あしがかりだよねー
とりあえずここまで来たが、特に変わった場所はないな。大事なのは人の流れかもしれないな。
ハクは下着屋から出て後、中心付近にある建物に上り周囲を観察していた。
ちなみに完全に進入禁止の建物に上ってしまっているので、【ディオス・ヴァキオ】を使用して屋上から観察している状況だ。
人の流れにも怪しいところはないな。別の空洞の入り口は何らかの建物がカモフラージュで覆いかぶさっている可能性が高いかもな。
ハクは単なる噂かもしれない情報を完全に真実だと確信していた。その理由は簡単で、真理の魔導書シリーズであればそれは可能だからだ。
こういった高所から見ると、この国、マリトルムは本当に面白い。まず地下空間だというのに、しっかりと野菜を栽培している地域もある。太陽光などをどうごましかているかはわからないが、魔法がそういった問題点を解決しているのだろう。ほかに考えられる可能性としてはそもそも太陽光を必要としない植物を育ているとか。
「やっぱりいろんな人に聞いてみるしかないのかな・・・。」
バラモの言っていたことを完全に信じるのであれば、情報収集するには闇社会の人間と関わらなければいけない。はっきり言ってそういった人種と関わることはリスクこそあれど、メリットはほとんど見込めない。ハクはそういった人種に聞き込みをすることは気が進まなかった。
ハクはしばらく屋上から地上を観察している。
「普通だ・・・どこまでも人の流れが普通で何もヒントが見つからない。」
ふとハクは視点を変えて観察することを思いつく。そう、人の流れではなく建物の配置だ。
バラモの話を考えると、もしかするとこの空洞にあるほかの空洞への出入り口は一つではない可能性もある。噂話なのだから、真実はいまだに不確かなのだ。ハクはまず先入観を捨てる努力から始めた。
そして建物に着目する。
「普通にごく一般的な建造物なんだよな。一軒家みたいなものというよりは、アパートみたいな建物が多いな。それ以外は特に違和感は感じない・・・、いや待てよ。」
確かに建物の配置には違和感がないように思える。だが道路の方には違和感がある、まるである一か所に人間が入り込むのを避けるような配置になっているな・・・。
・・・だがもしも俺の推測が正しいと慣れば、ブラックマーケットに国が関与しているということになる。世界協定なんのそのって感じだな・・・・。奴隷救出、厄介なことにならなければいいけどな。
まぁまずはブラックマーケットに踏み込んで、どんな感じか見てみないと何とも言えないな。
・・・面倒くさい。
ハクは高い建造物を飛び降りた、もちろん姿は消したままだ。
一度降りてから、人の目に気を使い姿を現す。今のところもしも怪しい箇所を発見しても突入する気はない。仮に入るとすれば全員一緒がいいだろう。
「さて、ここまで来たが上から見た感じ、この先に行く道路は存在しないはずだ。」
ハクは周囲を観察して、とりあえず怪しい所がないか調べる。
とりあえず建物とかに不自然なところはないな。もしかすると、この中のどれかの建物が入り口になっている可能性はあるが・・・。
次は人を観察するか。
ハクはもしもの時を考え、自分に【ディオス・ヴァキオ】をかける。もちろんこのまま建物を突っ切る手もあるが、正攻法で行くのが何事も一番安全なのでそれは避ける。特に裏社会ではハクの一つのミスで命を狙われかねない。最初から奥の手を使用するのはNGだ。
透明人間状態のハクは普通に突っ立いていても誰も気づくことがない。周囲の人間はハクに気づくことなく、その周囲を通り過ぎる。
この場所を観察し始めて気が付いたことがいくつかある。
それに思いのほか人が歩いてくる、先ほど上から観察したところ人は少ないと思っていた。この通りには人をうまく寄せ付けない仕組みが出来上がっているはずだと考えていたのに。・・・そうか・・・なるほどな。
ハクはもう一度何かを確かめるように周囲を確認した、そしてその後何かに気づいたように方頬を持ち上げる。
ハクはそっとその場魔法を解いた。
「そうか・・・そういうことだったのか。網にかかった魚は俺の方だったわけだな。」
「残念ながらそういうことになる。」
ハクの背後にいつの間にか男が立っていた。
「非常に微弱だが、空間にゆがみがあった。ここには魔法師が数十人いて、常に最高レベルの完治魔法が敷かれている。完全にごまかすことは不可能だ。」
男の声がするとともに、先ほどまで普通に歩いていた人たちが陽炎のように消えてしまう。
「いやはや完全にごまかせる魔法だと信じていたんだけどな。お前みたいな弱そうな男にばれるとはな。」
男はにんまりと笑う。
「あまり強がらなほうがお前の身のためだぞ。今俺はお前の後ろに立っているんだ。俺のことが見えるはずがないだろう。」
男は腰に下げた短剣に手を伸ばしている。
「例えば思い通りに動いたのは俺の方ではなく、お前の方だとすればどうだ?」
男は一瞬で短剣はハクに突き刺した。
「これでもそういえるか?」
男はまた下卑た笑みを浮かべる。ハクを殺したと確信してにんまりと笑っている。どうもここを見つけたものはすぐさま殺すようになっていたらしい。
「まぁ余裕で言えるわけだが。そもそも勘違いしないでほしいが、俺は俺があの場所にいることをお前らに気づかせてやっただけだ。」
ずらされた次元によるハクの幻影がその場から消え、男の真横からハクが現れる。
「・・・ッ!?くそぅ!死ねいっ!」
男は今度はハクの真横へと短剣をふるった。ハクはそれをかわそうとはせずに、短剣をつかみ取る。
「少なくともお前じゃ俺を殺すことはできない。この無駄なやり取りを続けるのはあまりに気が進まない。」
ハクはこの後のことを考えてまた億劫な気持ちになる。
正直ブラックマーケットに侵入するまではこういう手荒な手は避けたかったんだけどな・・・。でもこの手がかりを逃す手はないからな・・・。
「どうだ?俺も別にお前らに害をなそうとしているわけではない。ただちょっとブラックマーケットで品物を探したいだけなんだ。むしろお客様だぞ?」
男は悔しそうな顔でハクのことを睨みつける。だが今度は男とは別の女が現れる。
「うん、お前の言っていることには一理あるね、お客様だというのであれば争うのに意味はない。こっちは世界協定に触れているからさ、警戒もするよ。」
随分と姉御肌の女だ。身のこなしから只者ではないことはすぐにわかった。例えばこの男と同じあしらい方をしたいなら、ハクもある程度力を出さないと無理な程度に。
女は赤髪をボブにしている、その瞳まで赤く、まるで炎のような女性だ。スタイルは抜群で胸元の空いた革制の防具を着ている。下はタイトな白いズボンだ。それに背中に紅蓮のマントを携えている。
「・・・今日はもう帰る。次にまたここに来た時、今度は良心的な対応をしてくれることを祈るよ。」
「あたいの名前はゾーイ、ただのゾーイだ。次来たときはその名前を言うといい。」
ハクは静かにその場を後にした。




