お嬢様、想いを告げる
皆様ご存知のとおり、私は大変足が速いのです。
恋愛漫画のセオリーとして、メインのカップルが求め合い同時に駆け出した場合、男性の方が先に女性にたどり着くのが常ですが。
全力疾走した結果、息を盛大に切らした私が、山田の元へと行く形になりました。
髪の毛も乱れていますし、せっかくのロマンチックな場面が台無しですわ……鼻毛まで出ていたらどうしましょう……。
いえ、今は鼻毛を気にしている場合ではありません(そうか?)。
目の前に、山田がいます。
ずっとずっと恋い焦がれていた、一度は諦めた愛しい人が。
照れ臭そうにうつむき、頬を微かに朱に染めながら。
確かに存在しているのです。
何てことでしょう。
今一度、これは現実なのかと疑いたくなります。
またしても自ら頬を殴ろうかと思いましたが、何とか踏み止まりました。
「山田くん……その……どうしてここへ……?」
なかなか言い出せない山田に、ちょっと意地悪い助け舟を出しました。
だってだって、愛の告白は心の声ではなく、口から出た言葉で聞きたいですもの。
少し低い、透き通ったその声で。
彼はけれど、しどろもどろになってしまい、
「あ……えっと……その……」
(ど、どう言えばいいんだろ……君のことが、好きなんだ、とか……大好きです、とか……?)
oh my god……!!!
山田、いつの間にそんな情緒豊かに……!!??
『初対面で鼻毛が出ていた女』から『世界一美しい愛する女』に昇格するなんて(美しいとは言ってませんが、察して下さいまし)、神様ですら予想出来なかったに違いありません。
感動のあまりこちらから「私も貴方が大好きですわー♡♡♡」と飛び付きたくなりますが、グッと堪えます。
「学校はいかがなさったの?」
「ああ、……流星くんから、有栖川さんと一緒に、パリに行くって聞いて……いてもたっても、いられなくて……」
(悠莉も背中押してくれたんだよなぁ。……何で皆、俺が有栖川さんを好きなこと、知ってるんだろ)
チクン。
詳細は分かりませんが、どうやら流星と悠莉が密かに協力してくれた模様です。
二人ともきっと、自分の気持ちを押し殺していたに違いありません。
私は何て人に恵まれているのでしょう。
流星と悠莉よ、ありがとうございます。
貴方達の想いは決して、無駄には致しませんわ!!!
山田から愛の告白を引き出してみせます。
「まぁ、ご挨拶に来て下さったの。ありがとうございます。パリに行っても、クラスの皆様のことは忘れませんわ」
相変わらず私はひねくれおります。
けれどここは譲れません。
さぁ山田よ、言うのです。
ここで怖じ気づいては、男が廃りますわよ!
何の為に27部、六万文字近くかけて片想いしてきたと思っていますの!!
R-18ならばとっくにヤることヤって最終回を迎え、番外編に突入してますからー!!!
穏やかに微笑を浮かべる裏で、ジリジリと追い詰めると。
山田はやっと覚悟を決めたらしく、姿勢を正して、
「……行かないで、ほしい……んだ……き、……だから……」
「……え?何て……?」
やーん。
私ったら、本当に性悪♡♡♡
最後の最後まで、好感度を落とすのに余念がありません。
……でも。
恐らく生涯で、一番大切になる殿方からの告白。
ちゃんと聞きたいじゃありませんか。
山田は瞼をギュッと閉じ、耳まで真っ赤にして、そして。
「有栖川さん、が、好きだから……パリには、行かないで下さいっ!!!」
(ああー!恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいは(ry)
キタアアアーーー!!!
やりました……やりましたわ……。
27部、六万文字近くかけて片想いした甲斐がございました……。
鼻毛から始まったこの恋が、報われる日が来るなんて。
神様、ありがとうございます。
この瞬間を、私は永遠に忘れません。
山田の表情、声、動き。
胸の奥底にまで、刻み込みます。
「私も……私も、山田くんのこと、大好きですわ……!」
ついに。
今までずっとずっと秘めていた想いを告げました。
どさくさに紛れて、山田に抱きついちゃったりしちゃいます。
ちょっぴり破廉恥ですが、曲がりなりにもラブコメのヒロインなんですもの。
許して下さいまし。
「あ、ああ、有栖川、さん……」
(あわわー!有栖川さんも、俺のことを……!?こういう時……どうしたらいいんだろう……よ、よし……抱きしめ、返すしか、ないーっ!!!)
ふふふ。
山田の狼狽える心の声と、早鐘の如く脈打つ心臓の音が聞こえてきます。
今まで散々振り回されてきましたが、これからは私が振り回す番でございます。
覚悟なさい、山田 健太郎っ♡♡♡
いつもご閲覧・ブックマーク・評価ありがとうございます!
ついにここまで来ました~。
あとは余力があればw後日談を載せようと思います。




