とりあえず融合するか
「【ダークネス・アビス・ブラッドリバース】」
フェリナスが呪文を唱えると、ファリナスの離れ離れになった首と腕が、血液によってあたかも縫うようにつながりなおす。
「あらあらファリナス、これは少しやっかいね。しょうがないし本気でも出しましょうか。」
「アハハッお姉ちゃん、私も賛成だよ、この女どうしても殺したくなってきた。」
黒い白目に白い充血がほとばしり、ファリナスが怒りに悶えていることが十二分に伝わってくる。
二人が近くによりお互いに背中合わせになり、両手を貝殻つなぎする。
エルミラはこの魔人たちが確実に厄介なことをすることを理解していたが、それでも止める気にはならなかった。その理由は簡単で、全力のこの魔人たちを倒さなければ何の意味もないと考えていたからだ。そして何よりエルミラは人生で初めて戦闘に好奇心を震わしていた。それは勇者になった影響なのか、果たして本来の彼女の性質なのか、魔人の様子を一瞬も目を離さずに静観している。
「あらあら本当にうざいわね。私たちが本気を出そうとしているのに、妨害する気もない。なめられれているのがわかるわ。でもあなたの人生と一緒でそれもここまで、後悔に押しつぶされて死になさい。【ダークネス・アビス・ブラッドフュージョン】」
まるで円を描くように二人の周りに血液の繭が出来上がる。そしてその血液の繭は生きているかのように脈動する。その脈動の鳴り響きは、音そのものが力を持っているように、中にいるものの凄まじい力をエルミラに伝える。
そしてそこからほとんど時間もたたずに、中から一本の手が伸びるように突き出てくる。その腕を起点に繭を破くように中にいる強靭な存在が出てくる。
体の中心から左右に別れるように白と黒のコントラストが美しい、二人から一人に、最強から最恐に変貌した魔人が現れる。体の右半分は黒い角に白い髪の毛、もう片方は白い角に黒い髪の毛、中心から分かれるようにファリナスとフェリナスの見た目が融合したその姿、服装は真ん中を中心に右半分が白く、もう片方が黒い、胸元がざっくり空いたセクシーなロングドレスに変貌している。年齢は先ほどの幼い印象から20代後半の色気のある年頃に変貌した。その瞳はまだ閉ざされている。
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私は魔王軍が第4幹部【ファリエス・アヴァ・イザベラ】、忌み名は【禁断の血狂い女王】ヴァンパイを仕切るもの、ヴァンパイアクイーンですわ。」
イザベラがゆっくりと目を開くと、深紅の瞳と目が合う。そしてそのかわされた視線だけでもエルミラはこのヴァンパイアが凄まじい力を持っていることを理解する。
そしてイザベラがゆっくりと右手を軽く何かを持つような形にする。するとそこに一瞬で、これもまた深紅の片手直剣が現れる。柄には美しいバラの装飾が施されており、十字架のような形をしていて、剣を二分するように真ん中に白いラインが走る。そしてまるで生きているかのように剣は脈動してる。
「ずいぶんとまがまがしい剣ををお持ちなんですね。」
「あら、ほめてくれるの?ありがとう、まぁ死んでもらいますけど。」
エルミラはその言葉を聞いた瞬間動き出す。超高速でイザベラに接近しそのまま黄金の巨剣を横なぎに振り切る。そしてそれに対しイザベラは無抵抗に斬られる、だがイザベラは斬られた瞬間に突然姿を血液に変え、地面に溶け込むようにして消える。
「【ブラッド・グリード・ブラッディコクーン】」
地面からエルミラを囲むようにして血液の繭が出来上がる。そして一斉に壁面から血の棘がエルミラを襲う。
「【エルダーズマジック・ライトニング・バースト】」
瞬時にエルミラの周囲を弾けるように雷が放出される。イザベラが放った血の繭がはじける。
「あなたならそれくらいできると思っていましたわ。」
