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美少女に縦横無尽に振り回されるなんてあるわけない(後編)

 俺が通っているここ市立西ノ島高校は偏差値五十五のピンキリの学校である。要するに頭のいい奴もいればそうでない奴もいる。そんな格差社会が起きないほうがありえないくらいの学校でもあるのだ。

 今俺が出てきた二年七組の教室はコの字でできた校舎の三階にあり、ちょうどコの一画目の部分にあたる。

 二人は一階までそのまま玄関まででてきしまった。別館である体育館にでも向かうというのだろうか。いやあの二人が体育館で一緒に運動しあって、キャッキャウフフするなんて考えられない。桜井とか五十メートル走っただけでバテそうなくらい肌白いし。判定基準おかしいだろ。と一人ツッコミ。

 ちなみに俺も体育苦手です。

 もうなんなのあの自分がやってる部活の種目が授業内容だったときのあのマジっぷり。

 俺とか毎回のように守備ポジションの常連だぜ?しかも運悪く俺に玉が回ってきたときのあの変な緊張感と、DQNの威圧ビーム。

 この前のサッカーなんてあわててたからボールだけしか見ていなかったし「ヘイ!パス!」なんていわれたから調子乗って蹴っていったら相手チームの選手だったしさ。しかもなんで自分の見方にパスするときだけ明後日の方向に飛んでいくのにそういうときだけきれいにパス通っちゃうかな。もうね汗がブワって。あの試合の後いつボコられるか怖かったです。

 そのまま後をつけると体育館ではなくその隣の体育館倉庫にたどりついた。何するつも

 りなんだ?

 二人が中にはいっていこうとするが、

 桜井がドアノブに手をかけたところで


「さっきからなにあたしたちをつけてきてんの?あんた」

 びくぅ!

 振り返って逃げようとするが、腕をがっちりつかまれてしまった。


「あんた、ゆこか美紅に用があるの?」


「俺は、俺はただの通りすがりだよ、文句あっか」


 ちょ、マジ怖い同学年相手なのにチビりそう。自分でもいきがってるのわかるよ。


「通りすがりなのに突っかかってくるのね、言い訳へたくそすぎるわよ、あんた何年生きてんの」


「そんな言い方されたら誰だって突っかかりたくなるだろうがよ」


 やべえ、もう会話成立してねえ!


「あんたはその『誰だって』という多くの人間が当てはまるような人たちの仲間になるのね」


 桜井さん、頭が良過ぎて何をおっしゃてるのかわかりません。


「……すまん追っかけたのは本当だ」


 その場しのぎの平謝りでなんとかごまかす。


「今すぐ職員室にいってもいいのよ」


 平謝りの意味がありませんでした☆

 こいつ本当に話聞く気あるのかよ。いやない。


「俺謝罪したんだけど」


「謝罪したら許すなんて誰がいったの?」


「そこじゃねえよ、お前人の話聞いてねえだろ」


「そうよ、あんたとなんて話すのなんて時間の無駄でしかないの、だから早くその憎たらしい口を閉じろ」


 ここで俺は桜井に負けたくなかった、顔でも負けて、スポーツでも負けて、しかも口喧

 嘩でも負けたら、うん、もうなにも残ってないじゃん。しかし、このまま争っても事態は平行線上のままだし、しかも相手は容姿端麗、成績優秀ときたもんだ、クラスに話す奴がいないとしても顔面偏差値で間違いなく桜井をクラスは味方するだろう。このことが大沙汰になってしまったらこちらに味方は誰もいない。

