偵察なーの
あの交渉の後日、インベスティガ本部では会議が開かれていた。
薄暗い会議室では顔を確認することができない。
だが人の影は十人分あるようだ。
そのうちの三人はハクと会食をしたメンツだ。(エティエンヌ、アレクシス、ディクシー)
「それでは緊急会議を開始する。」
もちろん会議を指揮するのはエティエンヌだった。
「まずはこの装置を見てほしい。」
エティエンヌはハクが行った操作と同じものを装置にする。するとそこにZEROが投影されてある程度の情報を話す。
会議に参加した面々はそれぞれ、ため息を漏らすもの、驚嘆を表すもの、何か納得するようにうなずくものなどがいる。
「というわけでイズラを我々で管理することになった。メリットは今見てもらったも通りだ。」
エティエンヌはある程度の説明を済ませると、事実のみを報告する。
「ついては今後の方針ということであることを提案する。」
手に持ったコーヒーを一口飲むと、腕を組み、わかるかどうかぎりぎりだったが確かに口角を少しだけ上げ笑みを漏らす。
「皆の同意を取れればすぐにでもイズラに本部を移そうと考えている。」
この提案には驚くものがほとんどだった。
「会長、そこまでイズラにはメリットがあるんですか?」
この中では一番若い男が皆が気になっていることを代表して聞いた。
「おそらくは今私が提案した、利益はその発端に過ぎない。我々の軍事力、技術力、そのすべてを飛躍的に上昇させることができるだろう。」
エティエンヌは自信に満ち溢れた話し方をする。
周りもここまで純粋に自信をもって話すエティエンヌは初めてだったので、目を見開いた。
「だが証拠も無しにはその提案に乗るのは難しい。我々も一応組織の中でそれなりに重要な立場だ。下の者にもそれを自信をもって伝えられなければならい。会長の読みという情報材料だけで組織の進路を決めるには我々は大きくなりすぎた。」
年老い、老獪そうな男が口を挟んだ。
「なるほど、確かにその通りだな。本来はシンに体に直接仕込んでおいた、録音器具にすべての音声が入っているはずだったんだが、なぜか壊れていてな・・・。」
ハクがシンの体から取り出した、小さな機械はどうも発信機だったらしい。すでにハクの手によって破壊されてはいるが。
そしてこれに関してはエティエンヌはリアムの仕業だと考えている。一度だけシンが魔法をかけられて操られていたことはシンから報告を受けていたので、その時に何かされたのだと考えていた。
「だから今度私が単身で視察してみようと考えている。」
全員が目を見開いた。組織のトップがまだ完全に安全だとは思えないところに視察に行くというのは常識からは考えられないことだ。
「おいおい正気ですか?」
先ほどの若い男が冷静に止める。
「問題ない。私もそれなりに戦闘を積んでいる、それにこれから本部にしようとしているところを私が視察せずにほかに誰がする。」
もっともな意見だ。
「それはイズラを完全に本部にすると確定した場合でも遅くはないはずだ。まずは下の者を派遣してその情報を得ようではないか。そもそもイズラはこの大陸の隅っこの孤島だ。本部にするには、いささか不便ではなかろうか。」
また老獪そうな男が口を挟んだ。
そしてこの意見も正しい。実際にこのディアスゴルトはほかの国に行くのであれば、かなり立地がいい。
「ふむ、実は一時視察は済んでいるんだ。今イズラにはアリアがいる。彼女がある程度の情報をこちらに流してくれている。だが実画像を送ろうとすると、リアムに止められスそうだ。あの国にいる限り、密かに情報を流すのは不可能らしくてな。だから、直接行く必要があるのだ。」
ここで周りは無言になった。
これは今までエティエンヌがインベスティガを大きくしてきた実績があるからだ。
このように自信があるエティエンヌが失敗したところを誰も見たことがなかった。
「なるほど、ではこの中から一人付き人を共に行かせればどうですかな?もちろんわしでも構いませんがね。」
先ほどとは別の老獪な男が提案する。
この提案のもと、みんな周りに目配せをして、譲りあっている状況だった。
ここまで大きな組織だと、管理業務もそれなりに忙しく、なるべくならほかのことをしたくはないのだ。
「うちが行くっすよ。万が一戦闘になった場合を想定するのであればそれが一番じゃないっすか。」
かなり見た目が若い、まるで少女のような女が提案した。
というか実際に彼女は少女だ。年齢は15歳、綺麗な赤い髪の毛に、赤い瞳をしている。戦闘能力を買われて今では幹部にまで上り詰めた猛者だ。頭が悪いわけではないが、戦闘以外にはあまり積極的ではなく、管理業務などもそのほとんどを部下に任せている。彼女であれば日常業務が少ないので、ついていくのには適しているだろう。それにこの中で一番実力があるのが彼女だった。そうでもなければ戦闘力だけで幹部になど上り詰めるのは不可能だっただろう。
彼女の名前はティナ・アスター。インベスティガ最強の人間だ。
「なるほど、感謝するティナ、それではともに行こう。」
エティエンヌはこれに承諾。
周りに視線を移すが特に反対意見は出なかった。
これはひとえにティナの実力とエティエンヌの頭脳による実力がもたらしたものだろう。
「それでは今日の会議は終了する。イズラへの本拠地移転については必要な情報がそろい次第最終決定という形とする。ティナは当日予定を決めるので私についてきてくれ。」
最後に会議をさっとまとめると、エティエンヌは部屋を出た。
それにひょこひょこティナもついていく。
その部屋は社長椅子と机がセットになっているものがおいてあるだけだ。
エティエンヌは社長椅子に座った。
それに続いて、ティナが適当な椅子を持ってきて座った。
「担当直入に言おう、出発は明日だ。準備はこちらで非通り済ませておく。済まないが、服だけは自分で用意してくれ。」
「りょうかーい。」
ティナはどうでもよさそうに返事をした。
「ふむ、日時は夜間に伝令を出すから聞いてくれ。移動手段の都合をつけるのに時間がかかるからな。それと今回の調査は一週間ほどかかる予定だ。それについては早めに自分の部下に連絡しておいてくれ。」
「うん、わかったっす。うちのところは私がいなくても回るようになっているからあんまり心配することはないっすけどね。」
ティナは椅子に乗って回転している。
退屈そうだがこう見えて実力があるのだから世の中わからないものだ。




