老人が困ってるから助けるってよ
「ふむ、それじゃぁ今日はどうしようか。」
イズラに到着してから一夜明け、ハクは一同に今日やりたいことを聞いみる。
「僕は観光かな。」
「私は買い物。」
「俺は特にないぞ。」
「そうかそうか、大体わかった。それじゃぁ、いつもみたいにエルミラとトレットは買い物に言ってもらって、ノイルは適当に観光でもしててもらおうか。俺は別で少しやりたいことがあるからさ。」
そうして今日は一同が別行動することになり。この世界に来て珍しく一人で行動している。
ちなみにハクが向かっているのはギルドだ。
「なんとなくギルドにはいろいろな情報が転がっていそうっていう、俺の妄想なわけなんだが。」
う~ん、やっぱりなんとなく怪しいと思うんよね。かといってギルドに国の裏側みたいな情報があるとは思えないけど、ほかはあんまりよくわからないしな。
この国で一番目立つ建物を探せばいいんだろ、どれかな~。ってなくね、この国ギルドない・・・のか。ハクはほかの面々が使わないそうなので、車でこの国を走り回っている。イズラは小さいので、すぐに回ることができて、目立つ建物は見つからない。
そこでハクはもう一つの手として考えてあった、あるカフェを探す。どうせこの国にもあるのだろうという考えが頭にある。
そして・・・。
「ほらな、やっぱりあった。」
ハクはいつも通り、少しだけ通りに入ったところにあるカフェに入店する。
「いらっしゃいませ。」
ハクは軽く会釈をすると、窓際の一番奥の席に座る。
「ご注文はいかがなさいますか?」
「いつものをくれ、ベルガで。」
マスターは少しだけ噴き出した。なんだよ、俺がかっこつけてちゃ悪いってか。
「悪くはないけど、面白かったのですよ。それよりももうお昼時です。よければサンドイッチもいかがですか?」
「それはいいな、マスターのおすすめで見繕ってもらえるか?あと人の考えは読まないでくれ。」
「かしこまりました。」
5分ほど待つと、マスターは注文の品を持ちハクの席に来る。この前のようにそれらは2セットあり、mスターも一緒に席についてしまう。
「あんた日に日に遠慮がなくなっていくな。」
「遠慮した方がよかったですか?」
「いや、一人はさみしいと思っていたんだ。ちょうど聞きたいこともあるし一緒に食べよう。」
ハクはマスターの持ってきたサンドイッチに注目する。サンドイッチは全部で5種類ある。一つ目が、卵サンド、二つ目がハムサンド、三つ目がハムマヨネーズサンド、四つ目が照り焼きチキンサンド、五つ目がハムカツサンドだ。一つ一つが高い技術で製作されているのか、それぞれがありえないくらい美味しそうだ。
ハクはその中から、卵サンドを手に取る。卵サンドのパンは少しだけ焼かれていて、挟んである卵はしっかりと白身の除くふわふわ卵だということが目に見てとれる。そして手にあたる感触が柔らかく、普通のパンではないようだ。そしてそれを一口かじる。
「マ、マスター、美味すぎないかコレ?どうやって作っているんだ?」
「もちろん企業秘密でございます。」
マスターはウインクをしてくる。
そしてあまりの美味しさにしばらくは無言の食事タイムが始まる。ハクは無我夢中でサンドイッチを食べ切った。ちなみに一番おいしかったのは卵サンドだった。
「ご馳走様マスター、とてもおいしかった。」
「それは何よりでございます。」
マスターは律義にお辞儀をして答える。
「して、今回はどうしてこちらに来られたのでしょう?」
「ふむ、この国について知りたいことが結構あってな。まずこの国にギルドはないのか?」
ハクは机に前かがみになるように両肘をつけ、手を組みそこに顎を載せながら早速気になっていた質問をする。
「ありませんよ。ギルドはあらゆる危険が国では処理しきれないとき、初めて生まれるものですからね。」
「じゃぁこの国に・・・イズラは治安がとてもいいのか?」
