まだ道中なんです
ハクとエルミラは早速コテージへと向かった。コテージに向かうとすでに灯りがともっていて、ノイルとトレットとシンがすでに入っていることがわかる。
コテージは木造の一階建てで、3LDKほどだった。
ハクはさっそくコテージに入った。
「ただいまー。」
入場と同時にハクは挨拶をする。
「おかえりー。」
トレット後ろ足で耳をかきながら返事をした。
ハクが部屋を見渡すと、ノイルと目が合う。
シンがいる様子がない。どうも先に眠ってしまっているのだろうか。
「今はこの森に住み着いているんだね・・・。会ったんだろう?」
獣らしく匂いで判断したのか、どうも隠し通すことはできないようだった。
「白の王・・・名前はお前らの力を下げるとか言っていたな。」
「ふふふ、そうなんだよ。こんなにも強い僕はかなり弱体化している状態なんだ。驚いたかい?」
ノイルはソファに座り、机に肘をついて前かがみになり、両手を祈るように合わせている。その様子は会議室にいる会社の重鎮のようだった。
「確かにな、お前から感じる魔力は相変わらずすさまじいい。でもなぜそれだけの力を持ちながら、今は力を手放し俺たちと一緒にいるんだ?」
「そうだね・・・、大きすぎる力はいつだってそのものの存在を孤独へと導くんだ。僕は昔から人間に興味があった。彼らからは何の力も感じないのに、集団になればなるほどその力を増す。そして僕が人々に本当の意味で興味を持ったのは、その表情の豊かさ・・・簡単に言えば笑顔だ。僕たちと力を合わせて彼らとともに魔物の群れを倒したとき、彼らは何日も笑い、何日も宴を行った。僕が人間とかかわりを持つまではそう時間がかからなかった。」
ハクもノイルの正面に座って、その話をしっかりと噛み砕きながら聞いた。
「じゃぁなんでお前は人間いに恐れられてるんだ?」
確か以前マーダスもノイルのことを恐れていた。それは間違いなく原因があるからで、ノイルは人類に害する何かを行ってしまっているはずだった。
数瞬のまの後、ノイルがまた語り始める。
それと同時にエルミラがお茶を入れてくれたらしく、お茶を持ってきてハクの隣に座る。
「あの頃は僕もまだ若かった・・・。自分の持つ力を理解できていなかったんだ。人はその豊かさと愚かさを同時に持ち合わせている・・・。僕はね・・・こんなにも力があるのに人間も利用されてしまってね、人の国を一つ滅ぼしてしまったんだ。」
ハクは机にうつむく。
ノイルの言っていることには痛いほど心辺りがった。ハクがまだ黒城 白であったころ、一人の少年兵士としてハクはあらゆる絶望と、その愚かさを目にしてきた。
「そうだな・・・。」
そして自分も愚かな人間の一人でしかないいじょう、ハクにはそれしかいうことができなかった。
「だから僕は戒めに自分に名前を付けた。強大すぎる力を手放すために。」
「なるほどな・・・。」
ハクはお茶を口にした。
「そういえば白の王がこれをお前に渡せと。」
ハクは話を切り替えるようにノイルに白の王がくれた木の実を託す。ノイルはそれを受け取ると、何か感慨深いような、とても真剣な目でその木の実を見ていた。
「そうか・・・これを僕に・・・。」
「それは何なんだ?」
「僕にも正確には何かわからない、ただ予測というか、予感というか。なんとなくわかるが、今は君たちには言わないでおこう。しかるべきときにわかる日が来るだろう。」
なかなかに迫力のある言い方をしてくるノイル。ハクは問い詰めることもせずにノイルの表情を見て、問題ないと判断した。
ハクはそれと同時にあることに気づき始める。
「ノイル、さっき人間の豊かな表情や感情に興味を持つとか言っていたが、今のお前も十分表情からいろいろなことを読み取れる。つまり今のお前はなりたかった自分に慣れているのかもしれないな。」
ハクはそれを言い終わると、ソファから立ち上がる。
「俺はもう寝る。今日はずっと一日運転で疲れたからな。明日も早いぞ、早く寝とけよ。」
ハクはベッドルームに行ってしまった。
「私も寝ますね。」
エルミラもくすりと笑うと席を外す。ハクとトレットが同室だが、エルミラとノイルとシンは別室だった。それぞれの部屋で寝ることになる。
誰もいなくなった部屋で、ノイルは静かにつぶやいた。
「この実は、何かあったときは容赦なく使用することになるな。あの日のように目の前で大切な人が死ぬのは見たくない。ハクよ、君のような人間は世界に必要だ。何かあったときは容赦なくこの命を犠牲に、君を守ろう。」
ノイルの少し長い独り言が終わると、部屋に戻っていった。
「それは俺も同意だな。」
すべてを聞いていたトレットもノイルに同意するとハクの部屋に入っていった。
翌朝、早朝からハク一同は車を出し、またディアスゴルトへの道へと戻った。
朝ごはんがまだだったので、近場にあったドライブスルーに寄った。異世界ファーストフード店はよくわからないが、とりあえず面白そうだった。
まずその景観だが、特に何もない道路だけが続く道に突如、商店外のようなものが見えてくる。以外にも車で移動する人は多いようで、それなりに儲けが期待できるそうだ。今日はまだ早朝なだけあり、人の姿はない。
メニューはよくある、ハンバーガーとポテトのセットなのだが、問題はパテの部分にあった。普通のハンバーガーショップならば、パテは合いびき肉を使用しているが、その合いびき肉の種類の豊富さが、通常とは圧倒的差があった。
ハクも一度食べたことのある、ファイアーリザードの肉や、簡単に言えば超巨大マンモスであるメガバラムシカの肉。もちろんそれ以外にも大量に種類があってハクはどれにしようかそれなりに迷った。
「とりあえず、パテはラドルンテの肉と、メガバラムシカの肉の合いびきで頼む。」
メガバラムシカはクエストランクSの超級魔物、集団で一頭をようやく倒せるくらいのレベルだ。一頭はビル20階建てほどの大きさがあるので、そのサイズ感から大量に肉は流通する。ファストフードのような安い店で提供できる理由は一度狩れば大量流通することや、集団で狩るのは意外にも簡単だからである。
ラドルンテはクエストランクEランク。一般人でも最新の注意を払えば狩猟可能である。
ハンバーガーの包み紙を珍しく隣に座ったエルミラが外すと、手渡ししてくれる。
それを受け取り、ハクは片手でハンバーガーを食べながら運転を続行する。
「これは・・・美味すぎる。」
ハクはその味に唖然とする。
口に入れた瞬間、ほとんど照り焼きソースみたいなソースが口に広がり、その後口の中は肉の味に変わる。もちろん前半のどくどくなジャンクフード感も好ましかったが、後半の肉の味を味わう。その味はまさしく絶品で、一度ミンチになってるとはいえそれでも異常な速度で口の中で良質な油へと変貌する。ソースと混ざり口の中で完成したスープはまさしく地球の高級レストランレベルだった。
「おいしすぎる。」
異世界の料理レベルに久しぶりに絶望したハクだった。




