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進軍⑥

 朝になった。


 さあ、いよいよ今日は領地を持つ魔物との交戦だ。領地を持つくらいだから野良の魔物とは比べ物にならないくらい強いのだろう。


 負けない。負けられない。


 だって俺は、俺の命だけではない。国民すべての命をせおっているのだから。




 拠点から少し歩くと、俺のではない領地に突入した。


 ここから先は、いつ襲われてもおかしくない。注意しておこう。


 念の為、マップを常時展開しておく。


 そこには大きな赤が未だ健在であった。


 


 そしてついに、その赤い点を俺たちの点がぶつかる。


 そこにあったのは、一つの城だった。その城は、黒をベースとしていて、異様な雰囲気を放っていた。


 まるで魔王城だな。



 俺はそこに足を踏み入れる。


「王よ」


 連れてきた軍隊から声をかけられた。


「私たちはどうしたらいいでしょうか」


 今のコイツラには危険だ。どんな魔物が現れるかわかったもんじゃない。


 それに、せっかくこの進軍で死者が出ていないんだ。ここで出すわけには行かない。


 それに、いつの時代も魔王討伐は選ばれた少ない人数でって決まっているからな。


「俺だけでいいよ。ここで待機していて」


「ですが・・・」


「正直、ここにどんな魔物がいるか検討がつかないんだ。ね? わかってくれるでしょ」


(我らがいても、王にとっては邪魔だということだな)


 リーダーはそう思った。本当は、ただ彼らのことを気遣っているだけだが、彼は自分たちが頼りないからだ、と勘違いする。


(我々も、せめてお供できるくらい強くならなくては・・・)



 

 意を決してドアを開ける。


 なかは、大きな部屋になっていた。


 

 なにか、いる。


 俺はその部屋の中心に何者かの気配を感じた。


 暗くて姿は見えない。


 俺が戦ってきた今までの魔物とは格が違うな。


 そう思わせられる。



 そして、その魔物は話し始めた。


「さあ、ようこそ我が主の屋敷へ」


 こいつがこの領地の領主であってるよな?


 だが、誰かの手下なのか?


「考え事している暇はありませんよう」


 その魔物はいう。


 すると、部屋の壁に備え付けてあったろうそくが点火される。


 そして魔物の姿が明らかになった。


 それは、虫の魔物であった。


 あれは、クワガタだろうか。その頭には大きな鎌が2つついていた。


 その紺色に輝く体は、硬い鎧で覆われているようだった。




 あれを貫通するのはなかなかに大変そうだ。ならば、魔法で突破するのが賢明そうだ。

 

 そう思った俺は、周囲の炎の塊を発生させる。


「グガガ。どうやらそれなりには魔法が使えるようだな」


 そう言うと、重心を前に移す。



 戦闘態勢だ。


 俺はそう思った。


 くるっ。


 

 そのクワガタは、龍之介に突進をする。


 だが、その巨躯が当たるよりも前に、龍之介は移動を開始していた。


 

 あ、あぶねえ。


 俺が加速を発動する前で良かった。


 加速は一度発動してしまったら、もう進路を変更することができないからな。


 そういう縛りがあるからこその、あの速さなのだけれど。



 そして、目前ではくわがたが通り過ぎていった。


 

次の瞬間。


ドゴン。


 爆発する音がする。


 

 成功だ。


 相手が突進してくることを感知した俺は、先程発生させた炎をその場にとどまらせておいたのだ。


 これで一方的に攻撃できる。



 そして、魔法を発動する。


「雷」


 

 空雲があつまり、そして雷が落ちる。


 しまったーーー。


 俺は致命的なミスをしていた。


 ここは屋内なのだ。


 屋外では圧倒的攻撃力を誇る雷だったが、こと屋内ではその威力は半減してしまう。


 なぜそれを思いつかなかったのだろうか。


 だが、俺がそう思っていると・・・



「ぎゃあああああああ」


 そんな叫び声が聞こえてきた。



 下を見ると、クワガタの魔物が感電していた。


 まさか、雷がこの城におちて、それがあいつにダメージを与えたのか?


 

「まさか貴様、このような火力の魔法をつかえるとは・・・」


 ごめん、それ威力が低くなったやつなんだわ。


「この地面からくる衝撃は、さては地面魔法だな」


 雷なんだわ。


「だが、この程度の魔法、我が主も使えるわ。せいぜい我をたおしていい気になるがいい」


 そういってクワガタは倒れる。


 うん、なんかごめん。


 だが、あいつは完全には死んでいないようだ。さすがはここの城を任されているだけある。なかなかにタフだ。


 性格は、残念ではあるが・・・。





 ここにきて新しい問題が生まれた。こいつの扱いである。


 個人的には、なかなか面白いやつだから殺したくはない。だが、ここの領地を奪わなくては行けないのも確かだ。


 俺が悩んでいると、気絶したそいつは起き上がってきた。


 そしてあたりを見渡す。


「なんだ、まだ殺してなかったのか」


 俺は自分の考えを素直に話した。


「そうか、お前はここの領地がほしいのか」


「そうだ。それにできることならばお前を殺したくはない。何かいい方法をしってはいないか?」


「それなら、我が貴様に領地を上げればいいだけのことだ」


「領地を上げる、とは?」


「そのままだ。知らないのか? 領地は、その領地の王を殺すか承認が得れれば得られるんだぞ」


 そうだったのか。それは知らなかった。


 なら、こいつに交渉をしかけてみるか。


「なあ、俺にこの領地をくれないか?」


「いいぞ」


「もちろんお前にはメリットも・・・、え? いいのか?」


「ああ。俺は一度負けたからな。敗者は勝者に従う。魔物に伝わるルールだ」


 なるほど。魔物にはそんなルールがあったのか。それは、なかなかいい文化だ。


 なんせ、人間は負けたとしても生き汚いからな。


 


 危ない危ない。サラリーマンだった頃を思い出してしまいそうだ。


 さてと、それじゃあこの領地をもらうか。


 マップを開き、今俺がいる場所を押す。


 すると、今度はかんたんに領地にすることができた。


『群馬県の統一が完成しました』


 よし。これでひとまずは大丈夫だ。群馬帝国の崩壊は延長された。


 すこしホッとしたな。


 すると、クワガタが話しかけてきた。


「それで、我は何をすればいい? 言っておくが、お前にずっと服従を誓うのは無理だぞ。なんせ我にはもう誓ったやつがいるからな」


「その必要はない。そうだな、ひとまずは保留だ。何もしなくていい」


 こいつが本当に信用できるかまだわからないし。それに何かいい場所が見つかったら任命しよう。


 だが、こいつはいつかもとの主のところに戻るんだ。あまり大事な役職にはつかせないほうがいいだろう。



「わかった。何かあったら言ってくれ。ひとまずはお前が主だ。命令には従うぞ」


「ああ、そうしてくれ。それと、お前、名前はないのか?」


「我の名前。それが、ガイムだ」


 ガイムか。了解した。



 こうして俺の遠征は大成功を収めた。


 魔物を連れて帰った兵士たちは少し怪訝そうな顔をした。だが、俺が頼もしい仲間だというと、少しは信用してくれたようだ。


 まだ仲良くなるには程遠いな。だが、少しずつ仲良くなっていけばいいのだ。



 こうして俺達は街に戻っていった。


 

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