竜人なーの
カフェを出てハクはリアムの基地施設に戻ることにした。
その後リアムの基地施設にたどり着くと入り口すぐにティナが待っていた。
「ハクさん、昨日のバルドとの戦いを見て思ったんすけど、一度うちと戦ってもらってもいいっすか?」
ティナはハクとリアムの施設を歩きながらそう告げてくる。
ハクはちらっとトレットの方を見ると、相変わらず興味はなさそうだった。
「俺は戦ってもいいと思うぞ。」
それでもトレットはそういってくる。
「おいおいトレット君あんまり無責任なこと言わないでよ、自分も戦うことになるんだよ?」
「おいおいハク君無責任なことは言っていないぞ。」
トレットは前を向いて歩きながら告げる。
「勇者との戦闘というよりも、竜人種と戦う経験をしておいた方がいい。旅をしていれば竜人と戦うこともあるだろう。非常にいい経験になると思うぞ。」
トレットはかなり真剣に言っていたようだ。
そしてハクもそれには一理あると感じた。予行練習はいくらしてもいい。今回はお互いに殺しあうわけでもない。
「はぁ~それにしても急だな・・・。わかったよ、一回だけだからな。」
ハクはこういいつつもトレットの新しい力を使用できることを楽しみにしていた。
それに今後の魔人たちはバルドの瞬間移動のように、何らかの能力に目覚めている可能性がある。そうなってくると、戦闘力増強は今後のためになると思えた。
余談だがハクはバルドが突然去ったことに関しては特に気になっていた。あのバルド有利状態から去るということは命の書の使用方法よりも重要なタスクがあると考えられる。そう、おそらくはほかの魔導書の確保に向かったのかもしれない。魔族との最終決戦があるとするのならば、そういった魔導書を使用されないことを祈るばかりだ。
「それじゃぁリアムにどっかバトルフィールドを借りようか。」
リアムに一度聞いたところ、この施設には戦闘フィールドが大量にあるらしい。あらゆる戦闘をシュミレーションするために作ったそうだ。
『勝手に使ってどうぞ。』
ハクたちが歩いていると、空からアナウンスが流れる。
「・・・ありがとう。」
正直勝手に監視しているんじゃないという思いが残るが。
天井の一部が開き、そこからこの施設の闘技場の地図が落ちてくる。
ハクはそれを拾い上げて中身を確認した。
「おいおい、本当に広いんだなここは・・・。とりあえずティナはどんな闘技場がいい?」
「うち的には森みたいなところがうれしいっす。」
「じゃぁそうしようか。」
「でもそれでとハンデ・・・というよりはうちへのアドバンテージになるっすよ。それでもいいんすか?」
ティナハクの方をちらっと見る。
「問題ない、そのほうが楽しめそうだ。」
「うちにそんななめた口を利くのはハクさんくらいっすよ。後悔しないでほっしいすね。」
ティナはハクのほうをじろりとにらんだ。
「まぁ気にしないでくれよ。」
ハクは若干ティナを侮っているのかもしれない。
そしてティナの言った通り、フォレストフィールドに向かうことになった。
あまりの施設の広さに少しだけ戸惑ったがすぐに辿り着くことができた。
確かにフィールド内は木が大量に生えている。それもその木々は非常に太く、大の大人が手をつなぎ周囲を囲むとしたら、5人は必要だろう。
「うん、いい感じっすね。うちが得意な感じっす。」
フィールドを見てティナが何度もうなずいている。
「それじゃぁ準備とかなければさっさと初めて行こうか。」
ハクはいつの間にかトレットを装備した姿になっていた。
「わかったっす。うちの恐ろしさを教えるっすよ。」
戦闘フィールドのほぼ中心と思われる箇所まで行くと、ティナは両手を宙に広げるように伸ばす。
するとティナの両手の指先から肘にかけてゆっくりと侵食するように黄金のガントレットが装備されていく。
