博物館調査完了だよねー
「とりあえずバックヤードにずかずか入ってるが、資料室ってどこにあるんだ?」
この博物館はそれなりに大きく、部屋をいくらまたいでも資料室に到着する気配がない。
「資料室は地下とかにあるかもしれないね。」
「俺もそう思うぞ。下の方から古臭い匂いがするからな。」
「なるほどね。」
ノイルとトレットの意見を聞いてハクは地下に向かうことにした。
特にノイルの嗅覚には信頼と実績がある。
地下への入り口は意外にもすんなり見つかった。一度壁を通過することをやめて、素直に通路を歩いていたら広間に出て、その中心に螺旋階段があった。
「こんな言い方をしたらなんだけど、従業員スペースにこんな広間必要かな?」
ハクは中心にある螺旋階段をなでながら話す。
「そうね、用途は特に思いつかないけど、そういうオフィスデザインなんじゃない?」
エルミラはいつの間にかハクの背後にいて返事をしてくる。
「それだけだといいけどな。とりあえずは地下に降りるか。」
ハクたちは地下に降りた。階段を降りると、急にノイルがハクの前に立ち片手を伸ばして、一同をその場にとどめる。
「これは・・・赤外線センサーかな。」
ノイルは目の前を見つめながらそうつぶやいた。
「なるほど。ZERO。」
『かしこまりました。』
ハクはZEROをカメラに連動し、カメラで通路を撮影する。
「結構複雑にあるな・・・。」
そしてそのまま無視してハクはまっすぐに歩いて行ってしまう。赤外線センサーに当たりつつも全く反応を示すことはない。
「そうか、相変らず魔法が便利すぎて怖いね。」
「ていうか意味がないのをわかっていてなんで確認したんだ。」
トレットはまた後ろ足で頭をポリポリとかいた。
だがノイルの言った通り、意味をなさないだけで確かに警備が厳しくなっている。つまりはこの先に何か重要なものがあることを示しているのだ。
「これはあたりかな。」
通路を進み、角を何個か曲がった後に、急に大きな鉄製の扉が現れた。
ナンバーロックがかかっていて、かなり厳重な警備がなされている。
「この扉なんだけど、アンチマジックが発動しているみたいだ。」
ノイルはいつの間にか何かを調べるように扉に触れていた。
「なるほどな、この扉には魔法が使用できないのか?」
「そういうことだね。かなり特殊な金属がないとできないから、こういった非常に警備を厳重にしたい箇所意外にはないけどね。」
「それと鎧などの細かい加工ができるような金属ではない。こういった扉のような単純な加工しかできない・・・違うか?」
「いや、その通りだけど、でもなんで?」
ノイルはハクの方へ振り向いた。
「ついているカギだよ。同じ金属じゃない。」
「う~ん僕にはよくわからないけどよくわかるね。」
「昔の仕事柄、こういうのを開けることもあった。どんなに硬い金属を使おうとも鍵だけは複雑な加工が必要になる。そういった場合鍵に爆弾をしかかけて破壊、侵入成功。以外に厳重な警備にこそ必ず穴はあるものだ。」
ハクは昔を懐かしむように顎を撫でた。
「さて、こんなところで話していても仕方がないし、さっさとここに入ろう。」
「ハク、さっきも言ったけどこの扉はアンチマジック仕様なんだ。この扉には魔法がきかないんだから、これまでみたいにここを通過することはできない。」
「いや、これまでみたいにここを通過することができる。」
「でもこれまでは魔法を使用してたんだからここは通過できないって。」
ハクはそのまま歩いて行ってしまう。そして金庫の扉をいとも簡単に通り抜けてしまった。もちろん扉を開けたわけではない。
続いて、エルミラ、ノイル、トレットも扉を通り抜ける。
「俺はこの中では一番古参だぞ、だから警告しておくけどいちいちハクのやることに驚いていたら身が持たないと思うぞ。」
トレットは優しくノイルに声をかけた。
「ここが資料室か・・・。薄暗いな。」
「ここにも結構センサーがあるからあんまり不用意な行動をしないほうがいいと思うよ。」
ノイルが壁などをを見てそんなことを言う。獣だけあって、そういったものには敏感なようだ。
「なるほど。残念ながら俺の魔法も万能じゃない。これ以上の透過は危険だから、慎重に調べていこう。」
