進軍⑤
ざっざっざっ。
俺たちは森の中を進む。目的は魔物の討伐だ。
ふと俺がマップを見ると、赤い点が俺たちに近づいてきているのが見えた。
またか。
少しうんざりしながら戦闘の準備を始める。
旅立ってすぐの頃は統率も取れていなくて、魔物が一体現れるたびに大慌てだった。
村人たちはそれぞれ鎌や棒など、戦えそうなものを持ってきていたのだが、それでも戦いは初心者だ。陣形は大変なことになり、弱い魔物でも怪我をするものが多くいた。
だがそれも最初の話だ。だいぶなれた今となっては、俺が最初にあった狼も魔物くらい、かんたんに倒してしまう。
ここにつれてきて正解だったな。
俺はそう思った。
走行しているうちに、日が暮れてきた。深夜の行軍ほど怖いものはない。スキルを見ると、あと1日と少しはあるようだ。
どうやら、明日中に全部の領地を確保すればいいっぽいな。
俺は達成できそうで、すこしホッとする。
「みんなきいてくれ」
俺は大きな声を上げた。
すると、その場にいた2千人がこっちを向く。どうやら俺の声には過剰に反応するようにできているようだった。
こんど村人の生態についても詳しくしらべなくては・・・。
「今日の進軍はここまでだ。このあたりに拠点を作るぞ」
マップでいうと、目的の領地を持つ魔物まで8割ほどきた場所。そこに借りの領地を作ることにした。
と、そこで問題が発生してしまう。
拠点を作る、といわれた兵士たちだが、その全員が固まってしまったのだ。
それもそのはずだな。彼らはもとサラリーマンとか運転士とかだ。書類整理にはなれていても、拠点制作にはなれていないだろう。
さて、どうしたものか。
俺はなにかいい方法がないか考えながらスキルをいじっていた。
そこで、ふとあるものを見つける。
それは、龍之介のスキルの【軍事的編纂】、その軍事的演習だった。
これはなんだ?
いままで触れてこなかったが、文字通りに読めば訓練的な何かなのかもしれない。
俺は一類ののぞみをかけてそれを押す。
すると、俺の目の前には2つの単語が浮かんできていた。
兵士訓練、スキル取得
その2つだ。
兵士訓練はわかる。筋トレとかさせて兵士を鍛えるのだろう。だが、スキル取得とはどういうことだろうか。
俺はさらにスキル取得をおす。
こ、これは・・・。
俺がスキル取得を押すと、スキルボードには、なんとスキルツリーができてたのだった。
スキルツリー自体は対して珍しいものじゃない。俺もゲームで何度も見た。
だが、実際に現実で見るのは初めてだな。
そして、スキルツリーの下には、スキルポイントの欄が。
今現在、100ポイント溜まっているようだ。
俺はスキルツリーについて、再度分析をしてみる。
スキルツリーは3つの根本からなっていて、1つは軍事、2つ目は農業、そして最後に産業となっている。
今の状況で軍事以外の何かを選ぶ人はいないだろう。
俺はそう思うので、軍事のツリーをみる。すると、最初の取得できるスキルは、行軍知識Lv1だった。
なんと。これはちょうど俺がほしかったスキルじゃないか。
俺は少し感動した。
そして急いでそれを取得する。
その瞬間、俺のまわりにいた兵士たちに目に見える変化があった。
なんと、かれらから光が出てきたのだ。
こ、これはーーーー。
その光は数秒ほどで消え去った。
そして光が収まった。
そこには、すこし顔がいかつくなった人たちのすがたが。
「お、おい。大丈夫?」
俺はそのうちの一人に声をかける。
「ええ。大丈夫ですよ、だんな」
なんか、正確変わってね?
