サンドイッチ屋編 前編
「…客はぼちぼちだな……UNKNOWNを見る暇は少ないな」
彼は西村
一言で表すと、人間失格である
過去、コンビニで働いたがコンビニの店長が捕まり無職だった
だが今は、ここサンドイッチ屋「オルタネートハイウェイ」で働いている
このサンドイッチ屋では、自由さを追求した店であり
トッピングで自由なサンドイッチを注文できる
「すいません、注文いいですか?」
だが、その特徴は時に負担となる
「ランチセットAの、サイドはポテト、ドリンクはレモネード、トッピングはマヨネーズ、レタス、ハムを増量で、トマトを抜きで」
「は?なんて?」
この店はセルフレジを導入していない
口頭で、トッピング含め注文しなければならない
大量のトッピング注文を一度で聞き取るのは至難の業
「あの…ランチセットAの、サイドはポテト、ドリンクはレモネード、トッピングはマヨネーズ、レタス、ハムを増量で、トマトを抜きで、お願いします」
「…なんて?」
「ですから…いえ、もういいです」
客は帰ってしまう
客との距離が開くにつれ、西村の不愉快さも上昇する
(クソ店長がよ、なんでセルフレジ導入しないんだよ
あの客が冷やかしとしてカウントされて怒られるのは俺なんだけど)
西村は、店長に押し付けられた冷やかしカウンターシートに
苛立ちを籠めて正の4画目を書き込む
「はぁー、ったく、俺が行く店どれもこれもカスなんだけど、なにこれ」
西村はカウンターシートに書かれた正の字を消そうか考えた
しかし消すための消しゴムなどがないことに気づいた刹那、敵は現れる
「注文、急いでもらえます?」
そこには、眼鏡をかけたスラっとした見た目のスーツ服の男がいた
スマホをせわしなく操作しており、時間はなさそうだ
「注文をどうぞ」
「ランチセットビーサイドハアップルパイドリンクハアイスコーヒートッピングハタマネギマヨネーズトマトゾウリョウレタスヌキアボカドツイカ」
「は?もっかい言っ「言った通りに、早く」
(話通じねぇなこいつ、その言った通りがわからないから聞いてるんだよ)
「はいはい、じゃあ提供までお待ちください」
西村はキッチンに入っていく
西村の反撃はここから始まる
数分経ち、孔明の罠を仕掛けたトレーを持ち西村は客を呼ぶ
「番号18782の客ー?」
「お客様だろうがよ…」
客はトレーを乱暴に受け取り、そして罠に気づく
「おい!注文聞いてたのかよ!」
「はい?なんです?」
「おかしいだろこれは!」
客は、アイスコーヒーの入っている容器をつかみ
ふたを開け、逆さまにひっくり返す
しかし、地面はおろか、トレーの紙に一滴も液体は落ちなかった
「なんでコーヒーが入ってないんだよ!注文しただろ!」
諸葛亮孔明の策略の一つに「空城の計」がある
敵軍が攻め入る時、あえて城の門を開け放ち敵を迎え入れようとした
だが、敵軍はこれを「孔明の罠だ」と思い撤退を決意した
「ほかにも注文したもの入ってねぇし!」
西村は、孔明が何もない城を明け渡そうとしたように
敵となる迷惑客に、何も入っていない容器を明け渡した
「注文?受けた記憶はないけど?」
「は?しただろ!悪いのは耳か?頭か?」
「上司からモールス信号で命令を受けたとしよう」
「は?今はその話関係ないだろ!」
「モールス信号で受けた指示は出来ると思うか?」
「だから!関係な「出来るか聞いているんだけど」
「出来るわけないだろ!モールス信号とか知らないから!」
「お前の早口注文は、素人が聞くモールス信号くらい意味が分からないんだよ」
「お前店員だろ!そのくらい聞けよ!」
「魚は空を飛ばない、無理なものは無理、QEDとっとと回れ右」
「…クソが!!時間の無駄だった!!」
客は店を出ていく、顔には青筋が浮いている
西村は、くすねたアップルパイを食べながらほくそ笑む
「ありゃ、問題起こして減給秒読みだな」
西村はそう言い終え、アップルパイの包み紙を捨てる
本当に店員がする行動か疑わしくなるが、これでも一応店員である
「あんなにせかせかして、それを他人に求めたら嫌われるだろうな」
と、多分より嫌われている西村は独り言を言う
直後、店に誰かが立ち入る
(あークソ、客なんか来なきゃいいのに)
西村はだるそうな雰囲気を一切隠さず店に入った女の対応を始める
「えーと…シュリンプサンドイッチ単体で」
「はいはい、それじゃあ提供までお待ちくださーい」
客は、西村の態度で少し顔をしかめる
しかし西村はそんなこと気にせずサンドイッチを作り始める
しかしこの客も迷惑客だった
「番号FA94Uの客ー?」
「お客様でしょ…」
客はサンドイッチを奪い取り、サンドイッチの中身を見る
挟まれているものを見て、迷惑客は顔を赤くする
「ちょっと!なんでエビが入っているの!」
客はカウンターを叩き、西村にクレームを言う
「私エビアレルギーなんだけど!?食べたらどうするの!?」
「はぁ?馬鹿なのか?自分の注文したものも忘れたのか?」
「はぁぁ!?シュリンプでしょ!?エビじゃないでしょ!!」
「お前最終学歴は?」
「なんだっていいじゃない!!話をすり替えないで!」
「それじゃあ義務教育は?英語の授業寝ずにちゃんと受けたか?」
「だ!か!ら!今その話は関係ないでしょって!!」
「一つ聞くが、猫とキャットに違いはあると思うか?」
「話聞いているの!?シュリンプはエビじゃないってば!!」
「話聞かないのはどっちだよ、エビを英語で言うとシュリンプなんだよ」
「じゃあ最初からそう言いなさい!私はエビアレルギーなのよ!!」
「分かるかよ、じゃあお前は何も見ずに漫画の内容を言い当てられるのか?」
「キィィィーーー!!!そのぐらいわかりなさい!!」
「そんな心を読むようなこと出来たらこんなクソみてぇな店で働いてねぇよ」
「こんなのモラハラよモラハラ!!訴えてやる!!」
「自分の無知を他人のせいにするな、お前が知らないのはお前が悪い」
「死ね!!死ね!!死ねぇ!!!」
客はサンドイッチを投げる、西村はそれを軽々とかわす
「おっと危ない、これ暴行罪だろ、訴えるぞ」
「当たってないから無理に決まってるでしょ!!」
「未遂って知ってるか?」
「何!?造語症アピール!?うざいからやめて!!」
「結果的に失敗しても犯罪ってこと、捕まりたくないなら回れ右」
「もう知らない!!死ね!!!!」
迷惑客は、カウンターを一発蹴り店を出ていく
だが、その威力は軽く見てはならない
カウンターには大きなへこみができ
幾つかの備品は地面に落ちてしまった
「あーあ、壊していきやがったよ、これ最終的に負担するの俺なんだけど」
西村は、ため息を吐きスマホを触りだす
西村は決して、自分がメリットを感じないことをしない
掃除をしてきれいにしたとして、また荒らされるだけだろう
「ったく、マジでなんなんだよあの迷惑客ども」
西村はそろそろ勝手に店でも締めてやろうか考え始める
だが、それではこの状況は変わらない
西村はあることを思いつき、このサンドイッチ屋で働く
アルバイター全員に電話をかけ始める
計画を伝えると、全員その計画に参加するようだ
明日の朝、全員は集まりこの店から解放されるだろう




