侵入者がいるってよ
-ここが隠し部屋みたいだね。-
-そのようですね。-
トレットもうなずく。
その部屋は薄暗く部屋の真ん中にPCがあるだけだった。そのPCも机に置いてあるわけではなく、床に置いてある。非常に簡素だ。そして同時に疑問が頭に鳴り響く、なぜこの部屋に、わざわざ隠し部屋に、こんなPC一台を置かなくてはならないのか。
-また私がバチッっとやってみますか?-
-いや、今日はここまでにして帰ろうか、何か嫌なよかんがするんだ。あのPCには明らかに魔力が干渉した形跡がある。-
-魔力が?魔法が使用されたということですか?-
-そうだろうけど、そうではないないような。僕にもそこまで難しいことはわからないけど。何かがおかしい気がするんだよね。-
-わかりました。一度帰ってハクさんに相談してみましょう。-
-そうだね。-
トレットチームはこの国の代表宅を後にした。
「ちょっち眠いなぁ~。」
ハクは現在少し変わった方向性に調査を進めている。今追っているのは病院にあった謎のPCに干渉した人物についてだ。ハクの考え方としてはその人物も爺さんの孫の映像を見ている可能性があり、そしてその人物もハクと同じような内容を調べている可能性がある。とりあえずその人に会って情報を共有すれば、調査が飛躍的に進行するというものだ。
そしてハクはその人物の魔力の名残を追っている。通常人間は無意識に魔力を放出してしまう、それはほとんどの人が日常的に消費する魔力量と、回復する魔力量が等しくなく、魔力が溜まり続けてしまうからだ。つまり魔力が漏れ出しているという表現の方が近い。だが逆説的に考えれば意識すれば、魔力を勝手に放出してしまうことはない。戦闘にたけるものなどは自身の足跡をたどられないためにあえて魔力の放出を防ぐようにしている。
だがそれも圧倒的魔力感知力を持つハクの前では無意味だ。どんなに隠しても漏れ出してしまうごく微量な魔力をハクは今追っている。むしろ周りより細い線を探せばいいので探しやすいくらいだ。そしてここまででわかるように、PCに干渉した人物は戦闘にたけるもののようだ。もちろん今ハクはトレットを連れていない、このままでは危ないのは間違いないが、それでも数少ない手がかりを見つけておめおめと一旦帰宅することはできなかった。
魔力の流れを追っていると、ハクは自分が止まっているホテルに着いた。
ふむ、このホテルに泊まっているということは俺が今追っている人物はこの国の人物ではない可能性が高いな。とりあえず接触してみるか。
「【ディオス・ヴァキオ】」
そしてホテル内も悠々と侵入し、魔力をたどっていく。そしてハクは自分たちが止まる部屋の前に着いた。
おいおいマジかよ、もろ俺らも調べられてるじゃんよ。
ハクはあえて扉は開けずに魔法を発動したまま、部屋の中に入る。部屋の中では青と白のロングコートを着た女性が物色していた。慎重は高めでエルミラと同じくらい、そして神は黒で肌は白い。サングラスのようなものをしていて、瞳は観察することはできない。
「ここは俺の部屋なんだが何をしているんだ?」
謎の女性は一瞬で振り向く。だがそこにハクの姿はない。
「何者!?」
ハクは女性が振り向いた更に後ろに姿を現す。そして女性は一瞬で姿を現したハクを振り向きざまに取り出したナイフで切り裂いた。だが女性は気づく。
「これはッ、刃が通り過ぎた!?闇属性の幻覚魔法か!?何者なんだ?」
以前女性の前にはハクの姿がある。
「先にそっちが名乗るべきじゃなないか?」
ハクは依然女性を見つめる。
「私の口を割らせるつもりなら諦めたほうがいいぞ?口を割るくらいなら一瞬で舌をかみ切り死ぬ覚悟はできている。」
「・・・なるほど、お前は軍人だな?そこまでの意思を持っているものが傭兵や、私兵とはなかなか考えづらい。でもまぁとりあえず【ディオス・ヴァキオ】」
何らかの魔法をかけられたと判断した瞬間女性は自身の下をかみちぎる動作をする。だが舌をかみちぎるはずだったのにそれは不可能だった。かみ切るはずだった歯は女性の舌を通り過ぎた。
「なんなんだこれは!?」
だが女性は次の瞬間先ほどのナイフで心臓を刺そうとする。だがそれもまた失敗した。刃は自分の体を通り過ぎる。それとともに先ほどまでは握れていたはずのナイフも手からすり抜け落ちていった。そして最後に奥歯に仕込んだ毒薬を噛み砕こうとするが、いつの間にか口の中に入っていたはずの毒薬はなかった。下を見ると毒薬がそこに落ちていた。
「これはまさか・・・、失われたはずの真属性魔法なのか!?存在をずらしたのか?」
女性には真属性魔法の知識があったようだ。よほど高位の軍人なのだろう、または博学なだけなのか。
