お嬢様、試みる(1)
山田に想いを寄せてから、ずーーーっと。
皆様には散々醜態を晒して参りました。
悲劇の鼻毛事件から始まり、席替えでもスルーされ、体育祭や合宿では悠莉に出し抜かれ、妹の鈴香ちゃんには嫌われ……。
完全無欠と言われている有栖川 美麗には、あってはならない出来事の連続でございました。
が。
お待たせ致しました!!!
もうガッカリはさせません。
観客満足度100%になる展開が、ようやく訪れるのです。
それは……文化祭でございます♡♡♡
え?張り切ってる割りには、地味なイベントですって??
ノンノンノン。
確かに通常ならば、文化祭はそこまで注目すべき存在ではないかもしれません。
しかーし!今年の我がクラスの演し物は!なんと!
『ロミオとジュリエット』なのです!!!
毎年一年生は演劇を披露するのが、古くからの習わしらしく、学級委員長が見事くじ引きで当てたのです。
やはり私は神に愛されているのだと実感しました。
この言葉の意味、もうお分かりですわね?
推薦にてジュリエットに私がなり、そしてさりげなく山田をロミオに抜擢し、急速に距離を近付け、密かに愛を育み……ついに……ついに……。
私……告白致しますわ!!!
ええ、きっと驚かれたことでしょう。
文春砲をぶっかましてやりました。
清純派アイドルの不倫よりも衝撃だったかと思います。
今までこの美貌と叡知であらゆる男を虜にした私が、校内一の貧乏陰キャに苦戦すること早数ヶ月。
……数ヶ月!!??
何と恐ろしい……産まれたばかりの子猫が、成猫になる勢いではありませんか。
これでは流星との賭けに負けてしまいます。
そうしたら私は、あの破廉恥な男の花嫁に……イヤアアア!!!
AVも真っ青の、あんなことやこんなことをされてしまいますわ!!!
けれどもご安心下さいませ。
色褪せぬ名作、『ロミオとジュリエット』を演じた若い男女が、結ばれない漫画・ラノベがございまして??
少年漫画の主人公が敵役に負けて、地球が滅ぶのと同じくらいあり得ない展開ですわ。
という訳でこれが順調に進めば、私と山田は100%恋仲になります♡
幸い流星はまた海外へと遊びに行っていますし、邪魔者が一人減っている今、一気に前進するチャンスなのです。
その為にはまず、ジュリエット役をゲットしなくては。
まぁ、この私が推薦されないなんて考えられません。
悠莉も人気がございますが、到底及ばないと踏んでおります。
フッフッフ。
フォッフォッフォ。
オーホッホッ!!!
やっと、ようやく待ち望んでいた瞬間が訪れるのです。
(嗚呼、ジュリエット……いや美麗……この想いは、演技なんかじゃない。俺はロミオじゃなくても……彼女のことを愛してるんだ。きっと出会った瞬間から、フォーリンラブしていた……早く彼女に想いを伝えて……ピーやピーをしたい♡♡♡)
ってキャーーー♡♡♡
山田の助平ーーー♡♡♡
失礼致しました。つい、気持ちが高ぶりました。
さあ、明日のHRで劇の詳細を決めることになっています。
質のいい睡眠をとり、万全の体調で挑みましょう!
……と、ベッドに潜り込んだのですが……。
翌朝悪夢のような、信じられない事態に陥りました。
何と、この私が……高熱を出したのです!
この!十五年間健康優良児だった私が!!40度近い高熱を!!!
よりによって、人生で一、二位を争う程大切な日に!!!
神様、私に恨みでもあるのですか?
前世で連続殺人でも犯したのですか??
それともこのスペックで産まれた時点で、運を使い果たしたのですか???
熱に魘されながら、私はひたすら神に問うておりました。
しかも追い討ちをかけるように、とんでもないLINEが飛び込んできたのです。
『文化祭で演じるロミオとジュリエット、主演は山田 健太郎と瀬戸 悠莉に決定しましたー☆皆で頑張りましょう!』
お・し・ま・い・Death。
申し訳ございません、某人気ドラマの台詞をパクってしまいました。
さすがの汎用性の高さに感嘆致します。
いや、それはさておき。
ロミオ=山田、ジュリエット=悠莉……。
ノオオオオオーーー!!!
一番恐れていた展開が起こってしまいました。
ライバルがジュリエットに選ばれるなんて、え何コレ、どんでん返しのフラグ?
これだけ私と山田の物語を綴っておいて、結局はど定番の、何の捻りもない幼馴染みEND??
巨乳+関西弁+病弱のフルコンボには敵いませんの???
『健太郎がロミオで良かった~♪リラックスして挑めるわ』
『俺も悠莉で良かったよ。リラックスっていうか……感情込めて演じられそう』
『えっ、……嫌やな、もう。健太郎……期待させるようなこと、言わんといて……』
『……期待しちゃいなYO……hey yo』
『oh my darling……KENTARO……』
ギャアアアーーー!!!
動揺のあまり、妄想が途中からキャラ崩壊してしまいましたわ!!!
落ち着いて、落ち着くのよ、美麗。
『ロミオとジュリエット』を演じたとしても、二人が結ばれる確率なんてさほど高くないはずです。
だって所詮は学生のお遊戯、現実とは違いますもの。
そうです、大概は青春の一ページとして終わるだけ!!!
え?先程と言ってることが矛盾してる?
チッチッチ、人間とは矛盾した生き物なのですよ……(遠い目)。
とにもかくにも、いち早く登校して現状を確かめたかったものの、なかなか熱が下がらず。
何と数週間、欠席する羽目になりました。
こんなこと、産まれて初めてです。
ようやく体調が整い、医者から太鼓判をもらった頃には、劇は大分出来上がっている様相でした。
私は山田と悠莉の仲がどうなっているのか気になり、まだ違和感が残っていましたが、学校へと向かいました。
そう、違和感。
体はすっかり元通り、元気満々ですのに、何かがおかしいのです。
しかしその正体は、はっきりしないままでした。
それが、皮肉にも山田によって解き明かされます。
教室に着いた途端に、
「有栖川さん、おはよう。……体はもう、大丈夫?」
一番に話し掛けてきたのはー何と、山田でした。
……ってドエエエエエ!!??
どうした、お前どうした。
誰かとぶつかった衝撃で人格が入れ替わりました?
はたまた病床に伏せっている間に、天変地異が起こりました??
などと思わず狼狽してしまいましたが、いけないいけない、私にそんな必要はなかったですわ。
だって人の心が読めちゃいますもの。
普段は自然と耳に入ってくるのですが、ちょっとまだ調子が悪いのかしら。
でも気合いを入れれば、きっと大丈夫です。
はい、せーの!!!
……。
……、あれ???
心の声が……全く……聞こえてきません……。
うんともすんとも……聞こえてきません……。
……。
……え……エエエエエーーー!!!
朝から感じていた違和感、それは。
心の声が聞こえてこない、つまり超能力を失ってしまったことでした。
お久しぶりです!
いつもご愛好ありがとうございます。
連載を再開致しました。
ただ申し訳ありません、不定期になります。
相変わらずマイペースな更新になりますが、よろしくお願い致します。
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