 自分の身に危険が迫っているときに味方がいないと厳しい。まあだからこそ危機から避けてはいたんだが。ぼっちだし。


「じゃあ俺は何をしろっつーんだよ」


「あーもうゆこつかれた!美紅、あんた決めちゃっていいよ」


 会話のドッジボール……

 由高がつぶやく


「え?私?」


「なんでお前なんだよ!桜井と俺の問題だろ?」


 ギロ……

 桜井さんマジ怖いっす


「あっええと……じゃあいいや由高さんで、内容によって判断する」


「じゃあ話術部に入ってください!」


「それ一点張りかよ、入るわけねーじゃん」


 ギロ……


「うっんーどどどうしよっかなあ?」


 ギロチン……


「おい警察呼ぶぞ、どこから持ち出しやがった」


「勘違いしないで、これはゆこの四次元ポケットから出したおもちゃよ」


「俺の話聞いてください。てかそんなんあるわけねえだろ!129,3kg

 もあるのかよ!」


「ごめんね美紅、こんなとんだ下衆で臭くて不細工で突っ込みもろくにできない奴に時間与えちゃって、ほらあんたも謝れ」


「ボケたのお前じゃねえか!てかいくらなんでもいいすぎだろ」


「……」


「そこは言い返せよ」


「いや、言い過ぎって言うから」


「ええええええ(冷汗)」


「それで、話術部にはいってくれるんですか?」


 もう一度由高が尋ねる。本当なら断固拒否したいところだが、ここに桜井もいることだしここは無難に、


「……名前だけでもいいのか?」


「もちろん!」


 そのときの由高の顔はうれしいというよりはほっとしたような表情だった。

 だけどなんかモヤモヤする。

 教室に戻ると、早速由高に話術部の活動内容を説明される。


「話術部の活動理念はね、『誰にでも話しかけられる便利な能力を修得し理想の自分をつくり上げる部活』なんだよ!」


「はあそうなんでs……ん?由高ちょっとそれ文章化してみろ」


「え、どうしてですか?」


「いいからとりあえず」


「はい……わかりました」


 由高が筆を立てる




 だれにでも話しかけられる

 べんりな能力を修得し

 りの自分をつくり上げる

 部活




「由高これ右から頭の最初の文字だけ読んで見ろ」


「へぅ?……あーっ!」


 ちなみにこういうネタ仕込み系はすぐに気づく。中二の頃案の定俺は中二病を発症していて、俺はピク○ブなんかで「ペンを使って自分の世界を表現する俺カコイイ」なんて思っていたわけで、渾身の一作(といっても描法なんてしらず二時間弱で仕上げてしまった)をあげたところ最初のコメントが


 この作品はすばらしいと思います

 いつまでも見ていてもあきません

 ツイッターでも宣伝しておきます

 気づいておくべきでした、もっと早くあなたの存在に

 もちろんこれからあなたのことは見守っていきますよ

 一番目のあなたのファンです!


 なんてコメントがあったから「やっぱ俺すげえ!」なんて思ってたけど、その後コメントがひどかった。


 なにこの小学生並の絵wwwwwごめんやっぱ小学生に失礼だわwwww


 スプーしか描けない俺でもこれは引くわ……


 あなたのおかげで勇気をもらいました

 このときにはじめて気づきました。縦読みコメの「こいつきもい」って……単純だけど結構グサリとくるのよ?

 あのときの絵、残ってるかなあ。

 それからというものの俺はへたくそな絵を見つけては批判コメばかりしてた。あと荒らしてましたすんません。でも反省もしてません。

 ということがあったからなんだ。

 回想終わり。


「てかこのパターン隣○部のパクっただろ……部長ェ……」


「部長に報告です!すごい発見!」


 また俺の話無視しやがって。こいつやっぱり天然なのかな、それともただのKY?

 それとも俺の声そんなに聞きとりにくいのかなあ。

 放課後、どこかに向かう由高と俺。


「そういや部室ってどこにあるんだ?」


「あ、今までは情けで情報教室使ってたんですけど、吉留くんが入れば即日正式にあそこが部室になると思いますよ」


 ちなみにうちの学校にコンピ研はない、いたらコンピ研部長は常に願望実現する能力を持つ奴には気をつけろ。いやいないと思うけど。

 それから2分ほど歩くと、


「ここです!」


「まあ、きても名前書いて帰るだけだけどな」


「そんな事言わないでくださいよ~」


 ドアを開ける。

 情報教室は普通の教室の二倍の広さである。ここを部室に使えるって相当いいな。部員もここにいる由高と中にいる……


「って桜井さん!なんでお前がここにいる!」


 特に『さん』をつけたことに敬意もない。あんまり話したことの無い奴に突然話しかけたら嫌な感じに思われるだろ。由高はそれなりに話したからいい。


「ん?吉留か、なぜここにいるかって……私も話術部の部員だからだよ。あと言っておくがその言い方だったら友達なんてできやしない、キョロ充にもなれんとは相変わらずグズだな。」


