表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

美少女に縦横無尽に振り回されるなんてあるわけない(前編)

 夏休み明け、2学期最初の日いつものように朝の予鈴五分前に席に着き、学校でいつも読む本を鞄から取り出す。クラスの奴等はまだ騒いでやがる。その時間が無駄なんだよ。社会にでたら時間との勝負なんだよ、そんなのもわかってないんだろうな。いや聞いた話だけど。

 というか教壇の上でなんか思い切り叫んでる子がいるな……名前なんて言ったっけ……。そうだ確か由高美紅とかいったな。俺の席の前だったはずだ。誰ともかかわりの無い俺でも3ヶ月も経てば名前も覚えるさ。てか読めねえよ〈みこう〉って読んじまったよ入学答当時は。

 由高がなにか紙を持ってみんなに何かを伝えている。席が後ろだから大きい文字しかみえないけど、「話術愛好会」と書いてあるな。

 確か……ちょっと前にできた愛好会だったはずだ。何をやる会かは忘れちまったけど名前から判断する分には俺にとって絶対的に無縁であることは間違いない。会話をすることは嫌いじゃないんだ。ただ俺と会話すると俺のほうがちょっとレベル高いからみんなついてこれないんだ。そうだ。うんきっとそうだ。……そうだといいな。

 てかあいつ相当必死そうだな。そんなに部費がほしいのかな。

 とかなんとか考えているうちに朝読書を告げるチャイムが鳴った。担任が教室に入場し生徒たちに着席を促す。

 校舎が静寂に包まれる。

 暑い……住んでる場所が北海道といえど夏は三〇度越えるときもある。今日はその日だったらしい。うちわを扇いでるやつが大半だな。自分で熱風当ててどうすんだよ。エアコンもついてないから涼しくする方法なんてそうないけどな。我慢するしかない。

 再びチャイムがなるのと同時に俺と同じことを考えていたっぽい奴が周りに「今日一段と暑くね」なんていって気を紛らわしている。それくらい今日はあつい。

 担任が出席を取り始める。

 この時期になってくると出席の返事の仕方でその人のクラスの地位が意外とわかるものだ。

 リア充はおちゃらけてみんなを笑わす。

 リア充になりかけの奴はボケたときに滑ったらダメだから、普通に返事したり、リア充がやったネタを続けることが多い。保守派だな。だからいつまでも経ってもリア充の召使いなんだよ。

 次にヲタ。これは複数のヲタがグル組んでアニメの話とかする奴らだな。にわかヲタとかかなりの確率でいる。最近じゃリア充も興味半分で会話に参加してる。

 さて次はぼっちまたはぼっち気味な奴だな。まあ俺のことなんだけどさ。説明は悲しくなるので省略な。


「はい!みなさん是非話術部に入ってくださいね!」


 あれ?こんなウザい奴だったけ?てかまだ部になってねえよ。

 うるさかったらかなり印象に残ってるし、嫌悪感とか持ってるはずなんだけどな。そうか夏休み明けたからビッチ化したのかな。

 返事をしたのは由高だ。

 そのまま俺も担任に名前を呼ばれる。


「吉留」


「はい」


 この二文字でコミュニケーションができるとかマジ日本語便利。俺が出席番号最後なのでそのまま担任は今日の連絡事項を伝える。


「今日は二時限目の体育が現国になる。昨日伝えたとおりだ。」


「先生、そんな話聞いてないっすよお~」


 リア充なりたいグループの一人滝本がバカなことを言い出した。


「ちゃんと昨日話を聞いていないお前が悪いだろ」


 担任がテンプレ通りに答える


「俺、現国の教科書持ってきてねえよ……」


 でもどうせ教科書なんて友達から借りてこられるんだろ?どんだけゆるいんだ。この小社会。俺なら制裁を加えてやりたいところだ。俺は忘れたらそのまま授業を受ける。バレなかったら帰りにごほうびでジュースを自分に買ってあげる。でも見つかったときの周りのクスクス笑い率は異常。おいもっと笑えよ。リア充が俺と同じ立場だった時はめっちゃ大笑いしてたじゃん。どうして。どうしてなの?

 などと考えていると担任が苦笑いをしながら残りの連絡事項を伝え始めた。


「ああ、あと一ヵ月くらい前にできた愛好会の話なんだが今、会員が5人集まっているそうだあと一人で部として認められ――」


「そうなんです!あと一人なんです!幽霊部員でもいいんで入ってください!」


 勢いよく由高が椅子から立ち上がった。こいつ、話術愛好会の会員なのかよ。

 ちょっと気が弱そうだったからちょっといかつい会員に脅されたと思っていたのだが。おかげで机から手を出していたので思い切り指はさんでしまったじゃねえか。いかにも「俺、痛くないよ」オーラ出してるけど小指をタンスの角にぶつける並に痛い。てか痛みを予測していないときの痛みって尋常無く痛いよね。心臓とまっちまうよ。


「由高ぁ。今は先生が話している。人の話をさえぎるんじゃない。」


「えぅ……す、すいません。でもあと少しなんです。みなさんどうかおねがいします」


 クラスがなんともいえない感じに包まれる。この感じあれだよね、授業中に先生が生徒を怒ったときにそいつが思い切り反抗したときのあの空気ブレイカー的な感じに似てるよね。

 由高の長い緑色の髪がふわりとなびき席に座った。背が短いから座ると小動物みたいだな。

 ヤバい、いい臭いが……

 由高はクラスの中でも顔面偏差値は上位の方に俺は格付けしている。しかもクラスでも結構溶け込めているし、会話にも困らないはずだ。なのになんで話術愛好会なんかに入っているんだろう。

