エルミラなんです
「長い・・・遠すぎる。この世界は魔法世界なのになぜこんなにも移動が大変なんだ。」
ハクは悪態をつきながら運転を続ける。
「ディアスゴルトは確かにイズラからは遠いからな。」
シンが窓を開け、風を浴びながらはなす。
「ディアスゴルトは・・・。」
シンの小さな声が、窓から入る風によって消える。耳の良いノイルとトレットは何か言っているの聞いていたようだが、どこまで聞き取れたのか。あえて聞くことはしなかった。
「今日はここで寄り道しようか。」
ハクは今日はまだ5時間ほどしか運転していない。それなのに、寄り道を提案したので相当疲れているようだった。
「ここには二泊ぐらいするか?」
気を利かしたトレットがハクに提案する。ハクは社内を見つめると、みんながハクに目線を合わせてうなずいた。
「ありがたくそうさせて貰うよ。」
珍しくハクが寄ったのは異世界らしい小さな村だった。その村は無警戒なのか、結構簡単に村の中に入ることができた。今まではそれなりに大きな国ばかり通っていたので、外壁に囲まれていたのだ。だがこの村は特に何かに囲まれている様子はない。魔物などが闊歩している危険な世界でこれで大丈夫なのだろうか。
ハクは車を走らせて、そのまま村へと入っていく。
村の中には軽トラックがよく見かけられ、相当ハクの車は場違いだった。
村の適当な位置に車を止めると、奥から大柄な男が走ってくる。背中には大きな剣を背負っている。
「おい!こんな小さな村に何のようだ!!!!」
黒目黒髪短髪、額には赤の長いハチマキをしている。地面につく寸前ほどの長さだった。
ハクは無言でアクセルを踏もうとした。
それを一瞬で察知したエルミラが隣から止める。
「降りようよ、普通に。」
ハクはいやいや車から降りた。大柄の男がハクに迫る。ハクとは顔一つ分身長差がある。エルミラも降りると、ハクの隣に立つ。
「お前は何者だ。」
ハクを見下ろしながら、大柄の男が脅迫するように訊いてくる。
「観光客だよ。」
ハクは割と本当のことを言った。
「がっはっはっはっは!そうか、そうか!すまんすまん変な疑いをかけて。」
大男は急に笑い始めた。その様子はどこか狂気的だったが、なんとなく好意的に見れた。
だが次の瞬間男は背中に背負っていた巨剣を抜刀、ハクに大上段から振りかぶった。
これにエルミラは超反応し、男の巨剣を容赦なくライメイで切断した。
「はっ!?」
男は半ばから切り取られてしまった剣を唖然としながら眺めている。
ハクの額からは血が流れている。
「あのさエルミラ、俺もかすったんだけど・・・。」
エルミラはハクのほうを向かずに、大男から視線をそらさない。だが両手で持っていた剣を片手持ちにし、ハクにグッドサインを出す。
「それどういう反応!?」
ハクは動揺している。
大男はハクより先に正気に戻ったようだった。
「なるほど、俺のこの剣技を初見で見切るか。一応はSランク冒険者なんだがな。」
男の目線は警戒から、関心へと変わった。
「何を疑っているのかはわからないが、俺は本当にただの旅行者だ。泊まる場所を紹介してくれ、道中の長旅で疲れているんだ。」
ハクは男をまるで相手にしようとはしない。それもそうだろう、明らかに暑苦しく、不自然なほど盛り上がった筋肉が男との関わりたくなさを上昇させる。
「ふむ、ただの旅行者ではないと思うが、俺が切りかかってその対応、どうも悪人ではなさそうだな。」
男は少なくとも悪人ではないと認めてくれたようで、ハクたちにこの村の宿屋を紹介してくれた。ほとんどが木造住宅で宿屋もそうだった。
「これは結構趣があるな。」
ハクは宿屋を見て感想を言う。
「それじゃぁ俺は行くからな。怪しい行動をしたら俺が飛んでくると思ってくれ。さっきのが全力だと思うなよ。」
大男はハクに背を向けると去っていく。
「そんなのは知ってるよ。あんたから立ち上る魔力を見れば、只者じゃないことはすぐに理解できる。」
ハクはそれを理解してなお、男を無視して宿屋に入る。
「4部屋あいてるか?」
ハクはさっそく宿屋の受付に告げる。
「もちろんあいてるよ。」
受付は優しそうなおばあちゃんだった。
「こっからここまでがあんたたちの部屋だから好きに使っとくれ。それと朝9時までに降りてきてくれれば朝飯を用意できるからね。夕飯をつけると別料金になるけどどうする?」
「夕飯も用意してくれ。」
「わかったよ。」
おばあちゃんはそういうと去っていった。
「それじゃみんな今日はこれから昼寝するけど、もちろん自由行動なんで。」
ハクはそういうと早速部屋に閉じこもるように入ってしまった。早朝から運転していたので、今はまだ14時程度だった。
「私は少し外出します。」
エルミラは突然そんなことを言って宿屋を出ようとする。
「僕もそれについていこうかな。」
「俺もついていくぞ。」
「わかりました。」
「俺は寝るよ。」
シンはどうも寝てしまうらしい。
そしてこれはなぜかわからないが、エルミラの外出に動物二匹がお供をするという謎の光景が出来上がってしまった。
二匹はエルミラの目的は知らないが、それを知れば若干面倒くさくなることは間違いない。
ここからは少しの間、エルミラが主人公です