この部屋は壁面のすべてが小さな引き出しになっている。それぞれに何が入っているかは不明で番号管理されているようだ。入り口付近にはPCがあり、通常はこれでそれぞれの引き出しのカギを解除するのだろう。中心には大きな机があり、必要な時にあそこに資料を広げるのだろう。
「監視カメラがあるのが結構面倒だな。古典的だけどあれにこの部屋の画像を貼り付けてごまかすか。」
ハクは携帯を取り出して部屋を撮影した。もちろん携帯も透過していて、監視カメラに映らない。
「トレット、リアムからもらっておいたやつを出してくれ。」
「了解。」
トレットはハクの手に触れるようにして、慎重にプリンターを取り出した。サイズは手のひらサイズで、かなり小型化されている。
余談だが、ハクはリアムとこまめに電話するようにしている。こういった時のためにハクが必要だと感じた道具を制作してもらっている。それを受け取るのは非常に困難だが、ZEROを使用してリアムとコンタクトを取りたまに目的地に先に届けてもらっている。受け渡しはクローンが行っている。
ハクは先ほど撮影した画像を携帯画面に表示させ、その小型プリンターの上に置いた。
直後プリンターから撮影された写真が出てくる。
ハクはその写真をプリンターから受け取り、監視カメラの近くまで寄っていく。
そしてここからは力技だった。
ハクはごく普通の人間では確実に見ることのできない速度で、監視カメラに写真を張り付ける。
監視カメラを見ている人はいつの間にか見ている映像が画像になっていることに気付いていない。
ハクはPCまで近づくと魔法を使う。以前イズラで使用した魔法、【トレース】で読み取ったPC内の情報を脳内に直接転送する魔法だ。
ちなみに後にアリアに聞いたところ、この魔法の名前は【エクサミナーラ】という魔法らしい。
ハクの指先から、触手のようなものが伸び、PCに接続されていく。
「なるほど、大体引き出しの中身はわかったよ。たぶん俺らの目的は115番の引き出しに入っている。」
ハクは引き出しに手を伸ばすとそのまま引き出しの中身を取り出した。もちろん席の方法ではなく、魔法を使って通り抜けさせたというほうが正しいだろう。
「これがこのマリトルムを発見した当初の発掘品のリストだ。」
ハクはそれを机の上に広げた。それぞれにリストをみつめている。
「これと・・・これ・・・これも上で見たな。でもこれは・・・。」
「そう・・・だね、間違いないと思う。もしもここに書いてあるすべてが発掘品なら、上にあったのはその中の1パーセントにも満たないんだね。」
「つまりはこの博物館がやけに大きい理由は、それらの発掘品を展示するだけではなく、管理・保管するただったみたいだな。」
リストには膨大な量の発掘品が記されている。展示品はその中のわずかなものだったらしい。
「ハクはまだ見ていないから、知らないかもしれないが上にある展示品のほとんどはかなり質のいい魔法具だったんだ。」
「・・・なるほどな。もしもリストにかいてあるほとんどが魔法具だったらかなりの利益だな。」
ハクはこれらの発掘品のいくつかがブラックマーケットで売られていることを想像したが、さすがに頭の中でそれを否定する。
ハクたちは数分間しっかりと目を通してしっかりとリストを確認した。
「魔導書・・・は確かに発掘されているようだな。」
「そうだね。」
エルミラが返答した。
「問題はその魔導書が名前ではなく番号管理されていて、複数あるってことか。」
ハクは頭を抱えて天井を見上げた。
「たぶんそれぞれの魔導書にそれを調べた結果の調査書みたいなものがあると思う。実際さっきPCに接続した時に似たようなものがほかにもあった。○○の調査書みたいのがな。」
「確かに古代の超文明が残した魔導書なんだ。調査する価値は大いにあるだろうね。」
「ちなみに先ほどPCを調べたが、ここにはどうも調査資料はないらしい。この国には研究機関が別に設けられていて、そこにそれらの資料は保管されているみたいだな。」
「なるほど。とりあえず次はそこに行かないといけないみたいだね。」
ハクは最後に写真を回収して、一同は博物館を後にした。次は研究機関に行くことになるようだ。




