ゴゥレムとして改良されたのです』


『なぬ? ただのサポートAIに、あんな戦力を専用として与えたっていうのか!?』


『それを言ったら、私のこの《アリエス》も一応専用機ですよ。尤も、私には戦闘プログラムはインストールされていないので、この《アリエス》はもっぱら移動用メディカルルームですが』


 ついでに言うと、防御のための技法はプログラムされているので、バリアで攻撃を防いだり逸らしたりといった方法も可能です。


『なんだそれは。もしや、お前の艦長は人間不信か?』


『………』


 反論しようとしたところ、否定するだけの材料が日輪の手元に無かった。

 アルドラゴクルーの中で、生身の肉体を持っているのは艦長であるレイジ、ゲイル、ヴィオ……そしてプラムの四人だけだったりする。

 対してアンドロイドはその倍以上。

 確かに、人間不信と言われても仕方ないと言えた。


『いえ、むしろ……』


 レイジは人間が嫌いと言う訳ではない。

 艦の外では、友人もそれなりにいて、彼を慕うものも多いと聞く。


『AIを人間と同じように扱う……それが長所であり、短所でもありますね』


『はあ? なんだそりゃあ』

≪……?≫


 通信が遮断されているため会話の出来ないオペラも首を傾げる。


『とにかく、彼らは我々AIと人間のハーフのような存在です。彼らの活躍を見届けましょう』




『よっしゃ! そんじゃ行くとしますか!』


 《ジェミニ》に搭乗した吹雪が、意気揚々と飛び出そうとするが、それを烈火が制止した。


『待て! 思考をリンクさせるのを忘れるな。さっきはそれで醜態をさらしたんだ』


『わ、分かってる。普段は使ってないから、つい忘れるんだよな……』


 思考をリンク……共有させて、文字通り二つの肉体を一心同体とするのだ。

 これにより、抜群のコンビネーションを発揮できる。

 だが、思考をリンクさせるというのは、感情や記憶までも共有すると言う事であり、普通の人間であれば拒否感が出るものだろう。

 二人はAIであるため、本来ならそこまでの拒否感は生まれないのだが、元になった人格が生身の人間であるため、潜在的な拒否感を抱いてしまうのだった。


 ともあれ、この状況下では好き嫌いは言っていられない。

 二人は思考をリンクさせ、目前に迫るマリオネット魔獣たちを睨みつける。


 先行して飛び出してきたのは、一番小型のラプトルタイプのようだ。

 レイジの見た映画での知識によると、知能の高いスピードに優れた狩人との事だ。

 この場合の知能については不明だが、スピードに優れているのは間違いない。


『では愚弟よ』『ああ、行くぜ姉貴!』


 二人は互いの両の拳をゴツンとぶつけ合った。


 吹雪は《ジェミニ》にの両腕部に取り付けられたブレードを煌かせ、迫りくるラプトルの群れへと駆け出す。

 脚部に取り付けられたホイールが回転し、最接近したラプトルに向けて刃を振り下ろした。

 だがその斬撃はラプトルが頭上に飛び上がったことで回避される。

 飛び上がったラプトルはそのまま吹雪に襲い掛かろうとするのだが、その顎は《ジェミニ》の装甲に届くことはせず、空中で砕け散った。


 後方に控えていた烈火が両腕部に取り付けられた銃によって狙撃されたのだ。

 更に烈火は狙撃したラプトルの左右に位置する標的に向けて銃弾を撃ち込むのだが、その銃撃をラプトルたちは飛び退いて避けようとする。

 そんな動きに隙の出来たラプトルたちを、今度は吹雪がブレードによって両断していく。


 更に背後から迫るラプトルを烈火が銃撃して……と、このようにして、互いに攻撃を補助しあいながら二人は敵の数を減らしていった。


 しかし、やはり数が多い。

 やがて大きく迂回して後方で支援をしている、烈火の《ジェミニ》に向けて襲い掛かるラプトルの群れが現れた。

 銃撃に特化した烈火の《ジェミニ》では接近戦は不利かと思われたが……


『なめるな!』


 烈火の搭乗する《ジェミニ》はボディを支点としてぐるりと180度回転し、これまで腕だったものが足となり、それまで足だったものが腕となった。

 つまり、脚部に取り付けられていたブレードが両腕の武装となったのである。


 両のブレードを使用して、迫りくるラプトルを切り裂いていく烈火。

 その様子を見て、吹雪も《ジェミニ》の手足を90度回転させる。今度は片方の腕がブレードとなり、もう片方の腕が銃となった。

 銃で牽制しつつ、襲い掛かるラプトルを斬り払っていく。

 

