潜入捜査するってよ
トレットにエルミラ、それにノイルは早速聞き込み調査をしている。子供と犬がいくら話しかけてもまとま答えは返ってこないだろうと、ここはエルミラが聞き込みをすることになった。
「すみません、この国には初めて来たので気になったのですが、この国でお店に入ると受付嬢として投影される少女って何なんですか?」
エルミラは優しそうな妙齢の女性に話しかけた。
「あ~、あの子ね。そうね~私もそこまで詳しいわけじゃないんだけど、あの子はもとはアニメのキャラクターだったかしら、【電脳少女ZERO】っていうアニメでうちの子も大好きだったのよ。」
確かにファッションショップの店員として投影されていた女の子は随分アニメみたいな恰好をしていましたね。なんというか、フリフリでとても私服では着ないような。
「へ~、そうだったんですか、ちなみにあの子はいつごろからああやって投影されるようになったんですか?」
「そうね、たしか4・5年前新しい代表が決まったころからああやって投影されていた気がするわ。」
「なるほど、この国の代表が新しくなってからああやって投影されるようになったんですね。ありがとうございます。」
エルミラが女性を後にする。そして。
「先ほどの女性は・・・・という風に教えてくれました。」
エルミラは残り二匹に説明する。
「なるほどね。つまりはその新しい代表について調べるのと、アニメにいて調べる両方の道がありそうだね。」
ノイルがエルミラの話を聞いてまとめる。
「代表については別にすぐわかりそうだから、先にアニメについて調べるのがいい気がするぞ。」
「それもそうだね。次はアニメについて詳しそうな人に聞こうか。」
「わかりました!でもアニメについて詳しそうな人ってどんな人なんですかね、私にはわかりそうもありませんよ。」
「確かにそんなの見ただけじゃわからなそうだね。」
ノイルもエルミラに同意する。
「いや、俺にはたぶんわかると思うぞ。指示を出すからそいつに聞いてみてほしいぞ。」
「わかりました!トレットさん凄いですね。」
「任せてくれ。」
トレットはそういうと周囲を見渡し始める。そしてこの国の発展具合をどこか少しだけ懐かし気な目で見ていたことを、エルミラは不思議な気持ちで見ていた。そしてトレットはエルミラに早速指示を飛ばす。
「あの人に聞いてみてほしいぞ。」
トレットが示した人間は、ズボンににチェックのシャツを入れていて頭に布を巻いている男性だった。エルミラは不思議そうにしていたが、なんだかんだ言ってももうトレットとも長い付き合いなので疑うことなくその男性に話しかける。
「あの~、電脳少女ZEROについていくつかお聞きしたいんですけど・・・。」
「ぼぼぼぼぼぼぼぼ僕ですか?わわ、わかりました。」
男性は特に何かしたわけではないのにひどく動揺した様子だ。
「あの、電脳少女ZEROってモデルになった人とかいたりしませんか?」
「ももももももももモデルになった人ですか?ふむ、表向きにはいないことにななななっていますが、じじじじじじ実際はこの国の代表の秘書なんじゃないかって言われている。気がしたりしなかったり。」
「そんなうわさがあるんですか?」
「だだだだ代表の秘書とじゃ年齢が合わななななななくて、みみみみみみんなちちちちち違うって言っているけど、ぼぼぼぼぼくらみたいなやつらの見る目はごまかせません。」
「なるほど、ちなみにその代表の秘書については何か知っていますか?」
「リアル女笑止。」
そういって男性は立ち去ってしまった。そしてまたエルミラは簡略化して二匹に伝える。
「なるほど、そんな噂があるんだね。どうも今度はその秘書に関して少し調査をしたいところだね。」
「俺もそれに同意だぞ。」
「わかりました。次はどんな方に質問しましょうか。」
「今度は別に人をそこまで人を選ぶ必要はないよ。特に特殊な情報じゃなさそうだし。」
「行ってきます!」
そういうとまたエルミラは優しそうなおばさんに声をかける。ただし先ほどとは別の人だ。
「この国の秘書について聞きたいんですが、秘書さんの子供の頃ってどんな人だったかご存知ですか?」
「いいえ、残念ながら私にはわからないわ。というか、この国の人たちは知らないと思うわよ。そもそも今の代表自体がある日この国に突然来て、その後何年か過ごしてから代表になった人だからね。そして秘書の彼女もあの人が代表になるといつの間にかひょっこりいたの。まぁもしかすると代表が他国から美人を引っ張ってきたのかと思って誰も深くは追及しなかったわ。だから私たちはわからないのよ。」
「なるほど。そうだったんですか。」
そしてまたエルミラは二匹に伝えに戻った。
「ふ~ん、突然現れた謎の秘書、でもアニメ好きの人たちは彼女の子供の頃が電脳少女ZEROだと思っているのか。これはやっぱり普通に怪しいよね。全部繋げちゃうと代表の秘書の子供のころが電脳少女ZEROなんじゃないかってことだもんね。」
「そろそろ代表について調べ始めてもいいんじゃないか?今ある情報をもとに。」
トレットがそう提案し、トレットチームは代表についての調査を開始することになった。
「代表に直接会えると話が早いんですけどね。」
「それもそうだな。なんか方法がないものか。」
トレットが困ったように言う。
「とりあえず、住んでいるところに行ってみようよ。」
「普通に行っても入れないと思うんだが?」
「まぁまぁ行ってみようよ。」
「・・・わかった。」
