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氷の騎士団長は没落給仕の甘い香りに囚われる〜無味の凄腕騎士様が俺の手作りお菓子しか食べられず、激重な独占欲で溺愛してきます〜  作者: 水凪しおん


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エピローグ「溶け合う二人の朝」

 シーツの隙間から差し込む、柔らかな朝の陽光。

 空気中には微かな淹れたての珈琲の香りと、昨日焼き上げたパンの香ばしい匂いが漂っている。

 ルシエルは、自分を抱きしめる逞しい腕の重みで目を覚ました。

 隣にはまだ深い眠りの中にいるアシュレイ。

 戦場での険しさは微塵もなく、穏やかなミルクの味がする。


「……ふふ」


 頬にそっと指を滑らせた。

 すると寝惚けたまま、その指先をパクリと口に含んだ。


「ん……っ、アシュレイ様、起きてください。もう朝ですよ」


「……あと五分。いや、一時間だ」


 さらに強く引き寄せられ、胸の中に閉じ込められた。


「……朝食の準備があります。シュガーもお腹を空かせていますよ」


 足元で丸まった白い毛玉が応えるように身をよじった。


「……シュガーには、庭の小鳥でも追いかけさせておけ。今は、お前を食べていたい」


「もう、朝から何を……」


 顔を真っ赤にしながらも、その心地よい束縛に身を委ねた。

 没落してすべてを失ったと思っていたあの日。

 こんなにも温かくて甘い未来が待っているとは夢にも思わなかった。

 額に、鼻先に、そして唇に慈しむようなキスを落とされた。

 もはや言葉を必要としないほどの、深い愛の味。


「……今日のお菓子は何だ?」


 耳元で悪戯っぽく囁く。


「内緒です。……でも、きっとアシュレイ様が一番好きな味ですよ」


 幸せそうに微笑み、首に手を回した。

 窓の外では新しい一日の始まりを告げる鳥たちのさえずりが聞こえる。

 二人の朝はこれからもずっと、この甘い香りに包まれて続いていく。

 溶け合う心、混ざり合う熱。

 それは世界で一番贅沢で優しい、終わりのない物語。

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