 そうやって数は減っていったものの、次第に二人は取り囲まれていく。



『ち……やはり、そもそもの数が多い』

『なぁんだ姉貴。もうへばったのかよ!?』


 と強がりを見せる吹雪であったが、実際問題として数の差は強大であった。

 正直な話、切り札と言うか状況を打開する手段は無いわけではないのだが、手札を切るにはあまりにも早い。

 未だ、大型のトリケラトプスタイプやティラノサウルスタイプは動かずに居るのだから、先を見越してまだ温存するべきだと二人は判断した。


 ならばどうすればいいのか……。

 このまま時間化をかけるのを覚悟の上で地道に倒し続けるか、それとも何か奇策に打って出るべきか……。



『『!!』』


 

 二人の人工頭脳に、ピピピとアラートが鳴り響く。

 この反応は、敵性パターンではない。

 敵ではないが、何か強大な力を持った何かが、こちらに接近している。


 という事は―――


 途端、雷鳴が鳴り響き、雷光が雨のように降り注いだ。

 雷の雨は、まるで槍のごとく二人を取り囲むラプトルを打ち砕いた。

 

 続いて氷の矢……レーザーの如き光の筋が降り注ぎ、周囲を取り囲んでいたラプトルの群れのほとんどを破壊したのだった。


『これほどの力……しかも……』

『ああ、集落の方からだ。という事は、この力の主とやらは……』



「おう、助っ人連れてきたぜー」


 そういって現れたのは、片腕のない姿が痛々しいラザム。

 その背後には、八体の巨大なドラゴンが悠然とその姿を現していた。


「感謝しろよ。オレが先に話を付けていなかったら、ここでこいつらと戦う羽目になってたぜ」


 とラザムは言うが、二人の視線はその頭上に舞う八体のドラゴンたちに向けられていた。


『お、おお……』


 圧倒的な威圧感。

 赤を除いた色とりどりの鱗を持つ八体のドラゴン。

 これが、この竜王国を実質的に支配する存在。


『……これが九頭竜か』


「まぁ炎竜卿は居ませんがね。お二人……いや、三人ですか、この場を守ってくれていたようで御礼申し上げます」


 八竜の中、真っ白い鱗を持つドラゴンが烈火吹雪、そして日輪に向かって言う。

 恐らくは、彼が穏健派の代表格……白竜卿ヴァイレルの真の姿なのだろう。


「話は聞きました。炎竜卿の落ち度もありますが、こうやって実際に攻め込まれたとあっては、静観している訳にはいきません。ここからは、我々も参戦するとしましょう」


 その言葉に、烈火と吹雪は同時に首を振った。


『いや、たった今数を減らしてもらったからな。残りは、私たちだけで十分だ』

『アンタらは、ゲートの向こう側でうちの大将の援護を頼むぜ』


「ふむ、我々が援護の立場ですか。

 いいでしょう。では、この場は任せ、我々は外の敵を迎え撃つとしましょう」


「良いのか、白竜卿よ!」


「確かに炎竜卿が邪心を抱いていたのは間違いないようだが、人間の言う事を信じすぎるのは……」


 ヴァイレルの両隣に浮かぶ金色と藍色のドラゴンが申告するが、白い竜は首を横に振る。


「これはファティマ様のご意思でもあります。今は、この人間たちを信じるほかありません」


「ぐぬ……分かった」


 何体かのドラゴンが顔を歪めるのを確認した。当然ではあるが、いくら竜神ファティマの言葉であっても思う所があるのだろう。


「では人間たちよ、この場は貴方たちに任せました」


 ヴァイレルはそう言うと、他のドラゴンたちを引き連れて、ゲートの向こう側へと消えていった。


 チラリと背後にある集落部の空を見れば、100体以上のドラゴンたちがゲートの向こうへと飛び立つ八竜を見守っていた。

 後に聞いたラザムの話によれば、彼らは竜王国の守備を任された一般兵クラスのドラゴンだという事だ。


 数は少ないとは言え、ドラゴンだ。竜王国の事は最早心配することも無いだろう。