「なんでここまで言われなきゃならないの。話術部って人を怒らせる方法講座でもやってるの?」


「そうですよ『こゆちん』、全部あてはまってるかもしれないんですよ?」


「いやフォローになってないよ?」


 やっぱこいつKYだな。確定。とおもっていたら突然桜井が激高した。


「あれほど『ゆこ』って呼べっていったでしょうがああああああ」


「『こゆちん』は『こゆちん』だも~ん!」


 とまあここから桜井と由高のよくわからん揉めあいがあるのだが割愛する。もちろん俺は介入していない。正直二人の会話が人類には早すぎて理解できなかった。

 大体5分ほどあーだこーだいっていたのだが、結局


「ゆこつかれた!」


 の一言で収まった。

 というかその一言で収まるほうがすごい。それをいったとたん、由高が「うん……ごめんね?ゆこ」なんていう始末。どこで納得したんだよ。しかもなんで「ゆこ」なんだよ「こゆり」の反対が「りゆこ」だから「ゆこ」なのか?わけがわからないよ。

 そのあとはというと桜井は何事もなかったかのように教室にいるような表情ででパソコンを起動した。仮にも俺は入部しにきてやったというのに。由高と俺の間になにやら微妙な沈黙が発生してしまったので


「そういや入部届ってどこにあるんだ?」


 とここに来た本来の目的を告げる。

 絶対名前だけで活動しよう。こいつらといると頭がおかしくなりそうだ。


「あ、ちょっと待っててくださいね」


 由高は明らかにここに来た目的をわすれていたに違いない。あわてて教室の周りを探し始めた。桜井はというと、パソコンをいじってなにやらニヤニヤしている。教室でもこんだけ表情豊かならなあ。でも気持ち悪い。けど華になる。おお神よ。どうして顔のパラメータを平等に配分しなかったのですか。ああ、そうか中身を残念にしたのか。おお神よ。やはりなんでもありません。        

 ちょっと覗いてみるか。

 由高の方へ歩きながら桜井の座っている後ろを通ろうとする。

 秘儀!横目チラ見!(名前のセンスない!)

 パソコンの画面を覗くと、男と男が激しく絡んで……その、ええと、レスリング、そう!レスリングしてた!決して夜のレスリングとかそういう意味じゃないよホントだよ!

 あれか、俗に言う『腐女子』というやつですか、なんか『腐女子』にもいろいろジャンルがあるらしいじゃん。美男同士の……やつとか。それこそ今桜井が見ているガチムチとかさ。

 桜井にガチムチ好き?って言おうとおもったけど、顔面ドロップキックをお見舞いされそうな感じがしたのでやめました。

 なので客観的に見たら俺は普通に、いたって普通に由高のもとへと向かっている構図になっているはずだ。ちょっとモニターみたら吹いちゃったけど。

 桜井も気づいていないと思うし……たぶん。

 由高が困った顔で引き出しを開け閉めしている

 。

「あっれえ?おかしいなこの辺にあったはずなんだけど……」


 入部届が見つからないのかな。


「なんだ。紙がないのか」


「部長がもっていったのかなあ」


 俺スルーかよ。


「おい、俺の話聞けよ。てか部長って……桜井さんじゃないのか」


「違いますよお、部長はほずみ先輩です」


 のろのろと間延びしながら答える由高、本当こいつ天然なのか、偽ってるのか。


「ほずみ先輩ねえ、てことは三年生か」


 俺が呟いた瞬間、情報科室のドアが勢いよく開いた。


「どうして漫画やアニメみたいにこうもうまくいかないのかしら……」


「そりゃあ、ここは現実という名の三次元ワールドですから。」


「もうあたし、心折れそう」


「先輩の心は折れてなんかいません、ひねりスティックパンなみに曲がってますよ」


「あんたでしょ、それ」


 なんだ?あの美男美女。男の方は背は小さいし髪も無造作だけれど、それをもろともしない顔立ち。女子の方は男の方とは反対で背が高く、長い髪をサイドテールにしている。てか死ねよ、氏ねじゃなくて死ねよ。リア充爆発しろ的な意味で。

「あ、ほずみ先輩ちょうどいいところに来てくれた」

 俺がほずみ先輩のこと思った瞬間にきてくれたってタイミング良すぎでしょ。

 由高がうれしそうに尋ねる。


「新入部員です!」


「え?どこ?」


 ほずみ先輩がキョロキョロ周りを見回す。


「おお!男子か!これからよろしくな。何年生だ?趣味はなんだ?ぼっちなのか?童貞なのか?」


「あの……すんません、2年でパソコンが趣味のぼっちです。あと最後の質問はしないでください」


「ああ、すまんな、嫌なことを聞いてしまって。でもまさか答えるとは思っていなかったよ。……と自己紹介がまだだったな。私が部長の八月一日、八月一日香緒莉ほずみかおり。三年生だ」


