テスト始めるってよ
リアムの拳が壁にめり込むハクに迫る。その拳は魔力でコーティングされ、触れればハクの命を奪うことは明らかだった。拳が迫る中、ハクは唱える。
「【ディオス・ヴァキオ】」
拳は確かにその場にはあるハクの姿を通り過ぎる。それはアトラクシオンも同じだった。魔法の束縛から解放されたハクは、そのままリアムのほうへ倒れる。リアムすら通り過ぎ、都市フィールドの中心まで歩いていく。
「そっちも魔法を使ったんでな、俺も使わせてもらうよ。」
ハクは得意げにリアムを挑発するように振り返る。
「私は魔法の研究もしていてね。それも知っているよ、真属性魔法だろ?そういった通常であれば、手こずってしまうような魔法も私はしっかりと対策していてね。エコロケーションは知っているね?真属性魔法を破るのに、魔法は必要ないんだ。」
そういうとリアムは突然猫だましをするように手をたたく。耳を澄まして周りの音を聞いている。
その間にハクはリアムに歩いて近づいている。
「あまり余裕ぶるのはやめたほうがいいよ、君の居場所はもう・・・・。馬鹿な!?君は今いったいどこにいるんだ。」
ハクはそのままリアムを殴りつける。
「俺はここにいるだろ?それが証拠だ。」
今度は先ほどハクがめり込んでいた壁面にリアムがめり込む番だった。
「・・・っ!?」
ハクはそのままリアムに高速で接近すると何度も殴りつける。だがリアムもその速度に対応して、何とか回避を続ける。どんどん中心へ移動していって、いつの間にかビル街の中心まで戻ってきていた。
「どういうことだ?なぜ君の居場所がわからないんだ。私の耳は確かに獣人の耳とほとんど同じ仕組みにしているというのに、なぜだ。」
リアムの目は驚愕に見開かれる。
「俺がそういう風にしてるからじゃないか?」
ハクはリアムまで近づくと話を始める。
「だいたい理解してもらえたと思うが、俺はそれなりに強い。お前だってうまくやれば倒すことも無理じゃない。」
ハクはそういうと急に地面に座ってしまう。
「君は何を考えているんだ?何が言いたい?」
リアムはハクを見下ろすと、先ほどのように椅子に座るようなそぶりで、尻を下ろす。そうすると空間に椅子でもあるかのように、そこに座ってしまう。
「正直に言おう、俺は別にお前の計画に全面から反対しているわけではない。ただお前が個人的に研究しているだけなら、問題ないんだがなぜ人類を滅ぼしたがるんだ。」
ハクは胡坐をかき、手に顎をおき、肘を膝につける。
「言っただろう。コストを食いつぶすだけの人間は必要がないんだ。なぜただコストを食いつぶすの見ていなければならない。この星にとって有益な人間だけが、生きのびるべきなんだ。」
対するリアムは腕を組みハクのほうを見つめている。最初の時とは違い今はハクを対等と認め、しっかりと話を聞いているようだった。ここまではハクの狙い通りなのだろう。
「だが、たった今俺は人間の価値を示せただろう?」
リアムはハクの顔をしばらく見つめる。
「その通りだ、君のような人間がいるのであれば、確かに早計だったのかもしれないな。君は私の想定するはるか先にいた。想定以上だった。」
「そりゃよかったよ。」
「ただしそれは君という規模で考えた場合だ。人類という規模で想定した場合、まだ君は想定範囲内だ。ただし君の言いたいことはわかった。それを成し遂げたいならば、力を示せ。」
リアムは立ち上がると、ハクにも立ち上がれと目線で合図する。
「そうか・・・わかった。」
ハクは立ち上がるとリアムと目を合わせる。
交渉が決裂したわけではない、たった今始まったのだ。ハクは仕切りなおすようにまた体についた砂ぼこりをはたき落とす。
その瞬間リアムはハクに接近すると、その拳はハクを貫く。ただしそれは先ほどのようにすり抜けていっただけである。
「先ほどからその魔法を破る方法を考えていた。だがそれをすぐに思いつくのは難しそうだったんでね、時間を稼ぐことにしたよ、その魔法で透過している間は攻撃できないんだろう?」
「まさしくその通りだ。ここで問題だが、俺は何を透過していたと思う?」
ハクはリアムに向かって次元膜をはじく。またリアムは大きくのけぞった。
リアムはのけぞったまま答える。
「・・・そうか、僕を透過していたのか。」
この魔法のロジックは非常に簡単だ。世界が対象を認識できなくなる、つまり世界に認識させる必要があるわけだがこれをハクが自身以外にかけた場合、ハクはこのロジックを知っているので、世界に相手を認識することができる。ハクは対象に干渉できるが、敵はハクに干渉することはできない。もちろん弱点もあり、この手法は大人数に使うことはできない。数人なら許容人数だが集団戦には使用することができない。一対一であれば最強レベルの魔法なのだ。
「そういうことだ、まだやるか?」
「・・・いや、その魔法がどういう属性の魔法なのかはいまいちつかめないが、魔法の仕組みは分析完了したところだ。ただし僕だけでは手に余る。少しずるかもしれないが、こういう手もあるんだ、君の魔法もずるみたいなものだし構わないだろう?」
リアムがそういうと、突然アナウンスがなる。
『データ解析完了、この空間の解析を終了いたしました。次元のずれを確認、修正します。修正完了いたしました。この空間の次元を固定します。』
「これで君の持ち味は完全に消えただろう?次元にすら干渉できなくなったはずだ。もちろんこの施設から出ればこの方法は使えないがね。私が見たいのは君自身の可能性なんだ。魔法でも、ましてやその武器でもない。見せてくれたまえ。」
ハクは確認するように手を握るが、そこには先ほどまであった次元の感触が失われていた。
「そうか・・・。確かにトレットの力も、せっかく覚えた魔法もおじゃんか。俺の可能性を見たいといったな・・・わかった。」
ハクはただ少しだけ残念そうにしている。だがその時確かにハクの体からは光の粒が舞い始め、ハクが限界の扉をまた一つ開けようとしている。そのカギであるダイヤルがハクの頭上に現れ、70回ほど回転する。
それは限界からその先へ行く魔法ではない。ただ単にハクの膨大な力の一端を引き出すだけだ。
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