お嬢様、試みる(3)
日曜日に放送している格闘ものや魔法少女のアニメでも、主人公が能力を失うパターンはよくあります。
定番の展開だと思います。
作者よ、こんなショボいラノベで定番に逃げてんじゃねーよバーローーー!!!
奇をてらったストーリーを考えやがれ!!!
と言いたいのは山々ですが、私は礼節を弁えたうら若き乙女ですので、胸の内にとどめておきましょう。
さて、前述したように確かによくある流れではあるものの、決定的な違いがございます。
お下品な単語が多々登場するので、皆様お忘れかもしれませんが、これはれっきとした恋愛小説なのです。
大概は能力を失った主人公が回復するには、共に闘う仲間がピンチになったりして、敵に追い込まれた時に「ウオオオ!!!」と咆哮し、何故か発光し、前以上の力を獲るのが常です。
けれども、私は悠莉とは敵対はしておりますが、殴り合ったりはしておりません。
能力同士のバトルもありません。
別に命の危機に瀕すこともございません。
……これは死亡フラグ、というやつでしょうか……?
どうしたら能力を取り戻せるのか、皆目見当もつかないのです。
立ち止まっている暇など、一秒もないと言うのに。
だって、だって。
「おお、ロミオ、どうして貴方はロミオやねん……あ、ごめん!また関西弁になってもうた!」
「はははっ。しょうがないよな。関西弁のジュリエットも悪くないんじゃない」
「健太郎ってば……もう、他人事やと思って。大変なんやで!?」
「まぁまぁ。そんな本気で見てる人なんていないって。気楽にやろ」
「……ふふっ、せやな♡」
なーーーにが「せやな♡」だよ、♡なんかつけるなコンニャローーー!!!
などと内心悪態を吐きつつも、表面上は平静を装い、ニコニコと笑みを湛えていました。
ちなみに私は、簡単な照明係になりました。
この宇宙一の美少女が裏方になるとは、医師免許を持っているのにニートになる程の勿体なさですが、休んでいたので致し方ありません。
むしろ山田と悠莉のイチャイチャを間近で見ないで済んで、安堵すらしております。
嗚呼、なんて情けない。
本来の私なら、悠莉からの宣戦布告を受け、こちらも直ぐに行動を起こしていたでしょう。
彼女はこうも言っていました。
『別に美麗も文化祭が終わるまで、告白せんといて!って言う訳やないで?全然、気にしないでもらってええから。ただうちは、文化祭が終わったら告白する。これは絶対や』
心の声が聞こえなくとも、悠莉が嘘を吐いていないことは明らかでした。
ライバルとは言え、彼女の人柄の良さは認めざるを得ないので。
その真摯な眼差しに、私は身体を硬直させました。
それからずっと、思考回路が擦り切れそうになるくらい、対策を考えているのですが……。
やはり、無理なのです。
心の声が聞こえてこないと、不安で堪らないのです。
しかも山田と悠莉は今、以前にも増して距離を近づけています。
抜け駆けして想いを告げたとしても、玉砕する可能性が高いのではないか。
私としたことが、そんなネガティブな未来ばかり思い描いてしまい、前に踏み出せずにいました。
このままでは、山田は悠莉のものになってしまいます。
『健太郎……あ、あんな!健太郎さえ良ければ……ほんまのロミオとジュリエットになりたい……勿論、ハッピーエンドで……♡』
『悠莉……ごめん』
『えっ!?あ、ああ……そ、そうやんな、健太郎にとってうちは、ただの幼馴染み……やもんね……』
『違うよ。謝ったのは……悠莉の方から告白させちゃったこと。……俺の方から、言うべきなのに……』
『けっ、けけ、健太郎っ……!?』
だあああーーー何てリアルですのおおおーーー!!!
このまま指をくわえて眺めている訳にはいきません。
こうなればどれだけ罵られようと、好感度が地の底まで落ちようと、先に告白してしまおうかしら。
夏目漱石様の『こころ』の先生のように(分からない方は検索して下さいまし。勉強にもなりますわよ)。
いやちょっと待てあれとんでもないアンハピエ……これ以上はネタバレになるので止めておきますわ。
などと散々煩悶したところで、やはりただの一般人に成り下がった私は、勇気を出せませんでした。
そんなこんなで、あっという間に日々は過ぎ、文化祭当日を迎えました。
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