 ならば、自分たちに出来る事は、この場に存在している恐竜人形どもをせん滅する事のみ。



『まぁ、残りがこれだけになったのなら……』

『あぁ、奥の手も使えるってもんだぜ!』


 二人は互いの《ジェミニ》の拳をゴツンとぶつけ合うと、同時に言葉を発した。


『『マシン・ドッキング!!』』


 その言葉と共に、二人は《ジェミニ》を高く跳びあがらせた。


 飛び上がった二体の《ジェミニ》は、パカリとボディが縦に割れる。いや、まるで扉が開いたように縦に開いたのだ。

 その際に細部が少し形を変え、まるで腕が上下に三本ある人型の半身のような姿となった。


 そんな半身同士が空中で接近すると、一つの人型のボディとなる。

 合体した途端、今まで収納されていた頭部が出現し、まるで意思を宿しているかのように両目に該当する部位が光を放つ。


『『《ジェミニ・アスラモードッ》!!』


 これまで寸胴に手足が生えただけという、ややみすぼらしいボディだった《ジェミニ》であるが、二体が合体する事で見た目的にもかなりスタイリッシュなものとなった。

 何より特徴的なのが、六本に増えた腕だろう。

 

 二体に分かれていた時と同じ腕なので、ブレードが取り付けられた腕が二本、足が二本。

 残りの四本の腕は銃が取り付けられていた。


『『さあ、踊ろうぜ』』


 再び《ジェミニ》の両眼部が光る。

 よく見れば、その頭部は頭頂部から顎にかけて左右に色分けされており、右サイドは烈火を思わせるマゼンタ色、左サイドは吹雪を思わせるシアン色に彩られていた。

 これは言ってしまえば遊び心のようなものだ。この状態になった今、二人は《ジェミニ》を操縦しているわけではない。完全に意識が接続され、《ジェミニ》を自分たちの肉体としているのだ。

 つまり、この時だけは烈火でも吹雪でもない……《ジェミニ》という存在になると言う事だ。


 まず、最初に突進してきたラプトルを右の剣でもって、簡単に両断する。

 《ジェミニ》二体分の出力機(ジェネレーター)を有するのだ。ブレードの切れ味も向上している。

 更に左右から飛び出してきたラプトルは四本の銃型腕によって蜂の巣にされた。

 この状態になれば、360度死角は存在しない。


 そうしてラプトルの群れを撃破し続けていると、いよいよ残りは大型タイプ……四足歩行で巨大な角を持つトリケラトプスタイプ、巨大な二本の足と顎と牙を備えた最強の肉食恐竜……ティラノサウルスタイプのみとなった。


『愚弟よ。先生の脳内映画ライブラリーにあるアレは観たか?』

『思考が繋がってんだから聞かなくても分かるだろ。あれだろ、竜馬(りゅうば)のでかいやつが暴れるやつ』

『うむ。なかなか面白かったな。というか、力を持たない人間にとって、巨大な肉食生物というのがいかに危険なのか理解出来た』


 それはレイジが幼少期に観て、今もたまに見返す名作映画……恐竜が現代に蘇って暴れるやつの第一作目だ。

 子供の頃はとにかく内容よりも恐竜の恐ろしさばかりが目に行ってしまって、見返す事は出来なかったのだが、成長して知識も増えてくるとそ面白さも理解できるというものだ。

 ちなみに、この世界で言えば馬の代わりとなる竜馬(ラプトルタイプの小型恐竜)は存在していても、ティラノサウルスタイプの大型恐竜は存在していない。

 なんでかと言えば、さしものティラノサウルスであっても、大型の魔獣には勝てなかったのである。地球で覇者であったとしても、この世界ではより強い獣は存在する。

 そもそもドラゴンも普通に存在するのだから、当たり前と言えば当たり前だ。


 話は逸れたが、地球人が遭遇して恐怖するかもしれないティラノサウルスであっても、中身はエヴォレリア人の人格、外側はアルドラゴ製のアンドロイドである二人からすれば、ちょっとでかい魔獣と変わらないのである。


