1-15 賑やかな生活の始まり (3/3)
あらすじ:
ヒールを習得した。それだけ。
現在地:
シルバーの家・地下研究室
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第3章:持続回復魔法の心得・下級
回復魔法は頼もしいが、ダメージを受けるたびに唱えていたらそれは時間の無駄。
では、次に''ヒールコンティニュエーション''について教えよう。
継続回復魔法の基本は回復魔法と同じだが、魔力を複数回に分けて込める必要がある。
目安は光が消えなくなるまで。
慣れないうちは時間が掛かるが、何回も挑戦してみよう!
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「だいぶ安直な名前だな⋯⋯⋯」
シルバーは杖を持って杖全体に魔力を少し込めた。
緑に光るが、少ししか込めていないのですぐに消える。
「それで、これを繰り返すってことか」
光が消える瞬間に魔力を追加で込めると、光る時間が増える。
これを繰り返していくうちに光が安定し、やがて光が消えなくなった。
「これがその目安なのか?」
シルバーはマネキン目掛けて杖を振った。
「⋯⋯⋯ヒールコンティニュエーション!」
シルバーがそう唱えると、マネキンが柔らかい緑の光に包まれる。
「もう出来たのですか?凄いですね」
シアンはその隣でチョコレートを食べながら見ている。
「私なんてまだ何も理解していないのに」
「⋯⋯⋯何を言ってるのかい君は?」
当然である。シアンはまだヒールコンティニュエーションの練習をしていないため、何も理解していないといわれても反応に困る。
シアンが自分で読みたくなさそうにするため、シルバーは魔導書を渡して椅子に座りシアンを見守ることにした。
しかし⋯⋯⋯
「⋯⋯⋯私、古代文字読めないんですけど」
シルバーは魔導書がすべて古代文字で書かれていることを忘れていた。
「読めないの?じゃあこれあげる」
シルバーは椅子から立ち上がって本棚から古代文字の辞典を取り出し、シアンに渡した。
シアンは期待外れだったかのような表情を見せるが文句を言わずに魔導書を読み始めた。
「えっと⋯目安は光が消えるまで、ですか。
⋯⋯⋯なんか、自我が凄いですね」
困惑した様子を見ながらもシルバーはマネキン相手に練習を続けている。
はずだったが⋯⋯⋯
「これぐらいの魔力を込めたら一回キャンセルして、少ししたらまた込め始めて⋯
⋯⋯⋯って何やってるのシアン!?」
「何が言いたいのかわかんない(迫真)」
シアンがシルバーに抱きついてきたため、魔力を込めるのをキャンセルするはずなのに魔法ごとキャンセルされた。
「せっかくシルバーくんに古代文字の辞典を貰って、これで読めるようになったのに今度は説明が下手なんですよ?
ひどくないですか?」
シルバーに甘えたそうな視線を送るシアン。しかも上目遣い。
「そう?僕からしたらわかりやすいと思うけど」
魔導書には感覚と理屈の両方が書いてあり、文字に従うだけで自然と使うことができるため、これはシアンの理解力がない。
「 」
「これ、結局僕が教えるやつ⋯?」
そして、シルバーは呆れながらも丁寧に教え⋯⋯⋯
「ヒールコンティニュエーション!」
﴾ 測定用マネキンAの身体が徐々に癒されていく! ﴿
シアンは無事にヒールコンティニュエーションを習得し、あとは回復力を見るだけになった。
「僕は1ターンで大体35とかそれぐらい回復してたけど、シアンはどうだろうね」
シアンは杖を両手で抱えてマネキンの様子を見ている。
「とは言っても、そこまで大差はないと思うよ」
「まあ、まだ下級魔法ですもんね」
下級回復魔法というのは本当に差がつきにくい。回復力が固定なのではないかと疑うほどに。
そのためほとんどの回復職系の人はすぐに中級回復魔法まで習得すると言われている。
「それで、シアンの方の回復力はどうだった?」
測定用マネキンAの体力変動のログを見ると、大体30前後といったところだった。
「まあ、シルバーくんとはそこまで変わりませんね」
シアンはそれだけ言って古代文字の辞典をシルバーに返した。
「じゃあ、この調子で中級回復魔法まで習得しましょう」
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第4章:回復魔法の心得・中級