「とりあえず、抵抗するのはやめろ。無意味だ。」
今度はハクは強気に女性を睨みつける。女性は悔しそうにハクを睨んでいる。
「いいか、お前は負けたんだよ、お前は今から俺がする俺の自己紹介をただただ聞くことしかできないんだ。わかるか?恐ろしいだろ?仮に泣いてももう許してやらないぞ!!!!!」
ハクはめちゃくちゃ凄んでいるが、女性はただ目を点に、口をOの字にしてハクを見ているだけだ。それもそうだろう失われた魔法を使う自分が手も足も出ない男がただ単に、自分の目の前で自己紹介をするのだから。
「俺の名前はハク、最近この世界に来た異世界人だ。そして現在旅行ついでに世界を救おうとしている。信じれないかもしれないが、本当に君の敵ではない。良ければ他の情報すべていらないので、この国で手に入れた情報だけでも教えてくれないか?」
女性は少しだけ正気にも戻った目でハクを見つめる。それこそ何かを見極めるよに。まるでないだ水面のような静寂が数分流れただろうか。女性が諦めたように口を開いた。
「よくわからないが、君は悪人ではなさそうだな。君と私ほどの力の差があれば、私の記憶くらい強引に魔法で覗くこともできる。それなのにそうしないということは、おそらく君は私の敵ではないのかもしてない。」
そんな便利な魔法があるのか、今度トレットとノイルに聞いてみようかな。
もちろんハクはそんな魔法を知らないだけだ。
「君は本当に来訪者なのか?」
「来訪者?たぶんそうだ。あまり言いふらさないでほしいが。あとやっぱりこの部屋に来た理由も教えてくれ。」
おそらく来訪者は異世界人という意味なのだろう。トレットやエルミラ、それにノイルからはそのような表現は聞いたことがないが。案外この呼び方をもとに二人に聞いてみれば、出身国くらいはわかるのかもしれない。
「わかったとりあえず私が開示できる情報だけは教えよう。まず詳しくは言えないが私はある調査機関の人間だ。そして今回はこの国の急激な異常発展について調査に来ている。君らの部屋に来た理由は簡単だ。怪しい国の一つしかないホテルの高級な最上階に突然泊まる人間が来たんだ、どう考えたって怪しいだろう。」
「そいつは確かにそうだな。こっちは金持ち旅行なんだ、やかましくてすまんな。」
「そしてこの国で得た情報なんだが・・・、申し訳ないが私もまだほとんどないんだ。わかってることで言えば、この国の代表が決まった瞬間から数年間でこの国は発展したということくらいかな。」
「数年でここまで発展したのか・・・。なるほど。」
ハクは腕を組み顎に手を当てて少しだけ考えるようにしている。
「ありがとう、もう大丈夫だ。」
ハクはそういうとソファーに座ってくつろぎ始める。
「そいえば、お茶でも飲むか?ここに無料でついているお茶は結構美味しいんだぞ。」
「・・・はぁ、そうだな、いただくよ。なんか警戒していることが馬鹿馬鹿しくなってきた。」
ハクは早速キッチンに行き、お茶を入れ始める。そして入れ終わると、机に向かい合わせになるように置く。この部屋にはホテルによくある感じの、向かいある椅子の真ん中に机が開いてある空間がある。
「いただきます。」
女性はお茶を飲み始める。
「本当においしい・・・。」
「だよな・・・。」
「それにしても調査機関の仕事は大変だよな。おれもそういう仕事を前の世界にいるときにやったことがあるよ。」
女性は少しだけ目を見開く。
「そうだな。常に死と隣り合わせだし、上官にすら殺されかけることも珍しくない。」
「はははっそれわかるぞ!!!俺も結構殺されかけたことあるよ!!」
「ずいぶん嬉しそうに笑うじゃないか、命の危険があるというのに。」
そういう女性も口元は笑っている。調査機関の人間らしく、声を出して笑うことはないが、心なしか嬉しそうだ。
「ごめんごめん、でも俺もその気持ちよくわかるからさ。ついつい面白くなっちゃってさ。」
「安心しろ、私も面白いと思っていたところだ。」
ハクたちはしばらく他愛ない話をすると、女性は仕事に戻るからといって部屋を出ようと扉まで向かう。そして最後に振り向き、真剣な表情をする。
「ここの国の代表はとても危険な気がするんだ。長年この仕事についていた私の勘だが、信じてほしい。君も調査を続けるのであれば、深追いをするのはお勧めできない。」
ハクは手元のお茶を手に持ち一口だけすする。
「ありがとう。」
その一言だけ、女性に告げる。そして何かを察したように女性は部屋を後にした。
2018/11/23は投稿できそうにありません。申し訳ありません。その代わり22日に二話分投稿しましたので見逃してください。(23日に時間指定忘れて、投稿してしまいました。)