「この世界に危険がない国などありませんよ。あれば人が殺到するはずです。ですが私の言い方ではそういう結論になるのはある意味仕方がないのかもしれないですね。ですがもう一つ可能性があるでしょう?今回はそちらの方です。」
「自国であらゆる危険が対処できる場合・・・か。この小さな島にそんなことが可能なのか?」
「可能でしょうね、ハク様ももうこの国を見られてのでしょう?」
「異常発展した魔法・・・科学・・・ってことか。」
「そういうことです。」
「でもそれならなおさらおかしくないか?なぜこの小さな島の魔法科学だけが異常に発達しているんだ?人でも足りなそうなのに。」
マスターの返事は無言だった。そしてコーヒーをすすっている。そしてハクはありえないほど頭が回り、すぐに先を読んでしまう癖がある。
「・・・、そうかなるほどな。でもそうなるとこの島には少しだけ長く滞在しなくちゃいけなくなるな。」
この島には心理の魔導書シリーズがあるってことかな、本当に適当に動いててもヒットするもんだな。これもエルミラのおかげかね。
「ちなみにそれが何の書かは聞けたりするのか?」
「はて、私は何もまだ言ってないのですが・・・。」
ハクはその返事を聞いて、マスターにはこれ以上聞くことができないのかと思い、席をはずそうとする。だがその前にコーヒーを飲み切っていないことに気が付き、最後に全部飲んだ。
「こいつはまた、面白いサプライズだな、マスター。お代はここに置いていくよ。」
「行ってらっしゃいませ。」
ハクは今度こそ席を立ち、店から出る。そうして立ち去るハクを背に、店に残ったのはマスターと、そこに『命』と書かれたコーヒーカップだけだった。
「とりあえず、命の書があるってことまではわかったわけだが、ほかにもいろいろ情報収集が必要だな。マスターに全部聞こうかとも思ったけど、狭い島だし観光ついでに探しも見つかるんじゃないかな。」
ハクは適当に移動してみることにする。まず最初に向かったのは釣具屋だ。海に立つこのイズラであれば、もっとすごい釣りが楽しめるという、個人的な事情も含めて。
釣具屋は案外すぐ近くにあった。ハクは早速駐車場に車を止めて店内に入る。店の中はガラスのケースが全部の商品をかこっていた。そして入り口にはタブレットがある、入店すると同時にまた映像が空中投影される。
「いらっしゃいませ。お客様は初めてのご来国ですね、それではこの国の店舗の利用方法から説明させていただきます。この国のショッピングは基本入口にあるタブレットで行っていただきます。タブレットにはスキャナーが搭載されておりまして、カードなどをかざすと決済が可能です。また商品を選びたいときはその商品に近づいていただいて、タブレットをその商品のガラスの前にかざします。そうすることによって商品の購入リストに追加することができます。もちろん選択解除も簡単に操作できますのでご安心ください。あとそちらのタブレットはでも可能ですが、ガラスそのものにも商品の情報を投影することが可能になっておりますのでご参考にしてください。タブレットに商品情報を映す場合も商品のガラスの前にかざしていただいて、商品リストから詳細を選択していただくと可能です。異常で説明は完了いたしました。何かご質問はありますか?」
「ありがとうわかりやすかったよ。」
「それではよいお買い物を。」
最後に挨拶をすると空中投影されていた映像が消える。
ハクは早速タブレットを持ち店内の商品の入っているガラスケースに近づく。そして商品の前に近づくと自然にそれらの商品の情報がガラスに写された。そうしてそれらの便利機能を使用しつついくつか買い物をしてみる。その後ハクは釣具屋を後にした。
「なるほどな、大体わかってきた。もしもこのハイテクが張りぼてだったら・・・ってことだよなたぶん。」
ハクは車に乗り、沿岸沿いを走行する。そして、適当に釣りのできそうな箇所を見つけると釣りを始めた。
「この前はノイルにコテンパンにやられたからな、絶対にリベンジしてやる。」
