居場所はわかってるので早速突入するってよ
アリアは話すうちにまた、罪悪感からか少しずつ気落ちしているように見える。
「序盤に作成されたクローンの中にアルビノ個体が生まれたの、肌が異常なくらい白くて、とても繊細な少女がね。それがここの国民が見ていた電脳少女ZEROの主人公ZEROよ。ただ、彼女の細胞は非常に弱っていて、すぐに死んでしまったの、その結果記念としてできたアニメが電脳少女ZEROだったの。今でも受付の女の子として、この国では親しまれているわね。次に生まれたのが私の強化個体、戦闘モデルクローンONEよ。彼女は代表の秘書としてこの国で活躍しているわね。といっても代表が表舞台に出れない以上、彼女が国のことをほとんど回しているわ。余談だけど、THREEまで戦闘モデルは設計されているはずよ、どの子もSランク冒険者ほどの実力があるわ。」
休憩のつもりかアリアはお茶を入れてそれを一口ゆっくりと飲んだ。もちろんハクとトレットにもお茶を入れてくれた。
トレットはお茶を飲むと、ハクがなぜここに来たのかようやく理解できたようで、質問をする。
「先ほどのアルビノの件で気になったんだが、クローンの命は短いのか?」
「いえ、そんなことはないみたい。もちろん個体によっては短いものもいたけれど、普通に生活している個体がほとんどよ。」
「そうか・・・。」
トレットは不思議と何かを照らし合わせるような表情をしていた。
「話を戻すわ。といってももうほとんど説明は終わりだけどね。ある日代表は自分の計画を私に説明したわ、この島から技術とクローンを用いて、人類を選別するという計画を。私はそれが馬鹿げた妄想で終わらないことをすぐに理解できたの、だってそうでしょ?戦闘経験のない私から作ったクローンが、Sランククラスの実力を持つ個体にできるんだから、それ以上の生命体を捕獲した時点で、もっと恐ろしいことが起きるはずよ。おそらく驚くほど簡単に代表は選別を完了できるはず、だって世界が代表の計画に気付いていないんだから。そして私は自分の行っていることの恐ろしさに気付いて脱出を試みたのよ。私の脱出計画は成功した、この片目を犠牲にね。でもそのおかげで博士は私を死んでいるものと考えているはず。その後はとっても簡単で、私は博士の悪事を止めるために、世界規模を誇るある巨大団体に駆け込んで、そこの調査機関部門に所属することになったの。そして1年ほど訓練を積んだ後に、今に至るというところよ。もちろんもともと代表の計画は話しておいたから、私は前任者の死とともに調査の引継ぎという形でこの任務にあたっているの。代表のところから強引に脱出したときはおじいちゃんが心配だったけれど。それでもやるしかないという思いの方が大きくて・・・。」
「ということはまさかアリアは【インベスティガ】に所属しているのか!?」
今度は驚いたようにトレットはアリアに聞く。
「ここまで言ったらさすがにばれるわよね。」
「トレットそれなんだ?」
ハクは流石にわからなかったようで、素直にトレットに質問をする。
「ふむ、大魔女王様のもとで何度か聞いたことがあったんだが、世界最大規模の傭兵団といったところだ。例えば、世界協定で決まった超規格外任務などで活躍するといわれている、この世界最大勢力だな。もちろんそういったものに巨大ギルドが協力して、立ち向かうこともあるが時に、軍隊的な動きが必要になることもあるだろ?そういう場合に必要だと考え、全世界の優秀な人員をいくらか派遣し作り上げたのがもとといわれている。」
「なるほど、そんな感じなのか、ありがとう。」
ハクは一息つくと真剣な表情に変わる。
「ところで、アリア。前任者が死んだところを見ると、君の任務は代表の暗殺かな?」
「ええ、そうよ。」
ハクの真剣な目線に答えるようにアリアも真剣な目をしている。その目にハクはあきらめたような顔をする。
「ところで、代表がまだ見つかっていないんだじゃないか?今もまだPC等を調査していることを考えると。」
「そうよ、前任者の死とともに代表もまた姿を消したみたいなの。」
「そうか・・・。」
「俺的にははっきり言っておきたいんだが、今回は手を引いた方がいい。アリアも頑張ったみたいだが、君らは代表に時間を与えすぎている。」
「無理よ。私が責任を持って処分しないといけないの。誰にも譲れないわ。」
「だったら一つだけ提案がある。俺は代表の居場所にほぼ当たりがついてる、だから俺に協力しろ。」
ハクの目はどこまでも真剣で、それでいて絶対の自信と迫力を持っていた。しばらく考える様子だったアリアもその目に何かを納得したように答えを出す。
「わかった、あなたに協力するわ。」
「明日から本格的に動き始めるから、とりあえず今日はもう休もう。」
