コンビニバイト編 後編
「……これ、絶対AIだろ」
彼は西村 英城
コンビニアルバイトの分際で大胆なサボりを決行中
現在はスマホでUNKNOWNの投稿を眺めている
残念ながら、こんなんでも最低賃金はもらっている
突然、わずかな異臭を感じ取る
西村はスマホを下げ、臭いの発生源を見る
そこには、小太りでレンズが曇った眼鏡をかけている
そばかすもあり、謎の悪臭が漂う
一言で表すと、気持ち悪い人間だ
(クソ、今スマホ見てサボってんだから空気読めよチー牛)
西村のゴミクズさは相変わらずだ
「…何の用で?」
「あの…友達集め わくわく生活、パッケージ版10個ください!」
西村は顔をしかめる、口を開く度臭いが漂う
(チー牛だけなら見逃してやろうって思ったけど、臭いし転売ヤーじゃねぇか!)
「そんなに必要なんですか?転売しませんよね?」
「外にいる友達に配ります、転売なんかじゃないです」
「怪しいな…スマホ見せてもらえます?」
「嫌です、プライベートですよ?」
「転売目的のやつに売ると店長がうるさいから、従ってもらえます?
権利主張する前に義務果たせよ」
「なんでそんなこと言うんですか?
友達と一緒にただ遊びたいだけなんです、純粋な気持ちのどこが悪いんです?
あなたに止める権利ってあるんですか?」
「早口やめろ息が臭い、やましいことないならスマホを見せろよ
ていうかお前コミュ障だろコミュ障、9人も友達作れんのかよ」
「なんでなんでなんで!?
みんななんで僕が悪いっていうの!?何も悪くないのに!?」
「はいはい暴れない、ネットミームになるぞ
お前は頭が悪いな、一人に商品を集中させたら需要と供給のバランス崩れる
そもそも普通の人はそんなにゲームソフトを買わない
そんなのもわからないなら来世に期待、この世からグッバイしろ」
「なんでなんでどうしてどうして………(ぶつぶつと何かを言っている)」
「えぇー??よーく聞こえませんね
もっと大きい声でしゃべってもらえます?出来るもんならな」
「意地悪!!仕事辞めろ!!」
「大きすぎ、だからコミュ障って言われんねん、テストの問題
記号で答えるのにわざわざ名前とか書いて失点してそう
会話に対する理解力が低すぎ、もっと会話しろ
勉強してもテストの点数低いよな、それは文章ばかり見て
意味を理解しようとしないからだ」
「なんなの!!なんなの!!どうして!!」
「お前何歳だよ、最終学歴は?年長さん?
子供のように騒いでいいのはボケた老人と子供だけだよ
お前のような奴騒いだって人が離れるだけだ
お前の相手限界、殺しの我慢も限界、嫌なら回れ右」
「う、うわああぁぁぁぁ!!!」
転売ヤーは泣きわめきながら店を出る
おそらく誰かに通報されるだろう
「……俺、もう限界だわ」
メンタル強靭、態度は狂人、だけれど忍耐力はフロッピーディスクの容量レベル
仕事初めて5日目、ついに辞め時が来たようだ
時刻は深夜、店長の無茶ぶりで詰め込まれたシフトも終わりを迎える
スマホを触っていれば、店長はやってくる
「おい西村、ちゃんと働いているか?」
「ほどほどに」
常識知らずのコンビニでの最終決戦
いざ、開幕!!
「ところで店長、話がある」
「なに?手短に」
「本日をもって辞めます」
「………ッチ、今の時刻は午後11時40分、あと20分遅ければ」
「じゃあ辞めるって伝えたんで」
「辞めていいって誰が言った?理由は?」
「…ッチ
カスハラ多すぎ、もっと対策してくれない?
給料も割に合わない、ここ最低賃金じゃん
条件悪すぎ、なんでこれで働かせられると?
昨日だってバイト一人飛んだじゃん、これが証拠
ここが地獄の一丁目っていうことの」
「…はぁ
対策は無理、エスパーじゃないし
金なんかない、もらえるだけありがたいだろ
求める前に、まず働いて
バイト飛ぶのはそいつが悪い、はい論破
お前に辞める理由はない」
「現状維持すんな、改善しろよ
まずはカスハラをどうにかしろって
このままじゃ俺も飛ぶぞ
たかがアルバイトに重荷課せすぎ
わかったら借金してこい」
「改善できない、金がないから
カスハラはお前がどうにかしろって
このままじゃ店が潰れる
俺に何もかも求めすぎ
借金はお前がやれ」
「この店に、忠誠心はない
俺が借金する道理はない
もはや働く意味も理由もない
こうなったのはお前のせい」
「お前には、常識がない
俺が教育してやる道理もない
もう金を払う意味もないか?
他責の前に、反省しろ」
「そもそも深夜手当もない
制服も自腹だし謎の天引きもある
ここに法律は?普通にないな
そもそも退職を引き留めるな」
「だからなに?訴える気?
証拠なくせば心配はない
会話を録音?普通に消すわ
お前は一生俺の奴隷」
「もしもし警察?今すぐ来てくれます?
これまでの話、全部つないでたから
筒抜けで笑う、お前の政権も終わり
嫌なら回れ右」
「いやいや警察?普通に卑怯だろ
警察来たって、証拠ないから
間抜けで笑う、お前の虚勢も終わり
嫌ならレジ戻れ」
「もしもし、こちら警察です、普通にパワハラだから逮捕ね」
店長は警察に腕を捕まれ、手錠をかけられる
西村は、勝利を確信したように笑みを浮かべる
「西村、貴様ぁ!!」
「へっ、全部時間稼ぎだよバーカ」
赤いランプの乗った白黒の車に、店長は乗せられ遠くへ走っていく
西村はまたしても、職を失った
しかし、焦る様子も特段見せない、なぜならこれが日常だからだ
「次はどこの店に就職しようか」
西村はしれっと店の高そうな物を手に取り、帰路に就く
だが、その顔はぎちぎちに詰められたブラックシフトをこなした人間とは思えない
清々しくわりかし顔色はよかった
「やっぱ、労働ってクソだわ、でも親がうるさいしな…」
深夜0時、空を見上げても星は見えない
だが、その青い暗闇は不思議な魅力を感じる
たとえ、どんなゴミクズであろうと、しぶとく生き残る
西村の狂気的に強靭なメンタルには、傷一つ付くことなく次を見据えている
西村はいつか、定職に就くことはあるだろうか
それは分からない、だけど…
「まぁ、生きられるならなんでもいいか」
…あ!ちょっと!セリフ泥棒ー!!
コンビニバイト編 END




