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20/29

お嬢様、試みる(1)

山田に想いを寄せてから、ずーーーっと。

皆様には散々醜態(しゅうたい)を晒して参りました。

悲劇の鼻毛事件から始まり、席替えでもスルーされ、体育祭や合宿では悠莉に出し抜かれ、妹の鈴香ちゃんには嫌われ……。

完全無欠と言われている有栖川 美麗には、あってはならない出来事の連続でございました。

が。

お待たせ致しました!!!

もうガッカリはさせません。

観客満足度100%になる展開が、ようやく訪れるのです。

それは……文化祭でございます♡♡♡

え?張り切ってる割りには、地味なイベントですって??

ノンノンノン。

確かに通常ならば、文化祭はそこまで注目すべき存在ではないかもしれません。

しかーし!今年の我がクラスの演し物は!なんと!

『ロミオとジュリエット』なのです!!!

毎年一年生は演劇を披露するのが、古くからの習わしらしく、学級委員長が見事くじ引きで当てたのです。

やはり私は神に愛されているのだと実感しました。

この言葉の意味、もうお分かりですわね?

推薦にてジュリエットに私がなり、そしてさりげなく山田をロミオに抜擢(ばってき)し、急速に距離を近付け、密かに愛を育(はぐく)み……ついに……ついに……。

私……告白致しますわ!!!

ええ、きっと驚かれたことでしょう。

文春砲をぶっかましてやりました。

清純派アイドルの不倫よりも衝撃だったかと思います。

今までこの美貌と叡知(えいち)であらゆる男を虜にした私が、校内一の貧乏陰キャに苦戦すること早数ヶ月。

……数ヶ月!!??

何と恐ろしい……産まれたばかりの子猫が、成猫になる勢いではありませんか。

これでは流星との賭けに負けてしまいます。

そうしたら私は、あの破廉恥(はれんち)な男の花嫁に……イヤアアア!!!

AVも真っ青の、あんなことやこんなことをされてしまいますわ!!!

けれどもご安心下さいませ。

色褪(いろあ)せぬ名作、『ロミオとジュリエット』を演じた若い男女が、結ばれない漫画・ラノベがございまして??

少年漫画の主人公が敵役に負けて、地球が滅(ほろ)ぶのと同じくらいあり得ない展開ですわ。

という訳でこれが順調に進めば、私と山田は100%恋仲になります♡

幸い流星はまた海外へと遊びに行っていますし、邪魔者が一人減っている今、一気に前進するチャンスなのです。

その為にはまず、ジュリエット役をゲットしなくては。

まぁ、この私が推薦されないなんて考えられません。

悠莉も人気がございますが、到底及ばないと踏んでおります。

フッフッフ。

フォッフォッフォ。

オーホッホッ!!!

やっと、ようやく待ち望んでいた瞬間が訪れるのです。


(嗚呼、ジュリエット……いや美麗……この想いは、演技なんかじゃない。俺はロミオじゃなくても……彼女のことを愛してるんだ。きっと出会った瞬間から、フォーリンラブしていた……早く彼女に想いを伝えて……ピーやピーをしたい♡♡♡)


ってキャーーー♡♡♡

山田の助平(すけべ)ーーー♡♡♡

失礼致しました。つい、気持ちが高ぶりました。

さあ、明日のHRで劇の詳細を決めることになっています。

質のいい睡眠をとり、万全の体調で挑みましょう!

……と、ベッドに潜り込んだのですが……。

翌朝悪夢のような、信じられない事態に陥りました。

何と、この私が……高熱を出したのです!

この!十五年間健康優良児だった私が!!40度近い高熱を!!!

よりによって、人生で一、二位を争う程大切な日に!!!

神様、私に恨みでもあるのですか?

前世で連続殺人でも犯したのですか??

それともこのスペックで産まれた時点で、運を使い果たしたのですか???

熱に魘(うな)されながら、私はひたすら神に問うておりました。

しかも追い討ちをかけるように、とんでもないLINEが飛び込んできたのです。


『文化祭で演じるロミオとジュリエット、主演は山田 健太郎と瀬戸 悠莉に決定しましたー☆皆で頑張りましょう!』


お・し・ま・い・Death。

申し訳ございません、某人気ドラマの台詞をパクってしまいました。

さすがの汎用性(ぼんようせい)の高さに感嘆致します。

いや、それはさておき。

ロミオ=山田、ジュリエット=悠莉……。

ノオオオオオーーー!!!

一番恐れていた展開が起こってしまいました。

ライバルがジュリエットに選ばれるなんて、え何コレ、どんでん返しのフラグ?

これだけ私と山田の物語を綴(つづ)っておいて、結局はど定番の、何の捻(ひね)りもない幼馴染みEND??

巨乳+関西弁+病弱のフルコンボには敵いませんの???


『健太郎がロミオで良かった~♪リラックスして挑めるわ』

『俺も悠莉で良かったよ。リラックスっていうか……感情込めて演じられそう』

『えっ、……嫌やな、もう。健太郎……期待させるようなこと、言わんといて……』

『……期待しちゃいなYO……hey yo』

『oh my darling……KENTARO……』


ギャアアアーーー!!!

動揺のあまり、妄想が途中からキャラ崩壊してしまいましたわ!!!

落ち着いて、落ち着くのよ、美麗。

『ロミオとジュリエット』を演じたとしても、二人が結ばれる確率なんてさほど高くないはずです。

だって所詮(しょせん)は学生のお遊戯、現実とは違いますもの。

そうです、大概(たいがい)は青春の一ページとして終わるだけ!!!

え?先程と言ってることが矛盾(むじゅん)してる?

チッチッチ、人間とは矛盾した生き物なのですよ……(遠い目)。

とにもかくにも、いち早く登校して現状を確かめたかったものの、なかなか熱が下がらず。

何と数週間、欠席する羽目になりました。

こんなこと、産まれて初めてです。

ようやく体調が整い、医者から太鼓判(たいこばん)をもらった頃には、劇は大分出来上がっている様相でした。

私は山田と悠莉の仲がどうなっているのか気になり、まだ違和感が残っていましたが、学校へと向かいました。

そう、違和感。

体はすっかり元通り、元気満々ですのに、何かがおかしいのです。

しかしその正体は、はっきりしないままでした。

それが、皮肉にも山田によって解き明かされます。

教室に着いた途端に、


「有栖川さん、おはよう。……体はもう、大丈夫?」


一番に話し掛けてきたのはー何と、山田でした。

……ってドエエエエエ!!??

どうした、お前どうした。

誰かとぶつかった衝撃で人格が入れ替わりました?

はたまた病床(びょうしょう)に伏せっている間に、天変地異(てんぺんちい)が起こりました??

などと思わず狼狽(ろうばい)してしまいましたが、いけないいけない、私にそんな必要はなかったですわ。

だって人の心が読めちゃいますもの。

普段は自然と耳に入ってくるのですが、ちょっとまだ調子が悪いのかしら。

でも気合いを入れれば、きっと大丈夫です。

はい、せーの!!!

……。

……、あれ???

心の声が……全く……聞こえてきません……。

うんともすんとも……聞こえてきません……。

……。

……え……エエエエエーーー!!!

朝から感じていた違和感、それは。

心の声が聞こえてこない、つまり超能力を失ってしまったことでした。

お久しぶりです!

いつもご愛好ありがとうございます。

連載を再開致しました。

ただ申し訳ありません、不定期になります。

相変わらずマイペースな更新になりますが、よろしくお願い致します。

気に入って貰えたら、ブックマーク・評価して頂くと大変励みになります。


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