とりあえず休むとするか
ハクはカンタレラに着く少し前に二人を起こした。
「ハク・・・おはよう。」
エルミラが目をさます。
「ハク君、何かあったのかね。」
マーダスも目を覚ます。
「とりあえず車から出てきてもらってもいいか?」
マーダスとエルミラ、トレットは車から降りる。
「ハク、俺的には大体内容がわかるつもりだぞ。そいつの紹介をするんだろ?」
「ゲゲッ!?なにそのライオン!?めちゃくちゃ強そう!」
敬語が取れたエルミラは意外に雑な口調をしている。
「はじめまして・・・、では一応ないんだけど、僕の名前はイレオン・ドラド・ノイル。人間からはシェノセィーディオって呼ばれているけど一応本当の名前はこっちなんだ。」
「そう、とりあえずエルミラには言っとかないといけないんだけど、今度からノイルも一緒に旅することになったから。」
「本当!?私猫好きだから嬉しい!!!」
エルミラがはしゃいでいる。だがハクは内心これをどう見たら猫に見えるんだろうかと考えていた。
「人間に猫呼ばわりされたのは初めてだが、かわいいから許す。」
「エルミラが大丈夫そうでよかった。マーダスに聞くところによるとノイルは結構やばい魔物なんだろ?」
「国は滅ぼしたことあるけどそんなやばくはないでしょそれくらい。」
「それは結構やばいと思うが、旅の途中は俺のgoサインが出るまでは国滅ぼすなよ。」
「わかったよ。それくらいならお安い御用さ。」
「あとこれからカンタレラに入るんだが、その姿どうにかなるかね。」
「なるよ。とりあえず人間の子供にでも化けようかな。」
そういうとノイルの姿かたちが徐々に人間のものへと変わっていく。服を着ていないのではないかと心配したが、そんなこともなく最初から服を着ている。真っ黒なズボンに白いTシャツを着て、上からジャケットを羽織っていて、首元に金色のファーがついている。黄金の瞳に、金色の髪の毛をポニーテールにした男の子が現れる。なぜか子供姿なのにカジュアルなスーツを着こなし、シルクハットをかぶった不思議な容姿だ。年齢は10~12歳といったところだろう。背は年相応に低い。
「なんで子供の姿なんだ?」
「まぁまぁいいじゃない?一応年齢は自由に変えられるけど、これくらいの方が動きやすいでしょ、いろいろと。」
自分の姿を確かめるようにノイルは服をなびかせながらクルクルと回る。
「そうですよハクさん、あれぐらいの子供はまだかわいげがあるじゃないですか。」
「国を亡ぼす子供にかわいげなんてあるかね?」
「あると思います!」
エルミラとノイルの声がハモる。
「ハク君、これからカンタレラ王国に入るわけだが、問題はドワーフとどういう風に国を返すかだと思うんだ。普通に国を返そうとしても、私がクエストを達成するだけではカンタレラが介入して、彼らの思い通りになるだろうね。」
マーダスが会話を遮るように声をかける。
「それについては俺に考えがある。それなりにうまくいきそうだからとりあえずカンタレラに行こうか。ちなみにドワーフには簡単に会えるか?」
「会うことは可能だ。私は師匠に教わっている間リドルスに住んでいたからな。」
「できれば国王に会いたいが可能か?」
「ドワーフ王にか、師匠が仲良くてな、私も一緒にいたので会うことは可能だ。そもそもこのクエストを受けたのもリドルスとの縁を捨てきれなかったからだからな。」
マーダスはここぞとばかりに胸を張る。
「その縁を生かしてもらいたい。カンタレラに入国したらまず、ドワーフ王に接触する。そして現在の状況を説明して、こちらに協力してもらう。たぶん何とかなるから俺に任せてくれ。」
ハクは一息つくとまた話始める。
「それじゃ事前準備もこんなところにして、カンタレラに入ろうか。」
相変わらずこの世界の入国審査は軽いものですぐに入国することができた。唯一きわどかった、ノイルの入国に関してはマーダスが守衛に話を通すことで何とかなった。流石にSランク冒険者の扱いは違うようだ。
一同はそのまま国内も車で移動している。
「とりあえずドワーフ王が止まっているホテルに向かってくれ。案内しよう。」
「わかった。俺たちも少しの間カンタレラ王国に滞在しようと思っているから、そこで宿を取ろうかな。」
「一国の王が止まるようなホテルに泊まるお金あるのか?」
「こう見えて俺達は金持ち旅だから安心してくれ。」
マーダスが車を改めて観察する。
「まぁ確かにお金がないとこんな車には乗っていないか。」