いや、もともとの性格がわからないからなんともいえないんだが。
これからは性格についても詳しく注意していこう。そう思う俺だった。
行軍知識Lv1を得た兵士たちの動きは機敏だった。
すぐにいくつかのグループを作ると、それぞれが木をきったり、キャンプを立てたりと、凄まじい働きをした。
そして1時間後には、仮拠点が完成するのだった。
その間、俺はというと、新しく発見したスキルタワーについて色々と試していた。
そのスキルタワーだが、俺がスキルを取ってしまったことによって、もともと持っていた100ポイントはすべて失われたようだ。
だから今は何もすることができなかった。
そしてそのスキルポイントを得る方法だが、これは、このスキルのもう一つの能力である、兵士訓練をすることでゲットできるのだと予想できる。
大体のスキルは一個のスキルで完結していることが多そうだからだ。
あくまでこれは俺の予想なので、間違っている可能性のあるが。まちがってたらごめんね。
さて、暇だ。
俺の目の前では拠点がどんどんできてきている。
この調子なら、なかなか立派なものができそうだ。
うん、俺は邪魔だな。
わざわざ俺を避けていっている兵士を見ると、申し訳なくなってくる。
すこしどこかへ行っているか。
そう思った俺は、製作中の拠点を離れる。
マップを見ると、近くに魔物が何体かいることがわかった。
建設中の現場に近寄られると迷惑だな。それに、このあと大型の魔物と戦うのは俺なのだ。俺自身の力も再確認しておきたい。
そういう意味でも、殲滅しに行こう。
俺は最初の赤い点にむかってあるき出した。
最初の赤い点は、くまの魔物だった。
まずは最初の試したいことだ。
「加速」
一瞬で加速すると、慣性をつかって腹パンを食らわせる。
くまがふっとんだ。
直線上に木々が押し倒されていく。
俺は追いかける。
「加速」
更に加速すると、ぶっ飛んでいるくまに追いついた。
今度は反対側からぶん殴る。
くまは体が耐えきれずに、俺が殴った点を中心として真っ二つになった。
うん、グロいな。
自分の力を確認するためだとはいえ、少しやりすぎたかもしれない。
まあいいや。
俺は切り替えて次に行く。
次は蜘蛛の魔物だった。
その体の周りにはいくつもの炎の塊が浮遊していた。
魔法を使える魔物か。ちょうどいい。俺の持つ、炎、雷系魔法の威力を知りたかったんだ。
ぐぎゃぎゃぎゃ。
蜘蛛が周りにあった炎を放出してくる。
「なんの」
俺は周りに炎を発生すると、それらを焼き払う。
そして、更に強大な炎を発生させた。
それに応じて、蜘蛛も温度をあげてきた。
炎が次第に、赤から青色に変わる。
ドゴーン。
炎同士がぶつかりあった。
勝負はあった。
だが俺も少し熱くなっていたらしい。
いつぶりだろうか、こんなに熱くなれたのは。
蜘蛛の亡骸をあとに、俺は次の魔物のもとへ旅立った。
こうして迫りくる魔物を倒していった俺だったが、ついに最後の魔物になった。
それはスケルトンだった。
見た目的にも強そうでないし、これは楽勝そうだ。
「加速」
俺は速度を上げると、近接戦にもちこむ。
そしてそのまま、その顔面を、なぐーーーーー
「オウヨ」
ーーーーーーーれなかった。
今、確かにこいつは、「王よ」といった。
この世界で俺のことを王と呼ぶのは一つの集団しかいない。
こいつは、俺の国民なのか?
そこで俺は思い出す。
スケルトンは、死んだ人間がなる魔物。
そういう設定の小説もあったはずだ。
もしそれが本当ならば・・・。
俺のミスで死んだ1500人。
その一人なのかもしれない。
わかってる。
こいつはもう魔物だ。だからもう国民ではない。
殺すべきだ。
俺にはできない。
俺はそのスケルトンを持ち上げると、少し離れた場所に連れて行くのだった。
鬱だなぁ。
この世界になってから、残酷なことが多すぎる。
人の命がかるすぎる。
だからこそ、なんとしても俺がこの世界をもとに戻す。そう決意した。
拠点に帰ってくると、そこには立派な建物ができていた。中にはもう家と呼べるものもある。
「すごいな」
俺は思わず声に出てしまった。
拠点が完成したら、あとは食事だ。
見ると、後方支援部隊の人が、みんなに食料を配っている。
うまく機能してくれて何よりだ。
俺も缶詰をもらって、食べ始める。
なぜだろうか、こういうところで食べる食事は美味しいのだ。