完全に両手に黄金のガントレットが装備された瞬間、拳を作ってそれをすさまじい勢いで合わせた。
周囲にドガンッという大きな音が響く。
大きく空気が振動して、ハクの体を揺らす。
「へぇ・・・思ってたよりは強そうだな・・・。かかってこい。」
「言われなくても行くっすよ。」
隕石がごときすさまじさ、威力をそのままにティナがハクに突進する。
そのまま右手をハクに向かって振りぬいた。
ハクは片手を正面に出して、それを受け止めた。
再度すさまじい音を響かせ、ハクとティナの周囲にクレーターを作り上げた。
ハクはそれを無視してティナに上段蹴りを見舞う。ティナはそれを右手を左手で支えて、顔の横に立てて何とか受ける。
だが蹴りの衝撃で最初に上段蹴りを貰った位置から、随分とずれてしまった。
ティナが手を下ろすと口の横にあざができていた。
「なるほど、ガードをしてもこの威力っすか。」
「俺も随分強くなったからな。」
ティナは口元をニヤつかせる。尋常じゃないほどおもしろにしていた。
「もうずいぶん人間相手に全力だしていなかったっすけど、ハクさんなら大丈夫そうっすね。」
ティナの周りから黄金のオーラがあふれ出る。
いつの間にかティナの口の横にあるあざは治ってしまった。
「おいおいトレット君、怖いね・・・あれが竜人の特性なのか?」
「おいおいハク君、あれだけじゃないが、あれもそうだぞ。」
ハクがティナの方を見ると、またティナがハクの方へと一直線で進んでくる。
だがその途中で直角に木の方へと飛び上がり、そのまま何度も木々を跳躍してハクの視線から逃れようとする。
事実ハクがそこら辺の兵士だったら余裕でそれはかなっただろう、だがハクにおいてはそれを軽々と目で追っている。
ハクはあえて一瞬目をそらすと、そのすきにティナが一瞬で飛び込んでくる。
今度は回転しながら、かかと落としをしてきた。
ハクはそれすら片手でうけとめてみせる。だが先ほどのクレーターはさらに深くなってしまった。
「これじゃ俺事埋まりそうだからそろそろ俺も動き出すか。」
ハクが片手を振り上げると、そのまま後方へとティナが吹き飛んで行った。
吹き飛ぶティナに一瞬で追いつくハク。
そのままティナに鉄壁でさらに強度を増した手刀を振り下ろした。
ティナは咄嗟に胸前に両腕をクロスし、それをガードする。
だがティナの予想を裏切り、衝撃は後ろから来た。
ハクはティナを蹴り上げていた。
そしてティナは真上に打ちあがってしまう。
ハクがそれをさらに追おうとして膝を少し曲げようとした瞬間に、空中でティナがハクの方を振り返った。
いつの間にかティナのガントレットは黄金に輝いていた。
ティナが拳をハクに向かって振り下ろすと、黄金色に輝く、光の柱がハクのもとへと降りる。
ハクは今度は両手をあげてそれを鉄壁で防ぐ。
だがそれがティナの狙いだったようだ。いつの間にかティナがハクの目の前に降り立っていた。
「うちの勝ちっすね。」
ティナの拳が黄金に輝き、またハクを焼き尽くさんとする。
ティナの拳がハクに接近する中、ハクはにんまりと笑った。
ティナの拳が振りぬかれるとすでにそこから消えていた。
ハクがそっとティナの頭に手を乗せる。
「俺の勝ちだと思うけど、どうかな?」
ティナが正面を向いて姿勢を変えずに笑った。
「そうみたいっすね。瞬間移動にはなれないと早々対応できそうも無いっす。」
ティナはゆっくりと振り向くとハクに手を差し出し握手を求めてきた。
ハクはそれを握る。
「これからはうちの目標はハクさんっす。定期的に会いに行くんで戦ってくださいっす。」
「おい、仕事はどうするんだ?」
ティナは腰に手を当てて状態をのけぞらせる。
「強くなるのがうちの一番の仕事っすから!!!!!」
ハクは片手を腰に当ててうつむくと、大きなため息をついた。