そしてハクはアリアの部屋を後にする。そんな少しだけ暗い部屋でアリアはひとり呟く。
「本当に・・・、優しい人なのね。私には眩しいわ。」
なんとなく飲み終わったカップに目をおとす彼女の眼には何か尊敬のような光があった。
次の日の朝、ハク一同は目を覚ますとリビングに集合この場にはまだアリアはいない。
「今日はみんなに言わんといけないことがある。」
エルミラとノイルは息をのむ。トレットは床でお座りをして頭をかいているが。
「今回命の書を集めるのに参加してくれる人がいます。それがこの人、アリアちゃんでーす。」
いつの間にか部屋にあった謎の箱から元気よくアリアが飛び出す。お決まりのグラサンをかけているようだ。
「はいみんな拍手で歓迎しようね~。」
もちろん誰も拍手することはない。部屋には静寂だけが残る。
「ハク、どいうこと?」
エルミラがなんとなく疑わしそうな目でハクを見ている。
「実は昨日の夜色々ありまして・・・。」
ハクはエルミラとノイルに昨日のことを伝えた。
「・・・あれからそんなことがあったんだ。」
ノイルが驚き半分感心半分な声を出す。
「ハクさん、スケベですね。女の人ばかり仲間にして。」
エルミラはジトーとハクを見る。
「ハク君は意外にスケベなのかな?存外そういう風には見えなかったが、確かに私を見る目にはどこかいやらしさがあった気がするね。」
わが意を得たりてきな表情をしたエルミラがすぐに便乗する。
「やっぱりそうだったんだーーーー。ハクさん、へー、へー、へーーーーーー。」
「勘弁してよ、そんなことないって!」
ハクは必死に講義をするが、しばらく女性陣の批判的な目は収まらなかった。だがハクはすかさず話を変えるように、今日の本題に入ろうとする。
「今日は本格的に命の書回収を始めまーーーーーーーーすッ!!!!!!」
みんなの目が真剣になり、ハクに集まる。
「そんなこと可能なの?まだほとんど何もわかってなくない?」
「可能なんだよね。昨日アリアが話してくれたことでパズルのピースがそろった感じかな。」
またみんなの目線がハクに集まる。
「・・・答えはこの国の南の地下だろ?」
ノイルが先を伸ばすようなハクの話を遮る。
「え・・・・?なんでわかったの?」
その発言にハクは驚いたように目を見開く。
「実はこの国に来た最初の自由日に、一人で行動していた時に、変な女性に絡まれてね。その子をある程度弱らしたらそこに逃げて行ったんだよ。いやはや結構強い子だったから、正直面くらっちゃったよ。ちなみに結構巧妙に隠してあると思って黙ってたけど、ハクはどうやって気付いたの?」
「実はシンプルに最初の基地から居場所は変わっていないってのが俺の結論だったんだ。もちろん最初の実験施設についてはアリアに場所を聞いて知ったんだけど、代表さんはおそらくこの世界に姿を見せなくてもよくなっただけで、実際には最初の暗殺者が出向いた場所から居場所そのものは変わってはいない。行ってみればすぐにわかると思うけど、結構驚くと思うよ。俺は二つ目のPCを見たときに気付いたんだけど。」
「でも確かにあの施設にはそこまで人がいなかったわ。それに代表も間違いなくいなかった。なのになぜ・・・。アリアは真剣に考えるそぶりをしている。」
一同はそれなりに準備を済ますとすぐに詳しい場所をアリアに案内してもらいつつ移動を開始した。ちなみに今回は怪しまれないように徒歩だ、アリアはあまりの準備の少なさに若干戸惑っていた様子だが。
「代表はかなり準備をしているんだろうな。もちろんノイルのせいで。絶対に二度目の暗殺者だと思ってるよノイルのことを。」
ハクはそんな重要なことを隠していたノイルを冷たい目で見る。
「でもせっかくおもしろそうだと思ったのに、すぐに種明かしじゃ面白くないだろ?」
「はぁ・・・、まぁ最初はこの島に真理の魔導書シリーズがあることすらわかっていなかったし、それはそれでしょうがないけどさ。」
「そんなことより、もうすぐ着くわよ。作戦はあるの?」
「作戦名は正面突破だな。」
ハクは堂々と宣言する。
「そんな馬鹿な!?私の話をちゃんと聞いていなかったの?私が研究施設を脱出してから、それなりに時間もたっているし、間違いなく戦力は増強しているはずよ。絶対に危険だわ。」
ハクは歩みを止めることなく、振り返り後ろにいるアリアを見る。
「まぁまぁこう見えて俺たち結構強いんだよ。」
いくら抗議しても歩を止めることないハクにアリアは完全に吹っ切れた様子だ。
「でも確かに戦力のあるうちに戦うのには賛成だわ。ここまで来たらもう、どこまでも信じてあげるわよ。」
いつの間にか代表のいる実験施設までついていたハク一同。
「それじゃ行ってみようか。」
ハクは一瞬も迷わず、実験施設の扉を蹴破った。




