新キャラなんです
今日のエルミラの目的はただ一つ、それはギルドカードを久しぶりに更新して、クエストを受けることだ。
この村に入った瞬間にすでにギルドがあることは気付いていた。真っ青な三角の目立つ建物はおそらくはギルドだろう。
エルミラは以前ギルドに所属していて、適正クエストランクDのギルドランクEだった。一般的な兵士が最初にギルドに登録すると大体こんな感じになる。別にエルミラが低いわけではない。
早速エルミラは村のギルドまで行って、そこでギルドカードを受付に渡す。
「かしこまりました。更新ですね、お預かりいらします。」
受付嬢は若い村娘といった感じだ。エルミラからギルドカードを預かると、そのまま下がっていった。クエストを受けずに長期間放置されギルドカードは、次クエストを受けるときに必ず更新しなければならない。それは一応ギルドは大まかに登録者を管理していて、クエストを受理しない場合は死亡の可能性などで、捜索が開始されたりする。エルミラの場合は兵役によるクエスト受理の不可という項目で申請してあるので問題ない。ただし今回更新をしたのでこれからは定期的にクエストを受ける必要がある。
受付嬢は戻ってくると、エルミラにギルドカードを返した。
「本日はクエストを受けていきますか?」
「そうですね、これをお願いします。」
エルミラは一枚の紙を受付嬢に渡す。
受付嬢はその紙を見てエルミラに質問をする。
「失礼ですがお客様のクエストランクをお聞きしても?」
「どうぞ。」
エルミラはギルドカードに自身の魔力を流し、受付嬢に渡す。
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エルミラ
クエストランク:S ギルドランク:E
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「なるほど、お客様の実力が十分なのはわかりました。ですが、こちらのクエストの危険度を考えると、お客様一人に行っていただくわけにはいきません。どなたかとパーティーを組むのをお勧めいたします。」
受付嬢の目は真剣で、ごまかすことはできなそうだ。
「一応一人ではないんですが・・・。」
エルミラは後ろのノイルと、トレットに目配せをする。
受付嬢は後ろにいる二人に視線を移すと、エルミラを正気かどうか疑うような目で見ている。それはそうだろう。受付嬢からしたら、ノイルとトレットは子供と犬だ。超常の生物とは気づくことはない。
エルミラがここをどう突破するか考えていると、後ろから声がする。
「よければ俺が一緒に行ってやるぞ。」
エルミラが聞き覚えのあるその声を聞いて後ろを振り向くと、そこには村に入る際に絡んできた熱血ハチマキがいた。
「このクエスト難しいらしいですけど、足を引っ張りませんよね。」
エルミラが熱血ハチマキにそういうと受付嬢が突如目を見開き、エルミラに忠告する。
「このおかたになんていうことをおっしゃるのですか!?」
エルミラは疑問気に方眉を持ち上げる。
「誰なんですか?」
「この人はリュカ・トーマス、クエストランク、ギルドランクともにSランクの近隣諸国にも名の知れた、実績のある冒険者ですよ。」
受付嬢がまくしたてるように熱血ハチマキの説明をする。
「そうなんですか。」
エルミラは特に興味がなさそうだ。これまでハクと旅をしてきて、ある程度相手の実力を目で測れるようになってきたエルミラはこの男の実力が自分のはるか下にあることを理解していた。
もちろんハクの言っていた通り、只者ではないが今のエルミラからしたら、5分以内で料理完了できるような感じだった。
「ここまで受付嬢さんが押すのであれば、一緒に行ってあげてもいいですよ。」
エルミラは超上から目線でリュカに答える。
「ふむ、正直なかなかな扱いだとも思うが、俺自身そのクエストは一人では難しいと思っていたんだ。協力者がいるのであれば助かる。よろしく頼む。」
リュカはエルミラに手を差し出した。
エルミラもそれにこたえるようにリュカと握手する。
受付嬢もその様子を見て一度ため息をついた後話し始める。
「それでクエスト受理いたします。完了次第またお越しください。」
エルミラの受注したクエストの内容はあるダンジョンの攻略といったものだった。もちろんクストランクはS、ただし特記事項としてそれをうわまわる場合があると記されていていた。
「それではダンジョンに向かいますか。」
エルミラが高らかに宣言する。
「いやいや待ってくれ!その子供と犬もつれていくのか!?」
リュカが焦って止める。
「あなたよりは遥かに頼りになりますけどね。」