いつの間にかエルミラの背後に実体化していたイザベラが、エルミラの首を切断するように背後から剣を横なぎに振り切る。
だがエルミラはその背後からの攻撃に反応してみせる。エルミラが自身に先ほどかけたライトニング・カムイは周囲に微弱な電気を常に発していて、何かがその電気に触れればエルミラの脳に電気信号が走りその瞬間に反応することができる。さらに言えば、この魔法を使っている限り、エルミラの体にも常に電気が走っている状況で、エルミラの身体能力を限界を超え上昇させている。
だがイザベラもまた、超常の存在であることに違いはない。
「なるほど、先ほどの魔法はその超反応と、身体能力強化を与えるものですわね。でもそれならば、あなたの超反応や、身体能力のすべてを超える攻撃を与えればいいだけですわね。」
「やれるものなやってみてください。」
エルミラは自身満々に、笑ってみせる。
「【ブラッド・グリード・ブラッディクローン】」
その呪文とともにイザベラの周囲に血のみで形成される部身体が4体ほど現れる。
「それらは私の意思で動くわけではありませんわ。自立して行動する私と同じ能力を持つものですわ。」
そしてその瞬間にイザベラと分身体が一斉に動き出す。その速度はすさまじく、それぞれに行動がばらばらだった。あるものは先ほどエルミラに切りつけられたイザベラのように地面に溶け込み、あるものは超高速でエルミラに突進、あるものは血の翼をはやし空に飛び立つなど、様々な動きをしている。
そして最初にエルミラに突進した一体がエルミラに接近する、だがこれに余裕で反応するエルミラは、その一体を超える速度で動き、カウンターをするように縦に両断する。だが、それを意に介さず分身体は体が真っ二つでも血の剣を振るってくる。
「切っても消えたりしないわけですか。ならこれならどうですか?【エルダーズマジック・ライトニングオーバーレイ】」
エルミラは振るわれる血の剣を回避し、分身体に手を当てる。そのまま雷の大奔流手から放出され分身体を消し飛ばす。
「やはり魔法には弱いみたいですね。」
エルミラが分身体を一体消し飛ばすと同時に、地面に足が取られる。いつの間にか吸い込まれた箇所の地面が真っ赤に染まり、血の池のようになっていた。すぐさま足を引き戻そうとしたが、抜くことができない。地面に魔法を放とうとしたが、空にいた分身体が魔法を放つ。この時点で先ほどの分身体がおとりであったこと、そしてそれぞれが同じ能力を持つという意味を実感する。
「【ブラッド・グリード・ブラッディレイン】」
空から血の雨が降る。それら一粒一粒が鋼鉄の硬さを誇り、エルミラを貫かんと迫る。
だがこの時エルミラは非常に冷静だった。エルミラは地面に黄金の巨剣を突き刺し、周囲に魔法を放つ。
「【エルダーズマジック・ライトニング・フルバースト】」
放たれる雷の大奔流は上空の分身体と、地面にいた分身体を消し飛ばした。
だがまるでその瞬間を狙っていたように、最後の分身体を突き刺すようにして、イザベラがエルミラに迫る。
「【ブラッド・グリード・ブラッディアンブレラ】」
分身体が血の傘に変化する。雷の大奔流の中をまるで滑るように、その傘を盾にして突き進み、エルミラの腹に血の剣を突き刺す。
「なんで・・・一瞬急に体が遅くなった!?」
だがそれでもエルミラは動くのをやめずにバックステップでイザベラから離れる。
「あなたには効果が一瞬しかなかったようですけど、先ほどの地面に足が吸い込まれたとき、その地面には触れた相手を鈍化させる毒が混ざっていたのですわ。」
「なるほど、なかなかやりますね・・・。」
「もちろん今あなたに突き刺した。血の剣にも同じ効果がるんですわよ。」
そしてまたイザベラがエルミラに超高速で接近する。
「なかなか厄介な技ですね。」
エルミラはいまだ希望捨てずにイザベラを射抜くように睨みつける。
まだもう一話エルミラパートです。




