お嬢様、看病する(4)
それから改めて談笑を試みようとしたものの、十分が経過したらしく、
「やほー!健太郎。うちも来たでー♡」
(はい、終了~!抜け駆けは許さへんで!)
悠莉が突入してきて、結局寝顔を愛でただけで終わってしまいました。
チッ、関西弁巨乳美少女め……意外とシビアだな……。
しかし滅気ている暇はございません。
「おお、悠莉も来てくれたんだ。ありがとな。鈴香の奴、喜んだだろ」
(鈴香、悠莉のこと大好きだもんな~)
「うん。さっきまでゲームしてた。鈴香ちゃん、めっちゃ大きくなっててびっくりしたわ」
(一歩も二歩もこっちがリード!これが幼馴染みの強みや)
くううううう!!!
出来ることなら人生をやり直したい。
生まれた瞬間から山田の側にいれる、庶民的な家庭に産まれた……いや嘘ですごめんなさい。
やはり資産家の家庭で誕生したのには、一片の悔いもございません。
とにもかくにも、今更どうにもならないことで悩んでる場合ではありませんわ。
山田と悠莉のツーショットタイムの間に、-100000まで落ちた鈴香ちゃんの私への好感度を上げなくては!!!
私は悠莉とバトンタッチをし、鈴香ちゃんの元へと急ぎました。
彼女はこちらを見るなり、あからさまに嫌そうな顔をして、
(うわあ、金持ちババアが来た。早く帰らないかな)
グサッグスッズブズブーッッッ!!!
何と言う言葉の殺傷能力……心の声とは言え、いえだからこそロンギヌスの槍も真っ青の勢いで、私の心臓を打ち砕きます。
せめてババアではなく、おば様とお呼び下さいませ、鈴香ちゃん(やっぱりそれはそれで嫌。何か嫌)。
ここは早急に、ご機嫌をとらなければなりません。
私はニッコリと満面に笑みを湛え、
「鈴香ちゃん、私も一緒にゲームしてもよろしいかしら?」
「え!?……出来るの?レースゲーム……」
(見るからにゲームとかしなさそうな人だけど……)
確かに私はほとんどゲームをした経験がありません。
ねだれば何でも買って貰えたでしょうけども、興味が沸かなかったのです。
以前話した格闘技に加え、乗馬や茶道、華道などなら負けないのですが……。
けれど皆様、思い出して下さい。
近頃のドジッぷりのせいでお忘れかもしれませんが、私は誰よりも頭脳明晰なのです。
なのでこんな子供向けのゲームなど、ちょちょいのちょいでございます。
鈴香ちゃんに花を持たせる為に、わざと負けるつもりではありますが、それまでは接戦に持ち込み、楽しませてみせます。
そうしたら、きっと。
(このお姉ちゃん、一緒にいてめちゃくちゃ楽しい!あ~やっぱりお兄ちゃんのお嫁さんにはこの人だな♡オススメしとかなきゃ♡♡♡)
となるはず!
……フッフッフ。
オーホッホッ!!!
一切綻びのない、完璧な作戦ですわ!!!
世が世なら軍師として名を轟かせていたでしょう。
私はゲームをしている鈴香ちゃんの隣にチョコンと座り、
「勿論ですわ。えっと、車を運転するゲームですわね?」
「うん。どっちが早くゴールするか競うの」
(ま、一人で遊ぶよりはマシか。悠莉ちゃんが戻ってくるまでは付き合ってあげようっと)
当然ながら、まだまだ鈴鹿ちゃんの中では悠莉>>>越えられない壁>>>私のようですが……。
この十分で変えてみせます。
いざ、ゆかん!!!
ー数分後ー
有栖川 美麗、齢十五歳にして、人生の厳しさをひしひしと痛感致します。
何故に私は、こんな単純なゲームが出来ないのでしょう。
鈴香ちゃんを楽しませるどころか、ソッコーで自爆し、コースに戻れないまま終わるというレースを五回は繰り返しました。
このコントローラーは呪われているのではないかしら??
悪霊が無数に取り憑いているのではなくて??
最終的にはあの辛辣な鈴香ちゃんが、
「あの、えっと、ほら、人には向き不向きがあるし。仕方ないよ」
(何で私、フォローしてんだろ……でもちょっと可哀想だしな……)
チーーーン。
理想と現実の違いを思い知らされ、私は灰と化しました。
いえ、けれどこのまま引き下がる訳にはいきません。
自宅を物置き呼ばわりし、ゲームすらまともに出来ないBBAで終わらす訳には……!
「す、鈴香ちゃん!もう一回、もう一回だけお願いしますわ!」
「え、ええ~……もういいよ……」
(すぐ勝つからつまんないし、そろそろちゃんとプレイしたいし)
「大丈夫、次は必ず楽しませてみせます!半分は走りきってみせます!!!」
「う、うーん……」
(何でこの人、こんな必死なんだよ~怖いよ~)
ハッ!!!
私としたことが、鈴香ちゃんを怯えさせてしまいました。
そりゃ今日初めて会った女に、血走った目で「もう一回……もう一回……」と迫られたら、恐怖にうち震えて当然です。
男ならば下手したら通報案件です。
挙げ句に、背後から思わぬ声が聞こえてきて。
「なんか盛り上がってるな~」
……ん?
んん!!??
こ、この声は、まさか……。
山田あああああー!!!
な、何と、山田と悠莉がいつの間にか立っておりました。
一部始終を見られていたようで、山田はクスクスと含み笑いをし、
(フフッ。有栖川さん、あんなにねだって。意外と子供っぽいんだな)
ガーーーン!!!
こ、こここれは、有栖川家の恥ですわ……!!!
ち、ちち、違うのです、私は別に、ゲームがしたいのではなく、その、鈴香ちゃんを楽しませたくて、未来の、義理の妹を、あ、あ、
「わ、私……そろそろ帰らなきゃ……さ、さようなら!!!」
場の空気に耐えられなくなった私は、猛スピードでその場を後に致しました。
山田と悠莉の呼び止める声を無視して、全力疾走しました。
※お知らせ
いつもありがとうございます!
恐れ入りますが家庭の事情により、しばらく休載することに致しました。
また余裕が出来次第、再開するつもりですが、いつになるかは未定です。
せっかくこれから盛り上がるところだったのに、心苦しいのですが……。
もし再開出来たら、その際はよろしくお願い致します!




