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『少し赤っぽい銀色のコイン』
あのレイモンドが問題ありと断じていたコイン。
ローガンは長年の婚約者、レイモンドは少し前に出会っただけの男性。
どちらに信を置くのかと聞かれれば、普通はローガンだ。
けれど、フェリシティはレイモンドの方が信頼出来ると本能で悟っていた。
それはきっと、ブリジット・サンザス嬢に出会ってからのローガンに不信感を持ってしまったせいだろう。
それにあのコインは、ろくな物ではない気がする。
「申し訳ありませんが、私の手元にはそのような物はありませんわ」
「そうか。家のあちこちを探してなかったから、ここで落としたと思っていたんだが……」
チラリとこちらを見るローガンは、少し疑っているかのようだった。
だからフェリシティは、わざとため息を吐いた。
「ローガン様、ご自身の管理不足で無くされた物を私のせいにしないでくださいませ」
「ッ!そ、そんなことは……!」
「思っていないと?でしたら、何故そんな目で私を見るのですか?」
そう言うと、ローガンが気まずそうに目を逸らした。
今までの穏やかそうなローガンと今のローガン、どちらが彼の本質なのだろう。
それに、もし変なことをしていたら、と思う。
それが違法なことだった場合、ローガンがどうなってしまうのか分からない。
フェリシティはともかく、我が家まで巻き込むわけにはいかない。
「ローガン様、正直にお答えくださいませ。そのコインは、何のためのコインなのですか?」
「……フェリが気にすることはない。仲間内の……そう、記念のコインみたいなものだ」
「本当ですか?」
「あぁ、本当だ」
じっとローガンを見ると、今度はローガンの方がため息を吐いた。
「……ちょっとした秘密の部屋に入るためのコインだよ」
「秘密の部屋ですか?」
「あ、あぁ。ほら、秘密の部屋って憧れるだろう?仲間たちでそういう部屋を作ったんだ。コインは仲間内の印みたいなものだ。もし本当にコインを持っているのなら、俺に返してほしい」
「秘密の部屋って何かいい響きですね。私も行ってみたいです」
「だめだ!」
フェリシティの言葉をローガンが強い声で否定した。
その声に驚いていると、ローガンがまたバツの悪そうな顔をした。
「秘密の部屋だって言っただろう。そう簡単に仲間以外の人間を入らせるわけにはいかないんだ」
「……私は、あなたの婚約者です」
「それでもだ。悪い、フェリ、このことはもう忘れてくれ」
それだけ言うと、ローガンはフェリシティから目を逸らしたまま部屋から出て行った。
フェリシティは、その後ろ姿を何とも言えない顔で見送った。
「……ローガン様……」
ぎゅっと握った手は、小さく震えていたのだった。