海に釣り竿を振るう。ちなみに先ほどの釣具屋には電動リールしか売ってなかったので餌などしか買わなかった。ちなみに買った餌はオキアミ似たものだ。
「やっぱり海といったら餌釣りだよな。」
ハクはまた集中する。釣り竿に一瞬でも反応があれば釣り上げてしまいそうな覇気を体中から出している。
そしてハクの釣り竿に早速反応が来る。隣にノイルがいなければこれくらいは普通にやってのける。ハクは釣りが下手なわけではない、相手が悪すぎたのだ。
「よしっ来た!!!」
ハクはリールを巻きまくる。そして早速魚を釣り上げた。
「この時のためにしっかり買い物もしておいたのさ。」
先ほどの釣具屋で釣り図鑑を購入していた。この世界の魚にはまるで詳しくないことに前回のノイルとの釣りで気付けた成果でもある。
ハクが釣った魚はマルミーバー、大きさは最大30cmほどで茶色っぽい地味な色をしている魚だ。釣り図鑑には味噌汁がおすすめだと書いてある。ちなみに釣り上げたサイズは10cmほどだったので、迷わずリリーズした。
そしてまた釣り竿を海に振るう。
そうしていると、普通の服装のおじいさんがハクの方へ歩いてくる。
「釣れますか?」
老人特有のおっとりした口調でハクに聞く。
「一匹だけ、マルミーバーが釣れましたよ、小ぶりでしたんでリリースしましたけどね。」
ハクは優しく、それでいて大き目な声で老人に答える。
「少しだけ見ててもいいですかな?」
「かまいませんよ、ゆっくりしていってください。」
ハクは昔の経験上老人にはとてもやさしく接する性質がある。
そうしてハクはまた釣りに集中する。またすぐにハクの釣り竿に反応が来る、そしてまたリールを巻き、釣り上げる。
「ほっほっほ、これはベライマーじゃな。ちと小ぶりじゃがな。」
ハクが釣り上げた魚は図鑑で調べると、やはりベライマーで間違いない。そして最大サイズは40cmほどになるらしく、今回ハクが釣り上げた魚は20cmほどものだった。色は赤っぽいところと白っぽいところがあるような感じだ。
「なかなか大物が釣れないな。」
ハクはまたベライマーをリリースした。
「どれ、わしに竿を貸してみてくれ。」
老人はゆっくりと腰を上げて、近寄ってくる。
「教えてくれるんですか?どうぞ。」
ハクは特に抵抗することなく老人に竿を渡す。そして老人は海に竿を振るう。ハクは老人を観察する。そして老人は竿に何度か小刻みにアクションを加える。そのアクションの腕さばきは素晴らしいという言葉に尽きる。ハクはすれをすぐさま読み取ろうと、一瞬も見逃さず観察する。
「ほれっ、来たぞ。」
老人はリールを巻く。そして釣り上げる魚はまさしく巨大魚という言葉がふさわしものだった。それは50cmを優に超える、マルミーバーだった。マルミーバーは通常30cmに対し、老人が釣り上げたそれはありえないサイズ、怪魚といっていいのかもしれない。
「す、すごい。」
「ほっほっほ、これでも昔は結構釣り人として有名じゃっもんじゃ。」
「今の動きを再現するんで早速見ていてください。」
「わしが長年積み上げたアクションをそう簡単には再現できないと思うぞ。」
老人は自分のテクニックにとても自信がある様子だ。そして目を見開く、ハクは一目見ただけで老人のテクニックを再現して見せたのだ。そして次に老人は何かを懐かしむように目を細めた。
「昔はこうやって孫に釣りを教えたもんじゃ。あの子は君と一緒で物覚えがよくてな~。」
「今もお孫さんは元気にしているんですか?」
「それがわからんのじゃよ、わしは5年前に入院してしまっての~、それで退院できたのはつい最近なんじゃ。こうしてたまに釣り人を眺めながら、いつしか孫が現れんか探しておったのじゃ。」
老人はたんとたんと事実をハクに伝えるが、どこかさみしそうな印象が抜けない。
「ふ~ん、俺が探してきて差し上げましょうか?」
「それは可能なのか?そもそも初対面のわしになぜ優しくするのじゃ?」
「釣りを教えてくれたでしょ?そのお礼ですよ。」
ハクはまるで当たり前のことだと告げるように、老人に笑顔で答えた。




