最強の炎なんです
エルミラの頭の中に、この魔法の使い方が次々に流れる。
この魔法の属性も知らないのに、とても不思議な現象だった。
「戦法を変えます。生命力は奪えそうにありませんから。」
エルミラはライメイを正面に突き刺す。そこには何もないがエルミラには確かに何かに刺さる感覚がある。
そのままライメイを右に4分の一回転させた。
「【サント・ルーナ・シフト・バトラー】」
エルミラの頭の上にあった光輪がその色を赤色に変える。エルミラの瞳に赤い光が宿った。
そのまま空中からライメイを引き抜くと、エルミラは超高速でルゴールに接近した。ルゴールはまたエルミラのライメイを迎え撃とうとする。
「無駄ですよ。」
エルミラのライメイがリヒトに触れた瞬間、ルゴールは目で追うのすら難しいような速度で、吹き飛んで行った。
そのままこの広い空間の壁に衝突、大きなクレーターを作った。
「なるほど、素晴らしい力だ。」
以前壁面にめり込んだままのルゴールが正面にリヒトをかざす。リヒトの周囲に直径30cmほどの氷の塊が出来上がる。そしてその直後に炎の球体も完成する。
「【フレイム・アイス・ペロッタ】」
球体がすべてエルミラの方へと飛んでいく。
エルミラはそれらすべての軌道を見切り、炎の球を切り裂いた。その瞬間炎の球は爆発、エルミラは後方に吹き飛ぶ、そのエルミラに次々に球体が着弾しようとする。
爆発の勢いを利用して、そのまま背後に飛び去り、今度は氷の球を切り裂く、その瞬間細かい氷の粒が飛散して辺りを一気に凍らせた。
エルミラの動きも一瞬だけ止まる。その隙に今度こそ大量の球体がエルミラに直撃し始める。
周囲を凍らせていた氷が、炎の球体による爆発で次々に溶かされ、白い蒸気を発している。
「なるほど、聞いたことがあります。異なる属性の魔法を組み合わせて発動する複合魔法、一つの属性からなる魔法よりかなり強力ですね。」
エルミラは魔法の感想を述べながら、蒸気を切り裂く。
蒸気から除くエルミラの体にはさほどダメージを受けた様子はない。
「ですが今の私にはたかが知れた威力です。」
ルゴールが壁面から出てくる。
「それはそうだろうな、初級魔法を組み合わせただけでは。我のような二属性持ちは非常に稀有だ、こんな前例は見たことがないだろう。」
ルゴールはリヒトを左手に持ち替え、右手の平を天に向けながら正面に出す。
「【アイスフレイム・スチーム】」
ルゴールの手のひらから、まるで水が湧き出るように青い炎が周囲に燃え広がり始める。
「この魔法はあまり使いたくはなかったんだが、お前にはちょうどいいだろう。」
ノイルは眼を見開くと、自分とトレットの前に瞬時にシールドを展開する。ノイルが出したシールドは通常とは違い、少しだけ黒かった。
「ふむ、さすがにあの獅子は防ぐか・・・。」
ルゴールはノイルの方を見る。
そしてその瞬間、青い炎の中をエルミラが超高速で突っ切ってくる。そのままルゴールに向かって大上段でライメイを振り下ろした。
魔法の中に生身で突っ込んでくるとは思っていなかったルゴールは一瞬だけ反応が遅れ斬撃を胸に受ける。鮮血が噴出した。
「グッ!?なかなかやるな、この魔法の中を突っ切てくるとはな・・・。」
エルミラの体には青い炎が燃え移り、その体を今もなお焼き続けている。
だがエルミラに変わった様子はない。
「なぜ我の魔法をその身に受けて立っている。」
ルゴールは実に不思議そうな顔をしてエルミラを見ている。
エルミラはその話を無視して、右手に持っているライメイをそのまま自分の右側の空間に突き立てた。今度はライメイを右側に半回転させた。
「【サント・ルーナ・シフト・マギア】」
その瞬間周囲を燃やしていた青い炎がすべて鎮火した。
「馬鹿な・・・我の魔法の無効化だと!?この消えない炎を・・・。」
ルゴールが驚くのは無理もない。ルゴールがしようした複合魔法は通常は魔法師50人ほどを用いて発動する、消えない炎を相手につけるまほうだった。非常に複雑な魔法だが、炎がついたという事象そのものを凍結させる。その結果消えない炎という奇跡を作り上げることができる。
だが今エルミラが使用した魔法は魔法の再構築だった。エルミラは一度相手が発動した魔法をエルミラの手で消える炎に改造して消して見せたのだ。相手の魔法を自分の支配下に置く超高等技術だ。
エルミラはまた空中に剣を突き刺して、今度は左側に4分の一回転させる。
エルミラの頭上の輪の色がまた虹色に戻る。
ルゴールの正面でエルミラはまたライメイを大上段に構える。
「どうも我とお前では実力が開きすぎてしまったようだな・・・。さらばだ。」
今までルゴールを守っていた紫色の魔力の膜が消えた。
エルミラはルゴールを一瞥するとライメイを容赦なく振り下ろした。
短いはずでしたが長くなっています。この章を読んでくださっている皆さま、お付き合いありがとうございます。エルミラ編は次回で終了いたします。つきましては思ったより長くなってしまっているので章分けを増やそうと考えております。申し訳ありません。