「ほずみ……って名前じゃないんですか?」


「ああ。よく間違われるんだ八月一日とかいて『ほずみ』と読むんだ。茨城県によくある苗字なんだよ。私は茨城出身じゃないけどな!」


「そうなんですか」


 とここで後ろのイケメン(は爆発)が俺に振り返る。


「そして俺が話術部唯一の男子、一年の広島孝広っす」


「ああ、そうかイケメン爆発しろ」


「なんすか!初会話がそれとかマジひどいっす。広島ヒストリーに『話術部の新入部員との初会話は期待の廃人』っとメモメモ~」


「もう突っ込む気にもなれん、疲れた……」


 ここで八月一日先輩が話を切り出す。


「そういや新入部員の自己紹介を聞いていなかったな。まあぼっちの君はおそらくクラスの自己紹介は『事故紹介』だったのだろうが、ここではいくら事故っても大丈夫だぞ!そういう話術スキルを鍛えていく部活だからな」


 この人は人を傷つけさせる講座でも受けてるのかな。


「そうか……話術部は俺と同じ系統の集まりなのか。吉留ヒステリーにメモメモ~」


 あまりにも精神的なダメージを食らったのでとりあえず先ほどの広島の真似をわざとらしくやってみる。どうだ!ざまあみろ!……俺ってちっちゃいな。


「おいパクんなよこのゲス野郎」


 広島よ、おまえもか。なにマジになっちゃってんの。

 ちょっとムキになったのでキレたガキを諭す大人口調で広島を指摘する。


「口調悪くなりすぎだろ。広島くん」


「これだからぼっちは面倒くさいんだ」


 プチン!

 ここで俺の何かが切れた。もう我慢ならん。


「てめえ、大人しくしてれば見逃してたものを!ぼっちなめんな!」


「そういう誰でもいいそうな言い方なんかするから、おもしろくねえんだよ」


「ぐぬぬ」


「ほら言い返してみろよ?仮にも俺より一年分多くの語彙学んでるんだろ?ほら言ってみろよ?さあはやく!」


「て、てめえ!」


「あれやっぱボキャブラリがすくないのかなあ?さっきからテンプレばかりじゃないすかあ」


 完全に敬語が形式化してやがる!もとからだけど。


「……おまえ!絶対に許さん!」


 完全にネジが外れた俺は手元にあったデスクトップのモニターを思い切り持ち上げた。

 ブチリっとなにかが切れる音がする。そんなの関係ねえ。

「おい、お前……それはやめろ!」


「うるせえ……散々バカにしやがって、タダで済むと思うなよ……!」


「ちょ……やめ……来るな!」


「覚悟しろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 大きく振りかぶり広島の頭部に叩きつけようとする。

 すると突然振り下げた手が止まった。何事か、と吃驚する。


「おいこのキチ○イ!喧嘩するのはいいが物をつかって攻撃するのは許せねえ!ましてや物を壊してまで攻撃しようとするなんざ、それは死刑に値する!」


 グググっとすごい力で押し返される。誰だ!誰がこんな力持っていやがる。


「地獄に落ちろおおおおおおおおおおおおおおお」


 身体ごと後ろにふっとばされて壁に激突した。そのまま眠りの小五郎の体勢になる。

 周りが見えない。背中が痛い。意識がだんだん薄れていく……


「てめえはやっぱ話術部に入って更生しないといけない人物のようだな」


「」


「話術部に入部するか?YesかYesで答えろ」


「」


「そうか返事がないか」


「」


「ならば……」


 思い切り髪の毛を掴まれた気がする。


「もう一度だけ聞こう、話術部に入部するか?」


 ここで思い切り地面の方向に圧力をかけられた。無理矢理頷かせられた。


「そうか!これで部として成立するな。これからもよろしく。吉留!」


「…...は、……はい」


 意識が遠のくなかでこんなことを考えた。


 美少女ばかりで正直主人公になりきってハーレム状態狙ってた罰ですか、わかりません。

 小学校以来のツッコミ連発で調子乗ってた罰ですか、わかりません。

 もし俺が主人公だったらこの先に恋愛フラグは立ちますか、立ちません。


 そう自問自答していたら腹に衝撃が走った。


「それじゃもう少しだけおねんねな。あ、後――」


 まだなにか言っていたような気がするが、ここで記憶が途切れた。


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