ノイルの半ば強引な申し出に乗り、一応代表の住んでいる家に行ってみることにした。
もちろん代表の住んでいる家など知らないが、小さな島なので道中の人に聞いてみれば、割とすぐについてしまう程度の距離だった。代表の家の外見はなんというか、近所のお金持ちはこういう家に住んでるよな~くらいの大きさだった。ただし、セキュリティはかなり高そうだが。
「ここまで来たがどうするつもりなんだ?」
「とりあえず魔法を使うよ。」
「ノイルは魔法が使えるんですか?魔物なのに!?」
エルミラが驚くのも無理はない。確かに魔物も魔力を使って何らかの現象を起こすことができるが、それは魔法ではない。魔法とは人間、またはそれに準ずるもの(亜人など)が編み出した、意識的に魔力を操作して狙った現象を引き起こすことだ。魔物のように本能で魔力を消費しているわけではない。その点で魔物の使用する現象と、魔法は別だとされている。
「できるよ、別に僕だけじゃなくて人間の考えた魔法はある程度力を持った魔物は結構便利に使うからね。まぁ必要ないから使っていない者たちがほとんどなんだけどね。」
「なるほど、そうだったんですね。人類は長いこと超常の生き物たちとは戦っていませんから、そういうことは知りませんでした。」
「無理もないよ、戦ってたら人間はここまで発展できていなかっただろうしね。そうだね、とりあえず、最近僕が覚えた魔法を使うとするかな。【サイレント・トランスパレンテ】」
「随分簡単な魔法ですね?どんな魔法なんですか?」
「かかった対象者が出す音を声以外すべて消すのと、姿を見えなくする無属性魔法だよ。結構便利なんだよ、ひそかに近づくときとかね。もちろんそれでもある程度力のある人にはばれてしまうけど、この建物からはそこまで強そうな気配は感じないからたぶん大丈夫だよ。」
ノイルがエッヘンと自慢するように言う。
「確かにすごいですね、いたずらし放題じゃないですか。でもつまりは今からこの建物に忍び込むってことですか?」
「もちのろんだよ。」
「それはそれで不安ですけど、大丈夫ですかね。」
「たぶん大丈夫さ。早速行ってみようよ。」
「わかりました。」
そして一人と二匹は代表が住むとされる家に忍び込んだ。確かにノイルの言う通り足音などはしっかり消えていたが、扉を開ける音などはまるで消えていなかったので、そこだけは慎重に行った。ちなみに入口のカギはもちろんしまっていて、ノイルが閉まっている鍵を開ける魔法【アンロック】を使い中に入ることができた。
声は消せないのでエア・ライトでノイルがはなす。
-入口にいきなり監視カメラがあったよ、姿も隠しておいてよかったね。-
エルミラも返事をする。
-そうですね、幸いです。-
トレットはエア・ライトを使うことができないので静かにうなずいた。
-こういうのはいきなり寝室に行ってみるのがいいと思うんだけどどうかな?-
-わかりました、そうしましょう。でも寝室がどこかわかるんですか?-
-実は僕は入口でアドバンテージズ・グレーテストアイを発動してきたから、壁とかは透けて中が見えるよ。それで大体この家の仕組みはわかるから安心してね。それに嬉しいことに今この家には人がいないみたいだ。-
-流石に超常の生命体なだけありますね。-
そうして二匹と一匹は代表の寝室に向かう。足跡などはしっかりと消えているので、特に慎重に歩いたりだとかはする必要がなく、普通に歩いて向かう。
-ここが寝室だよ。-
-わかりました。-
だが入口を見ると、パスワードを押す仕組みのキーがあった。こういったタイプの科学が含まれた領域の鍵にはアンロックは対応していない。
-どうしよう、さすがにこの鍵は僕の魔法でも開けられないよ。-
-私に任せてください。-
そういうとエルミラはノイルの前に出て、パスワード装置に電気を流す。故障するかと思えたがちょうどいい塩梅だったようで、扉が開いた。
-凄いねエルミラ、そんなこともできたんだ!-
-今のは勘でしたが、何とかなりましたね。-
ノイルがギョットして目を見開く。
-危ないじゃないか!?まぁなんとかなったからいいけどさ。-
-それはよかったです。-
そっと扉の中に入ると、中には特に変わったものはない。普通にベットと、その横にベットと同じくらいの高さの小さな机があるだけだ、部屋自体もかなり狭い。
-特に何もありませんね。-
-そうだね、でもただ寝るための部屋にあんな鍵つけるかな。-
-確かに怪しいですね。-
-この部屋の隣にもう一つ部屋が透け見えるんだけど、その部屋には扉がない。おそらくこの部屋から行くんじゃないかな、ただ方法がわからない。-
-隠し部屋ってわけですね。-
トレットがエルミラの足をカリカリとひっかく。
-どうしたんですか?-
トレットはエルミラが気付くと、さっそうと部屋の枕まで行き枕を何度かひっかく。そしてエルミラが枕を持ち上げると、何か綿以外のものが入っている違和感があった。枕のチャックを開けて、中からそれを取り出してみる。出てきたのは何らかの機械だったが使い方がわからない。のでエルミラはまたそれに電気を流す。そうするとその装置は小さくピピピッと音を鳴らし、部屋の右手の壁が左右に分かれるよに開いた。幸いだったのはこの隠し扉が開く音が小さかったことだろう。
-すごいね、二人ともこれで中を調べられるよ。-
-どういたしまして。-
トレットもそれに習いうなずく。二匹と一匹はその部屋に入った。




