とりあえずドラゴンと賭けでもするか
ハクはトレットを装備し、次元干渉で高速移動を続けていた。
マーダスから説明を受けた内容をまとめると、この島に魔物を呼び込むにあたって魔物が来る方向だけは制限できるらしい。量や、魔物の強さ、種類を制限することはできないが。
そして現在ハクは魔物を呼び込んでいる方向へ、全力で向かっている。だがここまでの高度だと来る魔物はかなり限定されるらしく、やはりドラゴン系統の魔物が来るらしい。だがドラゴン系統の魔物はもともと強力な個体は少ないらしく、全体がまんべんなくほかの魔物より強いくらいらしい。それでも十二分に厄介だとハクは考えていたが、リドルスが落下する可能性がある以上、つべこべ言ってはいられない状況だ。
「おぉ~~~~~、こんなに高かったのか、正直ただ転移しただけだったからここまでの高さだとは思わなかった。」
「これはすごい高さだぞ。正直こんな高度からリドルスが落下したら尋常じゃない被害が出ると思うぞ。」
ハクとトレットは浮いているリドルスの端っこまで来ていた。下には真っ白な海が広がっていた。どうも雲の上まで来てしまっているらしい。そしてうっすらと地上が見えている、ほとんど確認することはできないが、相当な高度であることは優に想像できる。
「ギャォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!!」
遠くから無数の鳴き声が聞こえる。
「とりあえず来てくれたな。あとは狩るだけなわけだが。」
「これは結構な数が来たみたいだぞ。」
マーダスはドラゴンの習性についても教えてくれた。ドラゴンはたまに空を群れで移動することがあるらしい。その群れが向かってくる場合、100体以上のドラゴンと戦うことを覚悟した方がいいそうだ。だが群れで行動するようなドラゴンに関しては、そこまでの力を持っているわけではないらしい。ただ群れにはボスがいて、その個体がかなり強力な可能性があるらしい。
「おいおいトレットお前少し運が悪いんじゃないのか?こんなに魔物を呼び込んじゃって。」
ハクは腰に手を当てて冗談を言う。かなりの余裕があるようだが、この後の展開によっては厄介なことになることをハクは理解していたので、トレットの緊張をほぐそうとしている。
「おいおいハク、お前なんじゃないのか呼び込んだのは?オマエがブスだからみんなむかついてこっちに飛んできているんじゃないのか?」
トレットもそれは理解できていたので、なめるなよという意味を込めて反撃する。
「なんで急にシンプル侮辱!?」
そうしてくだらない言い争いを続けていると、凄まじい熱線がハクに向かってくる。だがハクはそれを万能防御でシールドを張り防ぐ。あまりの熱量であたりの地面が融解し蒸気が発生する。
「到着したみたいだぞ。」
「そうみたいだな。」
ハクは右手を前に出し、万能防御を使用したままの姿勢で答える。
蒸気を振り払いハクが出てくる。眼前に広がる景色は、雲の海からドラゴンの海に変わっていた。ドラゴンは大小さまざまだったが、大体の個体が5m~10mというところだ。明らかに種類が限られている。ワイバーン系統の魔物だったら楽だと思うだとかマーダスは言っていたが、残念ながらそうではないらしい。オレンジっぽい赤色のドラゴンだ。ワイバーンとは違い、羽と腕が別に生えている。
そして今度は一匹だけではなく無数のドラゴンが同時に口を開く。
「これはちょっとまずいかもな。それじゃ覚えた魔法のお披露目でもするかな、【ディオス・ヴァキオ】」
呪文を唱えるとすべての熱線がハクを貫通して後ろの地面を焼く。この魔法は真属性の魔法に近い魔法で、ハクの存在を世界から否定している。ハクはこの場にいて、この場にいない状態なのだ。ただし任意の場所に存在をずらしているわけではない。ハクそのものが実態のみこの世界から消えている。そして姿だけが残っている。
「人間の分際で小賢しいものだな。ここら一体を焼き払えばおのずと貴様は死ぬだろう。」
一匹の紅蓮の竜が放った咆哮は先ほどの無数の竜から一斉に放たれたものを合計しても上回る威力で、ハクを焼き払おうとする。
だがハクは無傷でそこにいる。
「なんなのだその魔法は、本当に人間とは小賢しい生き物だな。」
この竜は真属性魔法の知識があったようだ。任意の場所に存在がずれていると仮定し、周辺を焼き払って見せた。だがそれでもハクはその場に立ち続けている。
「あー、あなたがこの群れの長ですか、俺の自分勝手で申し訳ないけど、面倒だから俺に従ってくれないかな。無駄に殺したくはないんだ。」
ハクは耳の穴をほじりながら非常に不真面目にそんなこと言う。仮に交渉しようともそれが成立するとは最初から考えてはいなかった。
「キサマ真剣に会話する気があるのか?」
「あんまりないかもな、時間もないんでね。それより俺と一つ勝負をしないか?」
「ほう、面白い言ってみろ。」
ドラゴンはみな好戦的で、こういった話には乗りやすい。
「俺が今からお前らと一斉に戦う、俺が勝ったら少しの間言うことを聞いてくれないか?」
「なんだそのふざけた条件は、私をなめているのか?」
「別になめてないさ、おいしくもなさそうだしな。」
「まぁよいそれもまた一興、乗ってやるぞ人間。」
まぁ、こっちが呼んでこっちの都合だけで殺しちゃうのはあんまりにもひどいしな。できれば殺さずに行きたい、今の俺ならなんとなく魔力の受け渡しができる気がするし。この状況でも負ける気がしないんだよな、なんでだろう。
ハクの頭上でまたダイヤルが回る。宝物庫前での件と合わせると30回ほど回転していた。