 ほとんどのラプトルが駆除された。という事は、いよいよ残りの二体の大型が動き出す。


 まずは、トリケラトプスがこちらに向かって突進を開始する。

 ドドド……と地響きをかき鳴らして迫ってくる。地球の知識があれば、巨大なダンプカーがこちらに向かって一直線に来るようなものだと表現しただろう。


 だが、二人は全く脅威を感じない。


 実際、《ジェミニ》の銃撃程度ではあの巨体に風穴を開ける事は難しいだろう。


 ならばどうするか……


 二人は、《ジェミニ・アスラモード》に取り付けられている四本の銃型腕を胸の前で重ね合わせた。

 すると、その四つの腕はガチャガチャと形を変え、一本の巨大な砲身となる。


 そして、二本の剣型の腕を地面に突き刺して身体(ボディ)を固定し、照準を合わせる。

 狙いは、こちらに向かって走ってくるトリケラトプスの中心。


『『ジェミニ・クワトロ・ブラストッ!!』』


 砲身から極太のレーザーが発射される。

 放たれた光の柱は、トリケラトプスの頭部に命中し、そのまま身体を一直線に貫通。

 身体を維持できなくなったトリケラトプスは、そのままボロボロと土塊(つちくれ)となって崩れ落ちた。


『『ふぃぃー』』


 レーザーを放った砲口は超高熱で赤く染まっており、とても二発目を打てる状態ではない。

 これは、実際一度切りの大技だ。

 二人は銃型腕の合体を解き、腕に取り付けられていた銃型ユニットそのものを切り離す。すると、簡単なマジックアームのみのやや貧弱な腕が残るのみだ。


 こうして一度きりの大技を使ってしまったが、敵はまだ一体存在する。


 ティラノサウルスは、怒り狂ったようにその巨大な(あぎと)を広げて、こちらに突進してきたのだった。

 その巨大な顎で噛まれたとしたら、いくら強靭な《ジェミニ》のボディであったとしても無事では済むまい。

 とは言え、二人も決して無策で一度切りの大技を使ったわけではない。


『『別に一度切りの大技が一つだけとは誰も言ってないからな』』


 まるで誰かに説明するように二人は不敵に言い放ち、その場からジャンプして、《ジェミニ・アスラモード》の体勢を変えた。

 くるりと身体を前方宙返りさせると、これまでの手足が入れ替わる。つまり、今まで両脚部だったものが腕となり、腕に位置していたものが両脚となる。

 これで、四本の剣型腕を持つ姿となった。


 また、二人は四本の剣型腕を胸の前で重ね合わせる。四つの剣はガチャガチャと形を変え、一本の巨大な剣となる。


『『ジェミニ・クワトロ・スラッシュッ!!』』


 巨大剣の刀身から眩い光が発せられ、一瞬だけ更に巨大な光の剣となる。

 その光の剣を振り払い、二人は目前に迫っていたティラノサウルスの頭部を両断して見せた。

 頭部と身体、二つに分かれたティラノは、制御を失ってその場に倒れ伏し、振り払われた剣も勢い余って大地そのものを大きく抉り斬ってしまった。


 それと同時に《ジェミニ》の持つ巨大剣は元の四つの剣へと戻り、ボンッと音を立てて煙と共にユニットごと地面に落ちる。

 いよいよ、一度切りの大技を二つとも使い切ってしまった。


 だが、頭部と身体……二つに分かれたティラノサウルスも他の恐竜人形たちと同様に、肉体を維持できなくなってボロボロと土塊に変わっていった。


 それを確認すると、烈火吹雪の二人は《ジェミニ》を元の二つの姿へと戻し、コックピットから姿を現した。

 互いにニカッと笑みを浮かべると、近づいて大きく手を叩きあう。


『『よっしゃぁーッ!!』』


 烈火&吹雪VS拳聖ガナード&拳聖オペラ……完全決着!!




 こんなに休んでいたのは、ちょっとメンタルやられていたのと、前回がよりにもよって戦闘の途中で終わっていたのが原因です。

 確か、前にも長期間止まった時は烈火吹雪の戦闘途中だったんだよな。……この二人の戦闘はそんな鬼門なのか。

 章の終わりまであと少し、なんとかノンストップで行けるように頑張ります。

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