そのままその話を無視して、エルミラは歩を進める。とはいえ、一度エルミラに剣を両断された以上、それなりにエルミラの実力をリュカも認めているので、諦めてそれに従う。ただしいざとなったら自分も全力で子供を守るという心持で。
エルミラたちは1時間ほどかけて歩き、村から離れたところにあるダンジョンにたどり着いた。
「ダンジョン攻略にほとんど準備もせずに来てしまった。俺としたことが、村でもっと忠告しておくべきだったか。」
リュカはほとんど装備を持っておらず、今回のダンジョン攻略に不安を募らせる。
「エルミラ殿、本当にこれで大丈夫なのか?」
一応その不安をエルミラにぶつけてみる。
「何の問題もありませんよ。」
エルミラはそのままダンジョンに入ってしまった。それに続くようにリュカもダンジョンに入る。
ダンジョン自体は岩がごつごつとして、ところどころ苔の生えた厳かなダンジョンだった。通路はそれなりに広く、十人くらいなら並んで通れる広さと、10メートルほどの高さがあった。その通路が地下へとどんどん続いていく感じだ。もちろんアリの巣のように複雑なつくりをしているわけだが。
そのままエルミラはダンジョン内だというのに無警戒に進む。剣すら手に持っていない。ちなみにライメイはトレットが持つエア・シェルターの中だ。
エルミラは周囲に微弱な電気を流し、索敵を開始する。
「・・・天井に魔物が張り付いていますね。攻撃してみますか。【エルダーズマジック・ライトニング・ブラスト】」
エルミラの手から雷の本流が発射され、天井に張り付いていた魔物を焼く。
そのまま無抵抗なオブジェクトとなり果てた魔物は地面に落ちてくる。
リュカがエルミラの魔法の威力を見て驚愕する。
「馬鹿な、なんという威力の魔法だ。君は剣士ではなかったのか!?」
リュカが驚愕している間に魔物の死骸にノイルが近づいた。
「これはチュラバリカだね。吸血巨大蝙蝠だね。ダンジョンの最初の魔物にしては結構強いよ。」
チュラバリカはクエストランクBの魔物だ。この調子で最深部まで進めば、ダンジョンの長さ次第でSランクの魔物が待つ可能性が上がる。
「ふむ、君は子供にしては詳しいな。この子の言う通りだ。」
正気に戻ったリュカはノイルの発言に同意する。
特に否定するわけでもなく、ノイルはリュカに笑顔で返す。
「ふふふ、ありがとう。」
エルミラの電気にまた反応があった。
「前方から魔物が走ってきますね。大きめの二足歩行の豚ですかね。また焼き殺しますか。」
エルミラが物騒なことを告げる。
「いや、ここは俺に任せてほしい。」
リュカが一歩前に出て、半ばから折れた剣を背中から抜刀する。
「はぁ。」
エルミラはその様子を黙ってみている。
エルミラの言った情報そのままのルックスの魔物が姿を現し始める。魔物はオークだった。
リュカは剣を正眼に構える。
最初にリュカに接近したオークをリュカから接近してすれ違いざまに首を落とした。その冴えわたる剣技はリュカが只者ではないことをエルミラに知らせる。もちろんエルミラも最初からリュカがあるていど実力があることを認めていたが、どうも想定以上の実力を持っているようだった。
オークの数は全部で5匹、今リュカが倒したのを差し引くと残りは4匹だ。二匹は棍棒、一匹は大剣、一匹は槍を持っている。
「はぁっ!!!!!」
リュカはその気合をそのままにまたオークの首を切り落とす。だがそのすきに一匹のオークに背後をとられてしまう。リュカは背後をとられても冷静に対処する。オークが知能の低さ丸出しに、横殴りで棍棒をふるう。リュカはそれを綺麗にしゃがんでかわすと、そのままオークの膝を切り裂いた。オークは片膝と、片手を地面についた。
だが今度はそのオークを守るように、横から槍が突き出される。まさしく横やりを入れられた気分になったリュカはそれにも冷静に対処する。
「リーチの長いお前が一番厄介だったんだよ。」
リュカはその槍を横に回避した後、すぐさま槍を半ばから切断した。これでオークの持つ武器はただの棒に代わる。リュカはその切り落とした槍先が地面に落ちる前に片手でキャッチすると、槍オークの頭に投擲した。槍オークはそのまま絶命。勢いをそのままに回転しながら、片膝をついていたオークの首を切り落とす。
いつの間にか、オークの残りは一体になっていた。
オークはいとも簡単に自分の仲間を殺したリュカを恐れて逃げ出した。
「戦場で敵に背を向けるな!!!」
リュカはほとんど一歩でオークに追いつくと、そのまま背中から切り裂いてとどめを刺した。
リュカは剣を振り、血を落とすとまた背負いなおした。
彼のこの技術を見るに本当に歴戦の洗礼された戦士なのだろうことがエルミラにも理解できた。




