とりあえず決着をつけるとするか
イザベラの深紅の片手直剣が、エルミラを幾度か切り裂いたのか、かすかに血が滴る。先ほどから接戦がつづく。イザベラが魔法を使うたびにエルミラがそれを防ぎ、黄金の巨剣にてイザベラを斬る。だがイザベラは何度斬られても、特にダメージを負った様子もなく、こちらに向かってきている。対してエルミラには先ほど腹を貫かれた傷のようなダメージが少しずつたまっていく。
「あなたそれはずるくないですか?無敵なんですか?」
エルミラは先ほどから幾度斬られても途絶えることのないイザベラの不死性にうんざりしていた。
「そういうあなたもなかなかお強いですわね。」
エルミラは勝ち筋を見つけるために思考を巡らす。
イザベラもおそらく無敵ではないはず、例えばイザベラの不死性が魔法による効果だとすると、魔力が尽きるまで戦えば何とかなるかもしれない。いや、そもそもイザベラの魔力が私以下である可能性も低い。そういえば試していなかった手がある気がしますね、やってみましょう。
エルミラは黄金の巨剣を自分の目の前の地面に突き刺して両手を合わせ祈るポーズをとる。
エルミラは雷属性の魔法が適正だと出たが、雷魔法の下位互換は光属性魔法。もちろん光属性魔法は問題なく使用できる。ただ強力な雷魔法を使っていただけなのだ。
「【ホーリー・プリエ・グラント】」
瞬間エルミラの黄金の巨剣が発光する。光属性の魔法を巨剣に直接付与をしている。この属性攻撃であれば、イザベラにもダメージを与えられるのではという魂胆だ。
そして黄金の巨剣を地面から引き抜き、エルミラはイザベラに超高速で接近する。イザベラは魔法を瞬時に展開しようとするが、超接近するエルミラのあまりの速度に展開することができなかった。真正面から縦なぎに斬ろうと剣を振り下ろす、イザベラはこの攻撃を片手直剣で受け流すようにして受けようとする。瞬間、それは起きる。
「グハッ!?な、なんです!?これは・・・。なぜ後ろから!?」
エルミラは最初にイザベラに攻撃したとき、イザベラに攻撃がほとんど通じないことを想定していた。そして、その瞬間から自身が出せる最高速度をこの瞬間まで隠していたのだ。おそらくイザベラには眼前からエルミラが完全に消失したように見えただろう。エルミラはただ自身の出せる最高速で背後に回って斬りつけただだった。
「やっぱり光属性は、雷属性よりも効果があるみたいですね。ここからが本番です!」
エルミラは正眼に黄金の巨剣を構える。
「ふんっ、小賢しい知恵が働くようですね。確かに多少はダメージを受けましたが、これは許容範囲ですわ。」
みるみるイザベラの背中の傷は回復する。
そしてエルミラはその場からまた消えるような速度で動く。
「効果があるとわかってむざむざ回復させると思いますか?」
今度は正面からイザベラを一閃。完全にイザベラの反応は間に合っていない。今度は正面を斬られる。そしてそこからエルミラは回復の隙を与えないように、まるで閃光の如き速度でイザベラを斬りつけ続ける。だがイザベラもただ切り刻まれているわけではない、また血液化し地面に溶け込む。
「その手は何度も見ましたよ、あなたの分身を消し飛ばしたところを見ていなかったんですか?」
エルミラは地面にまた剣を突き刺す。
「今度こそ消し飛んでください。【ホーリー・ライト・オバーレイ】」
地面から光の筋がいくつもあふれる。
そしてその瞬間エルミラの頭上に接近する何かを知覚する。だがそれにエルミラは超反応でカウンターを合わせ、斬りつけた。だがそれはイザベラが持っていた片手直剣だった。
そしてさらに上空にイザベラが浮く。
「くそっ!!!まさかこの私がここまで追い詰められるとは、考えもしませんでしたわ。今日のところは一旦引いて差し上げます。」
エルミラの目から青い小さな雷がバチバチとほとばしる。
「【エルダーズマジック・ライトニング・サンダーボルト】」
エルミラが一筋の雷となり、雷の竜が空へ昇る。
一筋の雷竜は空のイザベラを貫く。
「なるほど、私が一本取られたみたいですね。本命は地面の方でしたか。」
エルミラはそういうと、自分の手を見つめる。先ほど貫いたイザベラにはなんの感覚もなかった。おそらくこれはイザベラの分身体で、先ほどの地面に潜った方が本体だったのだろう。そして、魔法の直撃覚悟でイザベラは戦線から脱出した。
エルミラとの戦闘を何とか逃げ切ることができたイザベラは島の端までたどり着いた。もちろん最後のエルミラの魔法で、体はすでにズタボロになり、息も絶え絶えよろよろと歩いている。
そしてそこで一人の青年が、ありえない量の竜と戦うのを目撃する。その戦闘の光景はまさに蹂躙と呼ぶにふさわしい内容だった。たった一人で無数の竜を相手取るその様子を見てイザベラはようやく理解する。
「なるほど、今回は完全に勝ち目がなかったようですわ。これは一度魔王様に報告せねばならないようですわね。こんなの人間のなせる業ではないわ。」
背中から翼をはやすとイザベラは島から飛び立った。