車はカンタレラ王国一高いホテルへと向かっていく。店員に進められるがまま買った車だったが、Sランク冒険者のお眼鏡にかなうようなものだったらしい。
そうして入国後、ほとんど立たずに、ドワーフ王のいるホテルに着いた。
「まず俺らの部屋を取るから少し待ってもらってもいいか?」
「了解した。」
流石に一流のホテルともなると、受付のお姉さんはとても綺麗で、ついつい余計な会話をしたくなったが、それでも一応物事には優先順位があるので我慢する。特に問題もなくエルミラとハクとノイルの部屋をそれぞれ別々にとることができた。
「時間をかけてすまない、それじゃ王様に会いに行こうか。」
事前にアポイントメントを取らないで会うのは通常失礼に当たるが、それでもマーダスがいることによって何とかなるらしい。ローレンツと、マーダスとドワーフ王はそこまで親しい関係だったようだ。
「ドワーフ王にマーダスが来たと伝えてくれないか?」
ドワーフ王の部屋まで来ると、扉の前に衛兵が待機していた。マーダスはまるでいつものことのように衛兵に声をかける。
「かしこまりました、ただお連れの方たちもご一緒でしょうか?」
衛兵は見ず知らずの俺たちに困ったように声をかける。先ほどから気付いていたが、衛兵はドワーフではない。あとで確認しないとわからないがおそらくは国賓ドワーフ王はカンタレラの国賓扱いとなっており、護衛はカンタレラの兵士が行っているようだ。だが、極秘で管理されている以上、おそらくはドワーフ王の行動そのものを制限する狙いがあるのだろう。
「よい、入ってこいマーダスよ。」
部屋の中から野太い声が響く。
「それでは失礼します。」
マーダスは敬語を使いゆっくりと扉を開けて部屋に入る。部屋にはドワーフ王と護衛兵が二人ほどいるようだ。
「ふむ、マーダスよ、よくぞ来た。」
ハク一同もマーダスに引き続き、そっと部屋に入る。
「マーダスよ、そちらの方々は?」
「今回のクエストを手伝ってくれた者たちですよ。」
「初めまして、ハクと申します。並びに、エルミラ、トレット、ノイルと申します。」
どことなく変な言葉づかいでしゃべるハク。さすがに元日本国民である以上、王の前で直接話す経験は詰めなかったのだろう。
「ふむ、ご苦労だった。衛兵たちよ、一度外に出てもらっても構わんか?」
「はっ!それでは失礼いたします。」
護衛兵たちが退室した。
「フフフ・・・、アッハッハッハ!!!!相変わらずマーダスの敬語を聞くと笑えて来る。今更敬語など使うから毎回この矛盾に耐えらえれなくてな。」
「ガルダス爺、相変わらず人が悪いな。毎回笑われる私の身にもなってくれ。」
「アッハッハ!!!すまんすまん。」
豪胆に笑い出す、ガルダス・バルグ・リドルス王、ハク一同は失礼に当たらないように、事前にマーダスに名前を聞いていた。背丈は120cmほどでドワーフというだけあって小さい。赤茶色の髪の毛に長い髭を携える、おじいちゃんのような見た目だ。実際年齢もそれなりらしい、ドワーフは平均200年ほど生きるそうで、ガルダス王は御年160歳だそうだ。だが年寄りだからといって、馬鹿にはできなそうな服の上からでもわかる筋肉を携えている。
いつも通りのやり取りと思われるものを終えると、マーダスはあらかじめ準備していた魔法を使用する。無属性魔法【エア・ライト】という初級魔法で、空中に文字を書く魔法だ。
-ハクから渡される薬を飲んでください。-
ガルダス王もエア・ライトは問題なく使用できるらしく、極秘な要件であることをすぐさま察し返事をしてくる。
-わかった。-
ハクはガルダス王にある薬を差し出す。そしてそれを受け取り、一瞬の迷いもなくそれを飲み込んだ。これは間違いなくマーダスとの信頼関係あってのものだろう。
ハクがガルダス王に渡した薬はローレンツからもらった、遠隔でも脳内で会話できる薬だった。なぜそれを渡したかというと、カンタレラ王国はおそらくガルダスの部屋に盗聴魔法をかけている可能性が高いからだ。ちなみにこの部屋の魔力を探ったところ何らかの魔法がかけられているのは間違いなさそうだ。
ある程度脳内で会話すると、ガルダス王は目を見開く。そしてそのあと怪しまれないようにマーダスとガルダス王がある程度たわいない会話をした後ハクたちは退室した。
そしてマーダスはハクに言われた内容でギルドにクエスト完了をしに行った。そうしてマーダスを見送った後、ハク一同はホテルのハクの部屋に集まる。
ハクは神妙な顔でトレット、エルミラ、ノイルに伝える。
「今回は流石に働きすぎて疲れました。1週間ほど休みにします。」




