釣りなーの
ティナと模擬戦を行ってからしばらくたち、エティエンヌもリアムの基地に帰ってきた。
結論からいうとやはりこの地に本部を置くことがベストだと考えたらしい。
これからイズラの情報を今の本部、ディアスゴルトに持って帰り、本格的に協議を開始するそうだ。
そして世界を救おうとしている事情をエティエンヌと相談したおかげで協力もしてくれる。これからはリアムの驚異的な情報網と、インベスティガの情報網の両方が利用できそうだ。
ここまでのメリットを持ち帰れるとは思っていなかったので、ハクとしてもうれしい限りだ。
明日朝にまたフライトを開始して、ディアスゴルトに一度戻るそうだ。
ハクもそれに便乗することになるだろう。
「リアム、俺は夜釣りに行ってくるから、この島は周りが生み出しな。てきとうなところで釣りをしてくるよ。」
ハクは夜釣りをしに外に出た。後ろにはトレットもいる。
夜だと視界に困るので、ハクはリアムから光を付けれる装備を借りた。懐中電灯というよりは、ランタンに近いものを貸してくれた。もちろん電機製で、とても明るいものだ。
最初にイズラに来た時の港に釣りに来た。
ハクは灯りを付けると早速釣りを始めた。
つい糸を垂らすと夜なので反応が悪い。
それでもハクはぼーっと海を眺めながら釣りを楽しんでいる。
「トレット、この世界はいい世界だな・・・。今はピンチだけど、こうしていると俺のいた世界とは違って時間の流れが非常にゆっくりに感じる。なんというか、田舎に泊まろうっていう気分だ。」
「そうだな俺もそう思うぞ。なんとなく田舎に帰省した時に似ている。」
「・・・なぁトレット・・・、やっぱりお前ってさ・・・・。」
「なんだ?」
「おっと!?ちょっと待ったあたりだ!」
ハクはリールを慎重かつ大胆に巻いていく。
引きはそれなりに強く、この島でのハクの一番のあたりになりそうな予感がした。
「来たっ!!!!」
ハクは一気に魚を釣り上げた。釣り上げた魚はマルミーバーだった。今回のサイズは30cmほどで、この魚の中ではかなり上等なサイズだった。
「いいサイズだ・・・、俺が魔法とか使えたらその場で焼けたりするんだろうか?そう考えると火属性魔法はかなり有用だな。」
ハクが変な考え事をしていると、トレットがハクの方を見る。
「さっきの話は何だったんだ?」
ハクは人差し指で頬をかきつつ答える。
「いや・・・やっぱり何でもないわ。ごめんごめん。」
「そうか。」
トレットはまた海を眺め始めた。とても人間らしい表情で。
そしてハクはまたそこに釣り糸を垂らし始めた。
「今度は何が釣れるだろうか?」
ハクがまた糸を垂らす。だが竿は言ったん地面に置いてしまう。仮に大きな魚がかかってもハクの超反応なら竿が海に飲まれる前に、キャッチすることができるだろう。
今回ハクが準備するのはさりげなく集めていたキャンプセットの内、ミニコンロで沸かして作るコーヒーだ。
小さなポットをトレットからもらい、それを身にコンロの上にのせ沸かす。
ハク湯を沸かしている間、隣で小型電動ミルを使用してコーヒー豆をガリガリと粉砕し始める。ちなみにこれはリアムに頼んだら快く作ってくれた。
次のあたりよりも早くお湯が沸いたようだ。
ハクは早速コーヒーを入れ始める。もちろんトレットの分も。
夜のイズラは少しだけ寒い。
このコーヒーであったまることができるのは幸せなことだ。
ハクとトレットが同時にコーヒーに口を付けて一口飲んだ。
「う・・・うまい。マスターの入れたコーヒーにはかなわないが、それでもこの寒さと相まってかなり美味いな。」
「あぁ・・・本当においしいぞ。」
ハクもトレットも夜風に吹かれながら、なんとなくコーヒーでわびさびを感じていた。
「・・・!?また来たぞ!!!」
ハクはリールを巻きまくる。
「ッ!?で、でけぇ!!!」
大物がかかったことにハクは思わずそのテンションを上げる。
「あんまり早く巻くと糸が切れますよ。」
「え・・・?あっ!?」
その忠告通り、せっかくの釣り糸はあえなく切れてしまった。
そしてそこにいたのは例のアリアじいさん、イライジャ・ホートルがいた。
「りっぱなマルミーバーが釣れているみたいですね。」
じいさんはいけすの中を見た。
ハクはすぐに残りのお湯でイライジャにもコーヒーを入れた。
「ありがとうございます。」
イライジャはコーヒーを飲む。
「こんな夜に出歩くのはあんまりおすすめできませんよ。」
ハクがイライジャに警告した。
「今日はね、夜散歩したい気分だったんですよ。」
イライジャがまたコーヒーを飲んだ。
「今日、私の家にね・・・娘が来ましたよ。色々変わっていて・・・驚きましたけど・・・久しぶりに会うことができて・・・嬉しかったなぁ・・・。」
海を眺めるイライジャの瞳から雫がこぼれる。
「そうですか。」
ハクはあえてイライジャの方を見ずに、海を眺めている。
「今度ね、娘と一緒に暮らせるかもしれないらしいです。新しい職場がこちらに来るらしくて。」
「そうですか。」
海の音だけが、この静かな空間に静かに響く。
イライジャはまた震える手でコーヒーを飲むと口を開く。
「ありがとう、私との約束を守ってくれて。辛い病気にもなったけど、生きていてよかった・・・。」
ハクはまた竿を海にふるう。
「そうですか。それはよかった。」
ハクは特に多くを語らなかった。
いつの間にか竿には当たりがあり、大物が釣れた。