それでは、最後に中級回復魔法の"ハイヒール"について教えよう。
とは言ってもヒールと同じであるため、詠唱をハイヒールに変えるだけである。
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「本当にそんな簡単でいいのか…?」
シルバーは疑いながらも詠唱を始める。
杖全体に魔力が行き渡り、緑色に輝くが、その光は消えてしまった。
シルバーの詠唱に問題は一切ない。それなら原因は………
「早く、練習しましょ♪」
シアンがシルバーに囁いてきた。
「今ね、すっごく後悔してるの」
「………どうしてですか?」
「シアンを椅子に固定する道具を作っておけばよかった。」
「ひどいです!!!」
これからはシアンの妨害を考慮しないといけないと考えると、シルバーはやる気が失われていった。
「…そんなにやる気を失って、どうしたのですか?」
シアンは今の状況を疑問に思っていた。原因が自分なのに。
「一旦チョコレート取ってくる」
シルバーは落ち着こうとしているのか、それだけ言って1階に戻っていった。
地下研究室にシアンが取り残された状態。何も起こらないはずもなく………
「いなくなっちゃいましたね………」
シアンは少し落ち込むが、それを取り繕うようにハイヒールの練習を始めた。
魔導書をシルバーと一緒に見ていたので方法はわかっている。
「じゃあ、杖全体に魔力を行き渡らせて⋯」
シアンは慣れた手つきで魔力を杖に込めて詠唱する。
「ハイヒール!」
﴾ 測定用マネキンAのHPが60回復した! ﴿
シアンのレベルはまだ10なので回復力が弱い。
「えっと⋯⋯⋯まだ使わないほうが良さそうですね」
弱いどころか最低回復力である。
「それはいいとして
⋯⋯⋯シルバーくんはいつになったら戻ってくるのでしょうか」
シルバーはチョコレートを取りに1階に戻ったのだが、まだ帰ってこない。
シアンは寂しいのか声色に元気がないが、それでも練習を続ける。
そして30分が経った。
「シルバーくん、何をしていたのですか?」
やっと戻ってきたシルバーに問い詰めるシアンの目はまるで浮気を疑う彼女のようだった。
「何をしてたって、チョコレートを取ってくるついでにシアン用に布団を出してただけだよ?」
シルバーはベッドで寝ているが、一応布団を置いてある。
しかし、本当に使わないため、押入れのかなりわかりにくいところにあるらしく相当手こずっていた。
「⋯⋯⋯それだけならいいんですけど」
そんな様子を見てシルバーは若干拗ねているシアンにチョコレートを差し出した。
シアンはチョコレートを捕食した瞬間に幸せそうな表情になった。
「やっぱり美味しい⋯(咀嚼音)」
「そういえば、今の実力でも問題なさそうな依頼があったけど、シアンも受けに行く?」
「えっ?私が一緒に行ってもいいのですか?」
シアンの幸せそうな表情が驚きに変わる瞬間は面白い。
「今日の17時ぐらいにギルドに向かうから、それまでに起きていればいいよ」
そういってシルバーはハイヒールの練習をする。
そうして魔法の精度を鍛えていき、気がつくと4時になっていた。
「じゃあ、そろそろ寝る?」
「そうですね。あとちょっとしたら太陽が昇ってきそうですし」
この周辺の地域では太陽が昇るのが少し早い分、太陽が沈むのも早い。
シルバーは片付けて地下研究室を出た。その後ろをシアンがついていき、寝室に入る。
「じゃあ、シアンはこの布団で寝てね」
「わかりました」
シアンは微妙に不服そうな表情を見せるがシルバーは気づかない。
シルバーはそのまま電気を消してベッドで仰向けになる。
「それじゃ、おやすみ。
⋯⋯⋯16時ぐらいに起きてくれたらチョコレートをあげるよ」
シアンの性格的に寝過ごしそうなので餌を垂らしておく。
「そんなこと言われなくても、ちゃんと起きますよ?」
それだけ言ってシアンは眠りに落ちた。
「本当に、この子大丈夫かな⋯」
シルバーは不安を抱いて眠りに落ちる。
「あれ⋯?私、布団で寝てましたよね⋯?」
シアンが起きると、シルバーの上にいた。
補足:ヒールコンティニュエーション
味方単体のHPを毎ターン10+MDFの20%回復する無属性の下級魔法。一度の最大回復力は50。
消費MPは12。継続時間は5〜8ターン。
補足:ハイヒール
味方単体のHPを50+MDFの50%回復する無属性の下級魔法。最低回復力は60で最大回復力は500。
消費MPは16。