 担任が途中で中断された愛好会の話を再び伝える。


「えと……どこまで伝えたっけな、そうだそれで由高の言うとおりあと一人で部活として成立するそうだ。暇な奴は名簿だけでもいれてやったらどうだ?」


「はい!どうかみなさんよろしくです!」


 由高が懇願する。

「そんなことだそうだ。みんな少しは考えておいてくれ。特に部活はいってないやつはな。」

 と締めくくりHRが終わった。

 まあなんにせよ、部活なんて俺とは無縁の世界だな。



 HRが終わった後リア充グループがこんなことをしゃべりはじめた。


「一体何だ?話術……なんだっけ」


「話術愛好会だよ。記憶力のかけらもねえなお前は」


 ここでクラスの首領とも言うべき男、井川が滝本をバカにする。


「滝本、おまえ何もはいってねえじゃん、入れば?」


「はあ!?はいるわけねえじゃん!しかも、あの部活どうやらクラスのはみ出者が集まってるらしいぜ」


「なんだ?そりゃ」


「どうやら学年問わず集まってるらしいぜ。でもメンバーは中二病だったり、そいつと話すと必ず泣いて帰らせてしまうくらい口が悪い奴だったり、不良っぽいやつもいるってよ」


「うわぁ……それは勘弁願いたいでも由高さんいるしなあ」


 リア充グループの一人宇多が口をはさむ。


「俺噂しか聞いたこと無いけど、顧問はあの琴田先生らしいぜ」


「げ!?あのカル不足かよ!」


「もう隔離病棟だろそれ」


「おまえ言い過ぎ」


 滝本が高らかに笑う。ちなみにカル不足の由来はそのまんま、授業中によくキレることからきている。こればっかりは俺も同意する。あいつ絶対頭ん中のネジ何本か足りねえぞ。


「吉留くん!話術部に入らない?」


 前を向くと制服の上から微妙に強調された、二つの山が……俺は貧乳派だ!ステータスだ。異論は認めない。こなたマジリスペクト。

 由高美紅が立っていた。いきなり名前呼ばれるとちょっとビクってなる。過敏すぎるだろ俺。


「は?なんで」


「だって吉留くん、放課後になったらすぐに学校出て行くじゃん。そんなんじゃ学校にきている理由の三分の二損してるよ?」


 俺意外と見られてる?いやだめだそんな言動なんかには騙されない。


「おまえは俺のなんなんだよ、俺がどうしようが勝手じゃねえか。第一おまえにどうこう言われる筋合いねえよ」


「でも楽しいよ?男の子もいるし……」


「俺は年少児かよ、男の子がいるということで釣るとかいくらなんでももう少し良い誘い文句あるだろ」


「そ、そんなあ」


「とりあえず、俺はそんな部活なんて入らないし、入りたくもない、これ以上くだらないことで話しかけてくんな」


「うぅ……ごめん」


 とぼとぼと去っていく由高。あのタイプは結構キツめに言わないと、しつこく勧誘してくるからな。同情なんていらない。どうせ席が後ろだったからとりあえず話しかけたんだろうしな。

 ちなみに今は昼休みである。ぼっちも何年もいると、この時間の使い方にも慣れてくるもんだ。読書とか読書とか妄想とか。妄想はたまに顔がニヤける時があるので注意。次は王道の学校にテロリストが侵入してそいつらを俺が無双シリーズでいこう。

 ちなみに俺と同じ時間の使い方をしてる奴がもうひとりいる。妄想してるかはわからんけど。

 桜井胡百合という容姿端麗かつ成績優秀、スポーツ万能な女子である。俺の顔面偏差値ランクではダントツトップだ。だけどクラスにいるときは一度も話してるのを見たことが無い。この人にはぼっちというより孤高という言葉が似合うんだろうな。たまに由高が一方的に話してるのを見たことがあるけど。素晴らしいスルースキルだった。こいつ色々間違ってんだろ。

 その後、由高の部活勧誘は放課後まで続いた。何度か俺にも来たけれど徹底無視。

 これ重要な。

 翌日、相変わらず由高の勧誘は続いていた。男子に人気があるけど女子はまあそれなりの彼女であるが、最初もそれなりに興味がありそうに聞いていた奴も今では受け流しである。

 まあ、仕方が無いよな。あれじゃマシンガントークどころか手榴弾連投トークだよありゃ。あれが話術愛好会の成果か。評価しづらいな。

 そんな状態が昼休みまで続いた。

 俺が飯を食い終わると、桜井が由高のところまで来た


「ちょっと来なさい」


「え?どうしたの?こゆりん。」


「いいから、あとその言い方直さないといい加減壊しちゃうよ」


 何壊すんだよ。あんたの頭がぶっ壊れてるわ。


「うっごめん……」


 桜井が由高の腕を引っ張り教室から出て行く。初めて桜井の声も聞いたのか、すこし教室がざわめいている。

 てか声きれい過ぎるだろ、言葉遣いはダーティだけど。

 あっヤバい。トイレいきたくなってきた。イタタタタタタ(棒)、これは早くいかないともれちゃうゾ。

 別にあの二人が気になってなんていないんだからな。本当だからな!

 教室から出る。

 廊下には結構人がいたが、二人を見失ってはいない。

 俺は小走りで二人を追いかけた。


書き溜め分更新

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