お嬢様、試みる(4)
ご子息、ご令嬢ばかりが集う我が校の文化祭は実に品があり、出し物もかなり豪勢です。
高級なコーヒーや紅茶を出す喫茶、和牛ステーキを提供する屋台、イベントも人気のある俳優を招いたりしています。
そんな中、学生達が演じる舞台は少々地味で、通常ならば保護者くらいしか観に来ないのですが。
今年は違います。
私、有栖川 美麗がいるのですから。
「なあなあ、あの照明の子が有栖川 美麗ちゃん!?」
「噂どおりか~わ~い~い~♡」
「スカウトも来てるって話だぜ」
「でも何で照明なんだろ??」
フッ……やはりこの空前絶後の超絶美少女が裏方なんて、誰もが疑問を抱きますわよね、分かります。
私だって好きで照明をやってる訳ではありませんわーーー!!!
何が悲しくて想い人とライバルのイチャイチャを援護せねばならぬのか……いつしか政治家になり、理不尽極まりない世の中に、一石を投じようと思います。勿論嘘です。
美少女ジョークはさておき、しかし観客のほとんどが私に注目しているようでした。
フッフッフ、ヒーヒッヒッ。
ざまぁないですわね、悠莉!!!
いくらジュリエットという鉄板のモテ役をゲットしたとしても、宇宙一の美貌には敵わないのです。
きっと劇が始まっても、皆こちらに気をとられて散々な結果に
「え……あのジュリエットも……可愛い~♡」
「てか胸でかすぎねぇ!?衣装パツンパツンじゃん」
「ロミオ役も素敵♪演技うまっ」
「あの二人、お似合いだね~付き合ってるのかな?」
グサッドスッゴドスコッブスブスッ!!!
心の声が聞こえなくとも、恐るべき殺傷能力……。
開始一分で山田と悠莉は、観客の心を奪ってしまいました。
もう私になど誰も関心を持っておりません。
確かに……歯軋りしたくなるくらい、二人はお似合いでした。
山田はいつも下ろしている前髪を上げ、その端整な顔立ちが露になっています。
悠莉もバッチリ化粧を施し、愛らしさに加え妖艶さを漂わせています。
余程練習したのか、台詞も滑らかに紡いでおり、
「おおロミオ、どうして貴方はロミオなの」
「黙って聞いていようか、それとも……」
「私にとって敵は名前だけ。ロミオ様、その名前をお捨てになって。そして代わりに、この私をお受け取りになって」
「お言葉どおり頂戴致しましょう。今から僕は貴女もの。貴女だけのロミオでございます」
「ああ、ロミオ様……!」
……何を想って、演技しているのでしょう。
残念ながら、今の私には分かりません。
あくまで演技と割り切っているのか。
はたまた、虚構と現実の狭間で、感情が揺れ動いているのか……。
やはりこのままでは、山田と悠莉は恋仲に……。
嫌!!!
それは嫌ですわ!!!
私は顔を近付け、ラブシーンを演じる二人に照明を当てながら、決意しました。
もう能力がどうのこうの言っている場合ではございません。
この気持ちを伝えないままジ・エンドなんて、絶対に納得出来ません。
玉砕するのを覚悟で、私も山田に告白致します!!!
……えっと、えっと……何と申したらいいのでしょう……?
考えてみたら、生まれてこの方自ら告白したことがないのです。
殿方の方から想いを寄せられてばかりですので……宇宙一の美少女ゆえの悩みですわね。
『鼻毛を指摘された瞬間に、恋に落ちました!好きです!』
別に鼻毛言わなくても良くね?
『実はうちも好きやねん!結婚してや!』
悠莉の真似して関西弁……絶対滑る……。
『オホホ、私と結婚すれば、お金の心配はせずに済みますわよ♡さぁ結婚なさい♡』
自分で言うのも何だけど、結構なクソ野郎だな。
ああ~~~全く思い浮かびません!!!
けれどもう、決めたのです。
決めてしまったのです。
ずっとずっと胸の内に秘めていた想いを、打ち明けると。
劇は盛況の内に幕を閉じました。
舞台裏に戻ってくる山田と悠莉を、クラスメイト達が口々に労います。
「お疲れさん!いや~二人とも最高だったよ」
「うん、最後泣いちゃいそうだった!」
「キャスティング成功だったね。スカウトとか来るんじゃないの~?」
クッ……!
山田と悠莉はすっかり時の人、大勢の人に囲まれ、なかなか近付けませんでした。
それどころか私自身、「有栖川さんもお疲れ様!観客の人、めっちゃ見てたね」「やっぱり器用だなぁ、タイミングバッチリだったよ」と相変わらずの人気ぶりを発揮し、気付けば二人を見失っていました。
な、何てこと!
これでは、悠莉に先越されますわ!!!
私は何とか人混みをかき分け、すると山田と悠莉がこっそりとその場から抜け出そうとしております。
そうは問屋が卸しません!!!
あ、すみません、作者がバリバリの昭和生まれなもので……。
とにかく、早く追い掛けなければ。
何処へ行くのかと目を光らせていると、二人は人気のない校舎裏へと向かいました。
oh……少女漫画やラノベで、100%告られるパターンではないですか……。
挙げ句き、き、キスとかもあり得ますわね……ディープだけはご勘弁を……。
などと弱気になっている場合ではありません。
ここは一つ、勇気を出して制止を
「健太郎……あんな。うち……あんたのこと、好きやねん。ずっとずっと……昔から……」
ドキン!!!
悠莉が躊躇なく口にするのを目の当たりにして、体が硬直致しました。
目を伏せ、頬を赤く染めている彼女は、悔しいまでに可憐で、その魅力を認めざるを得ません。
私が男でも、思わず抱き締めたくなるでしょう。
山田。
山田、は。
どう応えるのかー。
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