新しい携帯だってよ
あれから少し時間がたち、ハクたちは現在エルミラたちが食事をしていた部屋に戻ってきている。ハクたちもそこで食事をとる。
食事の席には空間投影されたZERO、アナウンスのみの参加だが、リアムもいる。
『つまり君たちの目的は魔人と同じ命の書だったのか・・・。』
「まぁそうだな。アリアたちの目的は違うが。」
『僕の暗殺だろ?』
「そうよ。」
「そうだ。」
シンとアリアが同時にリアムに返事をする。
だがこう見えて二人はちょっと戸惑っている。本当の暗殺対象であるリアムがすでにこの世にいないとなると、暗殺任務を実行することはできない。しいて言うなら暗殺済みといったところだろうか。
二人が少しだけまじめに考えていると、これまたハクが口を開く。
「その件だが、ここにはまだいろんなクローンがいるみたいだし、リアムを管理するという意味でもここをインベスティガの所有物にしたらどうだ?」
ハクは持っているホークを少しだけ持ち上げて提案する。
「簡単にいうが、この施設の規模から考えて一国を手に入れることに近いんだが。」
『私は別にかまわないよ。賭けに負けたのは私だからね。』
リアムが簡単に返事をする。
だがシンが言いたいのは、このイズラが小国とは言え、一つの国であることに問題があるということだ。だがイズラはもうずいぶんと長い間世界会議に参加していない国家で、シンが懸念するほどの問題はない。
ハクはシンを見る。
「それじゃ俺と一緒に会長を説得しに行くか?ついてくよ、大きな組織を味方につけるのは今後の俺の旅のためにもなるしな。」
シンは目を見開く。
「協力してくれるのはありがたいが、そこまで君に頼ってしまうのは申し訳ないな。」
「いいよ、旅は道ずれ世は情けってな。」
「なんだそれは?君はたまに変なことをいう奴だな。」
シンはけらけらと笑っている。ハクからしたら大真面目にことわざを言っただけなのだが、笑ってくれるのであれば、それはそれでありかとも思う。
「と、言うことで今度の目的地は、インベスティガ本部になりそうなんだがみんなはそれでもいいか?」
エルミラは口の中を食べ物で満タンにしながら首を上下に振るい同意する。
ノイルは軽くナイフをあげて。
トレットはいつも通りどうぞご自由にという感じで興味がなさそうだ。
「ところでリアム命の書をくれ。」
ハクは本題をさっさと済ませようとする。
『それなんだが・・・。』
リアムが珍しく言葉に詰まっている。
「どうしたんだ?」
なんとなく嫌な予感を感じつつハクはリアムに問う。
『あれは・・・大元は魔人に取られてしまったんだ。』
「・・・・え?マジで?」
『マジだ。』
「・・・それってリアムみたいなことを魔人ができるってこと?」
『クローンとかは難しいとは思うが、個体を強化する方は案外簡単にできるだろう。』
ハクはその言葉を聞いて机にうつむく。
「待てよ?今大元はって言ったな・・・、それはどういうことだ?」
『こう見えて私は頭が人よりいいのでね。データに起こしてあるんだよこれが。』
「それは実際に使えるのか?」
『私は問題なく使えたが。』
ハクはその言葉をゆっくりとかみ砕くようにしっかりと吟味する。
「それでいいから取り合えずもらってもいいか?」
『もちろんかまわないがデータといった時点で、私の手元に命の書が残るわけだがそれはかまわないのか?』
「それを今の間の間に考えたんだが、たぶん問題ない。好きに使えよ。」
ハクのこの発言にシンとアリアが飛びつく。
「それはやめておいた方がいいわ!」
「危険だろ!」
ハクは二人を落ち着かせるように見る。アリアとシンが冷静になるのを確認してから話始める。
「確かに理解してもらうには難しいと思うが、真理の魔導書シリーズは異常なんだよ。それがコピーできるという時点でこいつも異常なんだ。それになんというか・・・これもまた難しいんだが、俺が初めて空の書に触れたとき、確かに意思を感じたんだ。真理の魔導書には意思がある・・・。」
『つまり君は、命の魔導書が僕を選んだと言うのか?』
「そうかもしれない。おそらくリアム以外が命の書を使用しても同じ結果は得られなかった気がするんだ。」
シンとアリアが思わず黙る。
『君はやはり面白いな。』
机のハクのちょうど目の前の場所が空く。そこからは直径20cmの黒い円柱が出てくる。中心部には四角い白いマークが描かれている。
『そこに君の携帯を置いてくれ。』
「わかった。」
ハクは四角い白いマークが中心になるように置いた。
その瞬間、黒い円柱が上方向に飛び出しハクの携帯が天井まで飛ぶ。天井でガシャンという音が鳴ると、そのまま机に落ちてくる。机の上でまたガシャンと無残な音を立てる。
「え?」
ハクの目の前にはめちゃくちゃに壊れた携帯がある。
「こんな凄そうな装置の機能がピストンオンリーなの?」
ハクはつい最近購入したばかりの携帯の無残な姿を見て絶望する。
今度は黒い円柱が開く。中には形態が入っている。
「これは?」
『君の新しい携帯に決まってるだろ。』
「古いの壊す意味あった?」
『物事には悲劇の連続が歓喜を生むのだよ。』
ハクはリアムの発言に疑問を感じつつも携帯をそこから受け取る。ハクが形態を受け取ると、エルミラとノイル、それにトレットの前にも携帯が出てくる。
「おい!なんでほかのみんなは携帯壊さないんだよ!?」
『君は正気かね?人の携帯を無断で壊す馬鹿がこの世にいるのか?』
ハクは唖然とする・・・。
『君たちの形態には素晴らしい機能を追加しておいてあげた。それを使うことをお勧めするよ。』
ハクはさっそくスマートフォンを開くと、そこには通常のアプリケーションのほかに、いくつかアプリがのっていた。
そしてそのアプリ群の中にZEROというアプリが追加されている。
「これはまさか・・・。」
ハクが空中投影されているZEROを見る。
『私が開発した史上最強のAIだよ。』
リアムの誇らしげな声が部屋に響いた。




