とりあえず次の目的地を決めるか
ハクが申し出た休暇も最終日になり、みんな休暇を満喫できたようだ。今日はカフェで次に目指す街について、話し合う予定だ。
ハクは車を走らせ、いい感じのカフェを探す。通りを少し入ったところにいい感じのカフェを見つけ、そこに入店することにした。ちなみに駐車場はなかったが問題ない、エアシェルターにしまえばどこでも車を収納できる。こういった細かな利便性がこの世界の良いところだと最近ハクは感じ始めている。
「いらっしゃいませ。」
ふむ、いい感じのカフェだな。俺の店選びもなかなかのものだ。店員もこんなにも愛想がよさそうで何よりだ・・・あれ?
「なぁあんた、サントレアで会わなかったか?」
「あれ?会いましたかね?」
「会ったよ会った、ていうかそんな適当な誤魔化しが通じると思っているのか?」
「それもそうですね。私としても悪気はないんですが、なんとなくからかいたくなってしまいました。」
「ハク、この人は誰なのかな?」
ノイルが自分も知りたそうにハクに尋ねる。
「この人は簡単に言えば、地理に詳しい人だよ。」
この人なんで行く先に現れるんだよ。この前は現実から目をそらしたけど、こんなの確実にオスカーの知り合いじゃん。こうなると店内に毎回人がいないのもおそらくは何らかの狙いがあってのことなんだろう。
ハクたちはまた窓際の一番奥の角の席に着いた。
「ご注文はいかがなさいますか?」
「コーヒーをベルガでアイスにしてくれ。」
ハクが注文をするのをきっかけに一同は飲み物を頼む。
まぁ、マスターを気にしてもしょうがない、力を貸してくれてるんだし悪いことじゃないだろう。
ハクはまたオスカーからもらった地図を広げる。
「今回はどの本を探しに行こうか、トレットどう思う?」
トレットはお行儀よく席について、地図を見る。
「ここから一番近いのでいいんじゃないか?」
「それもそうかもな。」
こういう時エルミラは興味がないのか、地図を見ているが発現することはない。
「僕的にはここがおすすめだよ。」
ノイルが地図の一点を指さす。どうも海に浮かぶ小さな島という印象を受ける。ここからはあまり遠くはないみたいだ。そしてこの場所には特に魔導書の名前が書いていない。地図にはイズラと記されている。
「ここはどこなんだ?」
コーヒーを持ってきたマスターにハクは質問する。マスターはさも同然かのごとく自分の分のコーヒーも持ってきて、四人席の誕生日席に着く。随分と図々しくなったもんだ。
「こちらは今は特に何かあるといった印象は受けませんね。一応説明すると、海にトンネルが通っていて車で行くことが可能ですよ。」
マスターは休憩するようにコーヒーを飲む。
「ちなみにノイル、なんでここがおすすめなんだ?」
「ここの次に面白そうな気配がしたんだけど、こっちの方が面白そうだからリドルスに行ったんだ。つまりは次にどこへ行きたいか聞かれたらここなんだよ。」
「それはまぁ随分と自分勝手な話だが、面白い気配か。どんな気配なんだ?」
「こんなに小さな島なのに、人の気配がものすごくしたんだよ!だから何が起きているのかなって思ってさ!」
ノイルがワクワクした様子だ、そして期待するような目でハクを見る。だがハクはマスターの方をちらりと見る。マスターは深く考えているようなそぶりでまたコーヒーをすすっている。
「・・・そうだな、この島に行こうか。あんまり遠くもなさそうだしな。それに旅は焦っても仕方がないし、たぶん大丈夫だろう。」
「やった!楽しみだな~。」
「次の目的地が決まったようで何よりですよ。」
マスターがハクにウインクをする。先ほどの深く考えるそぶりからのウインク、何か意図があってのものだろうか。単純に目的地が決まったお祝いのウインクではない気がした。
ハクたちは店を後にすると王都の門に向かう。今日は無事リドルスに向かうマーダスを見送る日でもあった。
「それではハク君今回はお世話になったね。私もリドルスに行かなくてはならないんでもう行くよ。これからは師匠の下で研究三昧さ。」
マーダスの青い髪が風になびく。どうもドワーフ王とは一緒のタイミングでリドルスに行かなかったようだ。おそらくカンタレラでの身辺整理などがあったのだろう。
「そうか、何かあれば呼んでくれよ。もう俺たち友達だろ?」
「そうだな・・・、そうするよ。また会える日を楽しみにしてるさ。」
お互いに笑顔で手を握る。数秒間、何かを言うか言うかまいか迷ったそぶりをした後、マーダスはハク達に背を向けて歩き出す。ハクたちは見ることができなかったが、マーダスは確かに何かを決意したような、それでいてとても綺麗な笑顔で去っていった。
「ハク、引き留めなくてもいいの、結構さみしそうだけど。」
エルミラが心配そうにハクに声をかける。
「いいんだよ、どうせまた会うだろ。この世界についてはよくわからんけど、世界なんて案外狭いもんさ。」
ハクはどこかさみしそうに、それでいてどこか大人びた笑顔でマーダスを見送った。
空の書完結です。




